全文表示 巨大女子相撲部

   あおいすもも以外の存在を    示唆する真西まにし 椿つばき

   まだ脅威が残っていることに    動揺の色を見せる筑井は、声を    荒げながら彼女との会話を続ける。

筑井「その二人じゃないって‥、    他にもまだ誰かいるの!?」

真西「永嶋には姿を見せたらしいが    お前達にはやはり姿を見せて    いないようだな」

筑井「い、いったい何者なの、    そのひと・・・?」

真西「ナンバー57フィフティーセブン

真西「ナンバー内では    57ごしちと呼ばれていた」

筑井「ごしち・・」

筑井「その人に真西さん達は    やられたって言うの・・?」

真西「あぁ、私達が追われている時    東園姉妹と57がいたが、姉妹が    手を出してくることはなかった」

真西「おそらく、永嶋の時も    それは同じだ」

筑井「昨夜、未來さんが浜辺で    二人を倒した時、他に人の    気配は全くなかった」

筑井「じゃあ、いったい    その人物はどこに・・・?」

真西「お前達が来る頃には    森の中にいたのだろう」

真西「奴にはやらなくてはいけない    仕事があったはずだからな。    そちらを優先していただけのことだ」

筑井「その仕事って・・・?」

真西「ネズミ捜索・・」

真西「奴等の本来の目的は私達では    なくネズミを狩ることだ」

筑井「ネズミ捜索・・?    もしかして、この島にいる    巨大ネズミのこと?」

真西「あぁそうだ。私達が襲われたのは、    妨害される可能性を恐れてのこと」

真西「藤崎への告げ口、または直接的な    妨害をさせない為に攻撃を加えて    きたものだと推察できる」

真西「永嶋をやって東園姉妹が    身を隠していなかったのも」

真西「57の存在を悟らせない為に    えて前に出ていたものだと    考えるべきだろうな」

筑井「彼らの恐れていた監督への告げ口」

筑井「真西さんがそれを成すことは    できなかったけど、代わりに    美穂さんにだけは伝えられてた    わけか」

筑井「でも彼女はそれを    監督に話さなかった・・」

筑井「だから、昨夜一人で・・」

真西「永嶋には藤崎に伝えろと    言っておいたのだが・・」

真西「強情な奴だ・・。自分一人で    解決しようとしたのが    目に見える・・・」

真西「ナナを引き渡す対価として    藤崎にその情報を教えたつもり    だったんだが、伝えた相手が    どうも悪かったようだ・・」

筑井「もし、それが伝わってれば    監督も島に残ってネズミも    美穂さんも無事に済んでたかも    しれないってことだよね」

真西「端的に言えばそうなるな」

筑井「でも、もしも・・・、    ネズミをもう捕まえ終わってたら    また、君達を探すんじゃ・・?」

真西「その可能性は確かに    ないわけじゃない」

真西「だが、あくまでもネズミが優先。    まず先に運び出すことを考えるはずだ」

真西「あの姉妹は見た目以上に    特殊な性質を持っていてな。    ネズミと57を運搬するために    この島に奴等は来ている」

真西「航路規制もここは    厳しいと聞いてる」

真西「だったら、船を待つと言うことは    ありえないと言っていいだろう」

真西「ここまで言っても、お前はまだ    不安に感じているようだな。    臆病な奴だ」

筑井「だって、まだ彼女達は    気を失っているかも    しれないんだ」

筑井「もしそうなら捜索するだけの    時間はあるんじゃないのか?」

筑井「昨夜、則夫さんと未來さんの間で    彼女達に関与しないという話に    なってたから」

筑井「意識さえ戻っていれば、    帰れる状態にはなっていると    思うけど・・」

真西「全部かもしれないだな・・。    だが事実、奴は一度も姿を    現していない」

真西「私の前にも、そして    ナナの前にもな」

真西「奴の実力ならどちらかの前に    姿を現すことはそう難しい事    じゃないはずだ」

真西「しかしそれをやらないという    ことはやる必要がないと    判断していると言える」

筑井「・・・・・・・」

筑井「そうとも捉えられるけど・・」

筑井「でも、この島に57が    まだいる可能性はあるし    襲ってこないとも言い切れない」

筑井「だからナナは尚更    この島に残すわけには    いかなくなった」

筑井「最後に聞くけど、本当に    彼女と会わなくていいの・・?」

筑井「君にとってナナは    大事な存在なんだろ?    金輪際会わないなんて・・」

真西「あぁ、構わない・・」

真西「女子相撲部員達と島から出て    ほしいと思っている。奴らの元に    いた方が安全も保証されるしな」

   彼女の返答の後、筑井は少し俯いて    しばらく黙り込んでしまった。

   何とかナナと会ってもらえないかと    いう思いがそうさせていたのだろう。

筑井「一度で・・、一度でいいから会って    もらうことってできないかな・・?」

筑井「真西さんが会うことを    望んでいないのは分かるけど、    それでも・・」

筑井「僕としてはそうして    欲しいと望んでいる・・」

真西「・・・・・・・・・」

筑井「今の彼女は孤独なんだ・・。    いくら僕がそばにいても・・」

筑井「なんで兄さんも真西さんも    私を置いて行ったんだって‥。」

筑井「ずっと苦しんでる・・」

筑井「昨夜その姿を垣間見て・・、    正直すごく辛い気持ちになった」

筑井「だからせめて、きみが    生きてることだけでも・・!」

真西「駄目だと言ってるだろ!」

筑井「ッ!?・・・・・」

真西「一緒にいたとしても    いずれあいつは一人になる」

真西「お前は優しさで言っているつもり    なのかもしれないが、それはナナを    追い込む結果になるだけだ!」

筑井「・・・・・・・」

真西「私はナナが普通の生活を    送れることだけを望んでいる」

真西「大事な存在だからこそ、    決別の道を辿ろうと    しているんじゃないか!」

真西「その意に反することだけは    何があっても許さんぞ・・」

   そこまで言い終えた真西は視線を    上に戻し、しばらく口を閉じる。

真西「もうお前と話すことはない。帰れ」

筑井「・・・・・・・・・・・」

   彼女の怒りの表情を見た筑井は    後ろを向き出口へと向かいだした。

   扉まで到着すると、筑井は    それを開けてから立ち止まる。

   そして、真西の方を振り返り    彼女へ話しかけた。

筑井「僕の認識が甘かったよ・・」

筑井「あなたの覚悟は想像よりも    ずっと上だったようだ」

筑井「真西さんや、そして72の    そんな姿を見せられたんじゃ    こっちも譲歩できなくなった」

筑井「だから、あなたの意に    背くことになるけど    一つ宣言させてもらうよ」

筑井「どんな犠牲を払おうとも    ナナを見捨てることだけはしない」

筑井「それだけは伝えておく」

   その言葉を最後に彼は    医務室から姿を消した。

   筑井が消えてから数分後。

   作業がひと段落したのか則夫が    真西の元へと近づいてきた。

則夫「いいのか本当に会わなくて?」

真西「・・・・・・」

真西「72があいつを選んだ    理由は話してみて理解できた」

真西「それが分かっただけでも    私は十分だ」

則夫「・・・・・・・・」

則夫「お前も大概、強情っぱりだな」

真西「ふっ・・・・・。    そうかもしれんな」

   そして、筑井は    早足で一般医務室まで戻る。

   花園を待たせていたからと言う    のが早足になっていた理由の一つで

   それに加え、真西と会話したことに    よって決意が固まっていた彼は、

   昨夜考えた今後の展開を彼女に    早く伝えたいと思っていたようだ。

   そうして医務室まで到着した筑井。

   その扉を彼は勢いよく開けた。

花園「ん?」

ナナ「ッ!?・・・」

   花園とナナの2人は、若干息を    切らしながら勢いよく戻って来た    筑井に驚く様子を見せていたが、

   筑井もまた中の状態を見て    彼女達と同様に困惑の色を    見せていた。

   中にはなぜか、いくつかの洋服が    広げられおり、その服をナナが    試着していたようなのである。

ナナ急に入ってくんな!!

   するとナナは筑井に向かって    思いっきり走り寄り、彼の胸    目掛けて拳を前に出してきた。

筑井「ンぐっ!?・・・」

   吹き飛ばされた勢いで筑井は    その場に倒れてしまうことに。

   不幸中の幸いか、彼女の体力が    まだ完全に戻り切っていなかった為    苦しむ程のダメージは受けずに    すんでいた。

筑井「痛って・・・・」

   それから、仰向けになって    倒れていた姿勢をなんとか    起き上がらせる。

花園「急に殴ることあらへんやろ・・!」

花園「私でも浮気レベルのことされんと    男はボコさんゆうのに・・」

ナナ「こいつはいいんだって!」

筑井「そりゃないよ・・」

筑井「そ、それより今    何してたんですか?」

花園「この子が服欲しい言うからさ、    寮内を探してきてやったんよ」

花園「それで、ちょっとおもろいもん、    見つけたんやけど、この服    誰のもんやと思う・・?」

筑井「え・・?さぁ・・?」

筑井「島民のじゃないんですか・・?」

花園「いやいや違うんよ。    これ実はな、藤崎監督が昔    着とったものらしいで」

花園「あんたが出てからすぐ    則夫さんに電話して聞いたんよ」

ナナ「えっ・・?!まじで・・・」

ナナ「それならちょっと嫌なんだけど」

花園「贅沢言うな、この島に子供が    おらんから、あんたに合うの    これしかなかったんやって」

ナナ「私は子供じゃねえし・・」

花園「それより、筑井くんだっけ。    私は時間ないしもうここ出るから」

花園「はよ戻って来てくれて    ありがとな。」

花園「それじゃ」

筑井「え、あぁ・・それじゃ・・」

   花園は広げていた衣類を    カバンに入れ、そそくさと    部屋を出て行った。

筑井「えっっと・・、    もう大丈夫なの?」

ナナ「見りゃ分かんだろ」

筑井「大丈夫ってことでいいのかな。    昨晩のこともあったからさ‥」

ナナ「そのこと他の奴に喋ったら    完膚かんぷなきまでにぶちのめすからな」

筑井「喋るわけないだろ・・」

筑井(真西さんには喋っちゃったけど)

筑井「それより話があるんだ‥!」

筑井「聞いてくれないか?今後に    ついての大事な話なんだ」

ナナ「大事かどうかはこっちが決める」

ナナ「聞くだけ聞いてやるから話せ」

筑井「ありがと。この話を聞いて    これから君自身がどうするか    改めて考えてくれればいい」

ナナ「くどい、そういうの    いいから早くしろ」

筑井「わ、分かった・・」

筑井「まず君を槍薔薇へは    連れて行かない」

ナナ「槍薔薇・・?」

ナナ「藤崎は元々そこへ    私を連れて行くつもり    だったってこと?」

筑井「そう。でも僕の意思で    それを変える」

ナナ「変える理由ってのは、そこに    私がいたら邪魔だからだろ?」

筑井「そうじゃない。    槍薔薇が最善じゃないと    判断したからだ。」

筑井「むしろきみにとって    都合が悪いことが多い。    さっき調査の話だって    聞いていただろ?」

ナナ「・・・まあ、たしかに」

ナナ「それで、行く宛はあるわけ?」

筑井「うん、ある。でもそれを言う前に    ある仮説を聞いてほしいんだ」

筑井「それを話して初めて、そこへ行く    ことを納得して貰えると思うから」

ナナ「別にいいけど、それで、    ある仮説って言うのは何よ・・?」

筑井「仮説って言うのは    "監督の真意"に    ついてだ・・」

筑井「それを説明するにあたって    まず2日前の夜、僕達3人が初めて    会った時の話をさせてもらう」

筑井「彼女がその時、言ったセリフに    "ここには戻ってこない"    という発言があったの覚えてる?」

ナナ「そういや、言ってたっけ・・」

筑井「それを初めて聞いた時は    特に何も感じていなかったけど、」

筑井「後に別の人物の話を聞いて、    その発言が矛盾をしているのでは    ないかと思うようになったんだ」

筑井「そしてそれが、行先を    思いつくきっかけに繋がった」

ナナ「・・・・・」

ナナ「ここには戻って来ないね・・」

ナナ「それって島には戻らないって    ことだろ?それのなにが    矛盾してるって言うの?」

筑井「普通に考えたらそうなるよね」

筑井「でも僕は大内田 未來あるやりばらのせいとに    こう聞いた・・」

筑井「合宿後、この島で監督に    稽古をつけてもらうと」

筑井「その未來かのじょの発言でも分かる通り、    近いうちに監督はこの島に    戻ってくる約束をしてるんだ」

筑井「それなのに、"島には戻ってこない"、    と言うのは不自然だと    思わないか?」

筑井「島に戻ってくることは頭に    あるだろうし、咄嗟に出る言葉    としては少し違和感を感じる」

ナナ「んぅ・・まあ・・」

筑井「それで僕は    "ここには戻ってこない"の、    "ここ"が意味する場所は」

筑井「島以外の別の場所を示して    いた可能性があるんじゃ    ないかと踏んでいる」

ナナ「・・・・・・・」

ナナ「全部こじつけじゃん・・、」

ナナ「って言いたいところだけど、    それでも全く筋が通ってない    わけではないわね」

ナナ「だから、一応話の続きは    聞いてやるよ」

ナナ「それで、その場所って    どこのこと?」

筑井「戻らない場所がどこかって言うと    たぶん、それは・・」

筑井「槍薔薇のことだ」

ナナ「は・・?なんで槍薔薇なの?」

筑井「その理由はシンプルなものだよ」

筑井「さっきも言ったけど監督は    きみを槍薔薇で保護すると    言っていただろ?」

筑井「でも、ナンバーと監督は    接触禁止の契約を交わしている」

筑井「もしきみを保護しているのが    バレたら色んな方面に影響が    出ることになる」

筑井「それを懸念けねんしてナナがいる間は    槍薔薇には戻ってこないんじゃ    ないかと思ってるんだ」

筑井「僕に面倒を見ろと言ったのも、    おそらく自分が戻って    こないからだと思う」

ナナ「結局、藤崎が帰ってくるのに    私が邪魔だから槍薔薇にはんなと    そう言ってるように聞こえるけど」

筑井「そういうわけじゃないよ・・」

筑井「今まで言った内容はまだ    真意の一歩手前の話だ」

筑井「槍薔薇には戻らない    という情報とは別に、」

筑井「しっかり彼女が本来連れて    行くべきだと考えていた場所も    明示してくれていたんだよ」

筑井「初めてあった日あの日の夜に・・・・」

筑井「本来ならその場所のことは誰にも    話すつもりはなかったんだろう」

筑井「現にその場所のことは僕が聞いてる    限り、医務室ここでしか名前を出して    いないはずなんだ」

筑井「たぶん、僕達と実際に話をする中で    もしかしたら本心を無意識の内に    さらけ出してしまったのではないかと    僕は思っている」

ナナ「・・・・・・」

ナナ「契約のせいで自分が連れていくことも    できないし、そこへ連れて行くのも    あんたには任せられない・・」

ナナ「だから消去法で槍薔薇を    選んでいただけ」

ナナ「あいつの中での本命ルートは    別にあったと言いたいわけね」

筑井「あぁ、そうだよ・・」

筑井「監督が僕に任せられなかったって    言うことは、そこへ向かうのは    危険を伴う行為なのかもしれない」

筑井「だけど、もう向かうと決めた。    彼女の意思がどうであろうと    最善解はそこしかないと思ってる」

筑井「輪山‥!!」

筑井「島を出たらそこへ向かうぞ!」

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