全文表示 巨大女子相撲部

   医務室内に案内され筑井は    奥へと歩みを進める。

   室内に大きな変化はなく、    何か変わった所があるとすれば

   美穂が寝ている場所をカーテンで    目隠ししているぐらいであった。

則夫「おぉーい。連れてきたぞ」

   則夫は美穂の隣で寝ている    もう一人のミドルに声をかける。

真西「・・・・・・・」

   声をかけられてから仰向けになって    上を見ていた彼女の視線は    歩いてくる二人へと向けられる。

   優しさとは全く逆の威圧的な    印象をその目からは感じられた。

   だが、それが敵意でない    ことを筑井はなんとなく    理解できていたのか、

   そのミドルに対して恐怖心を    抱くことはなかった。

   二人が目の前に到着する前に    挨拶代わりと言わんばかりに    彼女が先に口を開く。

真西「お前が筑井 細奈か・・」

筑井「・・・・・・・・・・」

筑井「あなた・・、真西さんですよね」

   昨夜から彼女の正体が何者で    あるか予測のついていた彼は    思い切ってその名を口にした。

真西「私のことを知っているか」

真西「誰から聞いた・・?」

筑井「美穂さんとそして、その美穂さんが    連れてきた女の子からだよ」

真西「そうか・・」

真西「74セブンフォーは口が利ける    ぐらいには回復しているんだな・・」

真西「それが聞けただけ良かった」

筑井「元は74って呼ばれてたんだね」

筑井「もう彼女は君が思っている    以上に回復してると思う。」

筑井「すでに元気すぎて、むしろ困ってる    ぐらいだよ。ほんと・・・」

真西「ふっ・・」

真西「なら、心配する必要は    なさそうだな」

則夫「これから二人で話を進めるよう    だし、俺は永嶋さんの様子    見るから抜けるぞ」

筑井「分かりました・・」

   則夫が美穂の元に向かうのを    見てから、筑井は先ほどの    会話の続きを始める。

筑井「ちなみに、彼女のことを    ナナって呼んでるよ。    監督がこの名前を付けたんだ」

真西「監督・・藤崎のことか・・」

真西「彼女がナンバーに名をつけるとはな。    それにしてもナナか・・悪くない」

筑井「72セブンツーが使っていた名前だよね」

筑井「まさか一緒になるとは    思ってなかったから、    聞いた時はちょっと驚いたけど」

真西「お前72と会っていたのか?」

筑井「うん、そうだけど・・?」

真西「会えていないと聞いていたんだがな」

真西「この嘘もおそらくあいつの    筋書きの一部というわけか・・」

筑井「筋書きって・・?」

真西「74・・」

真西「いやナナの為の筋書きだ」

真西「あいつを外で暮らさ    せる為に色々と奴は    仕込みを行っていたのさ」

筑井「・・・・・・・・・」

真西「奴は己の全てを賭けそれを    果たしたわけだが‥、まずお前に    聞いておきたいことがある」

真西「お前にとって72とはなんだ‥?    どういう存在だ‥」

筑井「存在・・・・・?」

真西「奴は仮にもお前を誘拐しに来た    男だぞ、そんな奴の知り合いの女だ」

真西「ナナを引き受けることにリスクが    あることぐらいは考えるはずだ」

真西「いったい72とお前の    間に何があった・・」

真西「そしてお前は奴のことを    どう思っている‥?」

筑井「・・・・・・・・・・」

筑井「存在がどうとかって言われると    ちょっと分からないけど、72と    話してみて感じたことはある」

真西「・・・・・・・・・」

筑井「僕の中での彼の印象は    人の為に自分を捨てられる人」

筑井「そういう風に見受けられた」

筑井「率直に言えば悪い人では    ないと思っている」

筑井「だから、彼の為になるなら    彼女を請け負うのも仕方がない    というか・・なんかいうか・・」

筑井「僕ってその・・断れない性格    なんだろうね、きっと・・ハハ・・」

真西「自分を捨てられるか・・」

真西「その見解は間違っていない」

真西「そして、私から見たお前の印象も    お前から見た72の印象と    同じものとだけ伝えておこう」

筑井「・・・・・」

真西「だが、私は自己犠牲を美談として    語るのはあまり好きではくてな、」

真西「どんな理由であれ72やつの    犠牲を許すつもりはない・・」

筑井「ナナから彼のことは聞いてるよ。    僕としても残念で仕方がない」

筑井「さっきの話で不快に    感じたなら謝るよ・・」

真西「不快になど思っていない。    むしろ謝らなくてはいけない    のはこちらの方だ」

真西「ナナを無理矢理押し付ける形に    なってしまっているからな」

筑井「それは気にしなくていいよ。    元々、彼と約束していたから」

真西「約束・・?」

筑井「72との別れ際にナンバーの話、    そしてパートナー制のことを聞いた」

筑井「その時にパートナーがもし    来たら、相手をしてほしいと    頼まれてたんだ」

筑井「それに対して僕は友達なるって    言って了承をしている」

筑井「だから真西さんが負い目に    感じることはないよ」

真西「74が槍薔薇に向かえと言っていたが、    そういうことだったのか、全部    72の計画通りというわけだな」

真西「だがな細奈‥」

真西「もしもの時がればナナを切るんだ」

真西「あいつは仮にもナンバーの1人・・。    いつどうなるかは分からん」

真西「お前の犠牲のもとで成り立つ    ナナの幸福など72とて本望    ではないだろう」

真西「そして、その思いは私も同じだ」

真西「余計な犠牲が出れば、お前が何と    言おうと負い目を感じることになる」

筑井「・・・・・・・・・・」

筑井「そうだよね・・・・・」

筑井「でも、さっき真西さん僕の印象が    72と似てるって言ってたよね」

筑井「だからもし、そうなった時    あなたの理想通りにはならないと    思っていてほしい」

筑井「72や美穂さんのこともあるし    これ以上、何も失いたくは    ないんだ・・・」

真西「それがお前の意見か・・」

真西「私は金輪際ナナと関わるつもりは    ない。だから、そうなった時の    判断はお前に任せよう」

筑井「関わらないってなんで・・・!?」

筑井「ミドルで唯一、いや・・人で    唯一心を許してるのが    真西さんだけかもしれないのに」

筑井「昨日だってあなたの名前を・・」

真西「だからこそだ・・」

真西「もし、私と顔を合わせれば    ナナは私の傍から離れないかも    しれないだろ・・」

真西「そうなってしまえば72の意思。    そして、ナナの夢を否定    することになる」

真西「私に依存し続けるようで    あれば、ナナは間違いなく    ナンバーに戻ることになるからな」

真西「だから、私と会ったことは    絶対にナナにだけは伝えるな。    約束してくれ」

筑井「分かった・・・」

真西「ナナについて今後どうするのか    決まっているのか・・?」

筑井「一応槍薔薇で保護すると    藤崎監督には言われているけど」

筑井「でも、その藤崎監督はナンバー    との接触を禁止されている」

筑井「それに加えて、さっき孔雀ヶ原の    監督から槍薔薇に調査が入るって    情報も聞いているし、」

筑井「とてもじゃないけど槍薔薇へ    ナナを連れて行くことは    できない」

筑井「だから、僕は彼女を    別の場所に送り届ける    つもりだ」

真西「藤崎の意に反するつもりか・・」

真西「だが私もその判断は間違って    いないと思う・・」

真西「その調査が入るのも、    もしかしたらナナことが    関係してのことかも    しれないしな」

筑井「・・・・・・・・」

筑井「今の所どうするかって    言われたら正直これぐらいの    ビジョンしか見えてない」

筑井「色々なことがあって、これ以上    考える余裕がないって言うか・・」

真西「色々なこと・・。    それは永嶋のことか?」

筑井「うん・・」

筑井「ここに来たら尚更    彼女のことが気になってさ・・」

筑井「それに真西さんと会話を    していても彼女のことを    思い出してしまう・・」

筑井「72を迎えに来たのは君なんだろ?」

筑井「その時、力で完敗したと言って    とても悔しそうにしてたから」

真西「ふっ・・相変わらずだな」

真西「私も心のどこかであいつとの    試合を楽しみにしていたんだが・・」

真西「それも、もう実現できそうにないな」

筑井「・・・・・・・」

筑井「彼女の怪我の具合が、    どの程度かは聞いてるんだね」

真西「それは聞かずとも分かる。    だが、問題はそれだけじゃない」

真西「仮に永嶋が前線に戻れたとしても    私には居場所がないんだ」

筑井「居場所がない・・?」

筑井「試合って言うのが女子相撲大会の    ことを指してるのは分かるんだけど」

筑井「きみは元々別の学校の    生徒だったってこと・・?」

真西「超太重成ちょうだかさなり高校こうこう。    そこに在籍していたが、    まあ見ての通りだ」

筑井「・・・・・・・・」

筑井「きみがナンバーと関りが    あるってことは、その高校は    女子相撲協会が直接運営している    学校になるのかな?」

真西「ッ・・・・」

真西「その発言から察するに・・。    ナンバーと協会の繋がりまで    知っているのか・・。」

真西「内情にもだいぶ詳しく    なっているようだな」

筑井「そこにいる則夫さんや    ナナから話を聞いてるからね」

筑井「それで、まだその高校のことに    ついて聞きたいことがあるんだ」

筑井「昨日、白と黒の服を着た二人組が    この島に来ていたんだけど    その二人も超太の生徒なの‥?」

真西「あぁ、そうだ。    お前も奴等を見たのか?」

筑井「うん、美穂さんが倒れている    姿を発見した時に、その2人も    そこにいたんだ・・」

真西「僕と則夫さんが彼女達を発見した    すぐ後に未來さん‥えっと、」

真西「うちの大将が2人を吹き飛ばした    から、その後どうなってるかは    分からないけど・・」

真西「大内田 未來か・・」

真西「そういえば奴にここまで    運んでもらったらしいな」

真西「もし、お前が会うことがあれば    代わりに礼を言っておいてほしい」

筑井「未來さんならまだこの島にいる    みたいだよ。一応僕の方からも    会ったら伝えてはおくけど」

筑井「ちなみに君やナナを狙って    その2人はこの島に訪れて    いたんだよね?」

真西「そうとも言えるし、    そうじゃないとも言える」

筑井「とにかく狙われてたんだったら    未來さんもいるし、もう心配    することはないと思うよ」

真西「その件についてだが、    お前の発言で気になる点が    一つある・・」

真西「それについて答えてほしい」

筑井「?・・・・・・」

真西「その2人というのは    どこからどこまでを指している?」

筑井「えっ・・・・?」

筑井「2人って決まってるじゃないか。    くっついてた2人がいたんだよ」

筑井「その人達のことだって・・・・・」

真西「・・・・・」

真西「奴等に返り血は    ついていたか・・?」

筑井「・・・・?」

筑井「えっ・・・・・?」

真西「私や永嶋をやったのは    そいつらではない」

筑井「はっ・・!?」

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