全文表示 巨大女子相撲部

   廊下での会話を終え、医務室に    入った筑井とナナの二人。

   それから、お互い口を利くことも    なく、いつもの定位置へと戻る。

   その後、彼は眠むることもできず    ただ天井を見つめていた。

   その間ひたすらこれまでのことと    これからのことを考える。

   まず、彼が考えていたこと。

   それは先ほど浜辺に訪れていた    謎の二人のミドルについてであった。

   あの二人がどこの    誰で何が目的なのか?

   それを知る術は現状ないにしても    目的に関しては全く見当がつかない    わけではなかった。

   筑井が推察していた    彼女達の目的。

   それはナナの奪還である

   それが目的だと思い込んでいた    彼は、藤崎がいない槍薔薇で    ナナを一時的にでも保護するのは、    危険だと判断していたようだ。

   とは言ったものの、槍薔薇以外に    彼女を匿う場所の見当などついている    わけもなく、ただ漠然と悩むだけ。

   それでも、今は眠気もなく    ただ時が過ぎているだけの    何もない時間。

   考えるだけなら    いくらでも猶予はある。

   できる限り案を出して最善解だけ    でも導き出したいと思った彼は    疲れ切った脳みそで考察を続ける。

筑井「・・・・・・・・・・・」

筑井(ダメだな・・。)

筑井(僕が知っている場所って    だけじゃどこにも、それらしい    場所なんかない・・)

   今まで過ごしてきた場所。

   あるいは見聞きしたことのある地名。

   それらを思い返しても最善と思える    場所が出てくることはなかった。

筑井(結局、僕に何かできることは    監督を待つことだけなのか・・?)

筑井(そもそも監督は彼女がナンバーで    あると知っているのかも分からない)

筑井(いやでも、あの人のことだ。    知らない可能性の方が低いだろう)

筑井(最終的に槍薔薇しかなかったのか    それとも槍薔薇でも問題なかったのか)

筑井(おそらく、そのどちらかの結論に    至った結果だとは思うけど・・)

筑井(ナンバーとの接触は禁止されている    はずなのに、どうしてそんなリスクの    ある選択を選んでいるんだ・・?)

筑井(そういえば、監督自身そんなに    学校内にいることはないんだっけ?)

筑井(少なくとも一緒にいるところは    見られないと言う判断か?)

筑井(今回みたいに仮に人が襲撃して    来ても、未來さんがいるから大丈夫    みたいに考えているのかな・・?)

筑井(でも・・未來さんって確か    この島に特訓しに来たって    言っていたよな・・・?)

筑井(そうなると彼女は槍薔薇に戻ることは    ないだろうし、彼女の存在が抑止に    成り得るわけではないか・・)

筑井(だとしたら他の3年生?でも事情を    把握してる人が他にいるとは思えない)

筑井「・・・・・・・・・・・」

   そこまで考え終えた彼は    なぜか一度固まる。

   思考を止めたわけではなく    何かを思い出し、それに    違和感を覚えていた。

筑井(んっ・・まてよ・・)

   何かに気付いた様子の筑井。

   そこから更に状況を整理しなおす。

筑井(だとしたら、あの時の    あの発言っておかしくないか・・)

   筑井は今までこの島で起こった    出来事を思い返し、ある一つの    疑問を抱く。

   ある一言が彼の中で引っかかり    そこから連鎖的に答えを掴み    とるきっかけとなっていた。

   それは憶測にすぎないもの。    だが、今の彼にとっては何よりも    突き動かすに十分な情報であった。

筑井(これはありえるか・・?)

筑井(でも、こう考えれば何かと筋は    通るしこの選択が最善だ    としか思えない・・)

筑井(まず、それを成す為に情報収集を    やらないといけないな・・)

筑井(確実なのは則夫さんに聞くことか。    でも、もしそれで駄目だった場合・・)

筑井(いや、それでも宛は一つだけある)

筑井(かなり曖昧なものだけど・・、    賭けれるだけの可能性はあるな・・)

   トントンッ!!

筑井「・・ッ!?」

   彼が結論を導き出すと    医務室のドアをノック    する音が聞こえてくる。

   時間を確認すると、    すでに朝の6時30分。

   思っていた以上に時間が早く    過ぎていたことに驚きつつ彼は    もう一つの変化に目をやる。

   その音に気付いてかナナも    顔上げドアに目を向けていたのだ。

   お前が確認しに行けと    言わんばかりに、視線を流す    ナナの様子を見た筑井は、

   嫌々、ドアの方へと    近づき扉を開ける。

   扉の前に立っていたのは    孔雀ヶ原相撲部の監督    花園 真由里。

   今朝、この人物が藤崎と一緒に    相撲部員達の前に立っいたことを    覚えていた筑井は彼女が何者で    あるかすぐに把握できていた。

花園「もしかしてまだ寝とった?    ちょっと眠たそうに見えるけど」

筑井「い、いえ大丈夫です」

花園「すまんな、いきなり」

花園「私は孔雀の監督で花園言います」

花園「ちょっと頼まれごとされて    ここまで来たんよ」

筑井「ど、どうも筑井 細奈です」

筑井「頼まれごととはいったい?」

花園「則夫さんがあんたに話ある    言うとるから代わりに私が    ここに来たっていうわけ」

筑井「則夫さんが話・・?」

花園「そっちにおんのが    ナナって言う子よね?    藤崎監督から話は聞いとるよ」

ナナ「・・・・・・・・・・・・」

   睨みを利かせるだけでナナが    言葉を返すことはなかった。

   しかし、それも分かっていたのか    その態度を気にすることもなく    彼女は中に入り筑井に話をする。

花園「あんまり時間もないし、    すぐ女子相撲部用医務室に    行ってきてくれるかな?」

花園「私これから部員達の世話も    せなあかんからさ」

筑井「分かりました・・」

筑井「ちなみに要件って言うのは    どういった内容のものなんでしょうか?」

花園「さぁな・・。私は何も聞いと    らんから分からんわ」

   則夫に相談しなければ    ならないことがあった、    彼にとっては好都合な出来事。

   彼女が急かしていたこともあり    すぐに医務室を出ようとすると、    一旦それは花園に止められる。

花園「ちょい待ちっ!」

花園「言い忘れ取ったことあった    から聞いてくれんかな?」

筑井「・・・・・?」

花園「藤崎監督が島から    出て行ってもうたやん?」

花園「その関係もあってか    槍薔薇は今日の夕方で    この島出る予定になっとる」

筑井「そ、そうなんですか」

花園「何でも槍薔薇に調査    入るらしくてな、元々の日程は    もっと後やったらしいんやけど、」

花園「何の因果かそれが    早まった言うから学校に    戻す話になったらしいで」

筑井「調査って言うのは・・?」

花園「相撲部員達の実態調査」

花園「水準以上の生活環境が保たれてるか    確認する為の調査やから別に    大したもんやないよ」

筑井「・・・・なるほど」

花園「とにかく、夕方までには    出発の身支度済ませとき」

筑井「は、はい‥」

   それから筑井は部屋を出て、    女子相撲部用の医務室を目指す。

   なぜ呼ばれているのか理由が    不明確なため、悪い知らせでもあるん    じゃないかと思い移動中彼は、    不安を募らせていた。

   そして、一般寮を抜け    女子相撲部寮に差し掛かると    1人の生徒とすれ違う。

美海「あれ、先輩おはようございます!」

   そこにいたのは美海    偶然彼女と廊下で遭遇する。

   1日会っていないだけで    だいぶ久しぶりに会ったような    感覚を彼は覚えていた。

筑井「あぁ、美海おはよう」

筑井「どうして、こんなところに    一人でいるの?」

美海「えっと、その    寝坊しちゃって‥」

美海「皆起こしてくれてたみたい    なんですけど寝起き悪いんで    起きれないんですよね・・」

美海「他の皆は先にご飯食べに    行ってると思います」

筑井「寝坊か・・・。    まあイメージ通りだね」

美海「イメージ通りって何なんですか!    私そんな風に思われてたんですか

筑井「ごめんごめん・・。    そんな怒らないでよ」

美海「いえいえ、私もそんな    本気怒ってないですから」

美海「むしろ先輩昔よりずっと自然に    接してくれるんでちょっとだけ    嬉しく思ってますよ」

美海「あの、ところで先輩・・」

筑井「ん・・・?」

美海「話変わるんですけど、ナナあのこの    様子は大丈夫ですか・・?」

   どうやら美海はずっとナナのことを    心配していたらしくこの質問を筑井と    会った時、最初に聞こうと予め    考えていたようである。

筑井「んぅ・・そうだな・・」

筑井「大丈夫っては言えないかな」

美海「怪我もひどかったですし    まだ、寝込んでたり‥」

筑井「そういうわけじゃないんだ」

筑井「もう目を覚ましてるし、体調が    悪いってことじゃないんだけど」

筑井「なんて言うか心を開いてくれ    ないんだよね・・」

筑井「上手くはいってないよ・・」

筑井「ハァ・・・・」

美海「そうなんですか・・。これから    仲良くなれればいいですけど」

美海「ちなみに、今日の夕方に槍薔薇に    帰るって話聞いてますか?」

筑井「うん、聞いてるよ」

美海「彼女はどうなるんです・・?」

美海「やっぱりこの島に残るんですかね?」

筑井「いや、監督の話を聞く限り    この島には残せないらしい」

筑井「だから、槍薔薇へ連れて行くと    彼女は言ってたけど・・」

美海「そうなんですか・・」

美海「島に残せない理由があるなら    それも仕方のないことですよね」

筑井「まあ、そうなるよね・・」

筑井「たぶん、彼女も一緒の船に    乗ることになる・・」

   ナナの話を続けるたびに筑井は、    葛藤する表情を無意識の内に    見せてしまっていた。

   このまま何も言わず決断を実行して    よいものなのか・・・、

   心配してくれる美海にまで    全てを隠したままで    良いのかと。

   長い沈黙が続くわけでは    なかったが美海はしっかり    筑井のそんな変化に気付いていた。

美海「先輩!」

筑井「!?」

   彼の悩める姿を見てから美海は    意識を自分へと向けさせるべく    大声で呼びかける。

美海「困った時は私に頼ってください!」

美海「頼りないかもしれない    ですけど、何とか力になって    みせますんで!!」

美海「私言ったじゃないですか!」

美海「先輩が誰かを助けようとしてるなら    それを全力で助けるって」

美海「先輩が不安になってたら    きっとあの子も不安になります」

美海「だから、私が先輩を支えますよ!    あの子を助ける為にもね」

筑井「・・・・・・」

筑井「美海・・・」

   彼女の優しさに少しだけ    涙腺を緩めてしまう筑井。

   それを恥だと感じたのか    その表情を見せぬよう    俯きながら話を続ける。

筑井「ありがとう・・・」

筑井「正直一人で辛く感じてた・・」

筑井「今みたいな言葉をどれだけ    求めてたか分からない・・・」

筑井「誰にも何も言わず動こうなんて    僕如きじゃ限界があったと思う」

筑井「美海、だったら僕の頼みごとを    一つ聞いてくれないか・・!」

筑井「必要になるかも、手に入るかも    まだ不明確だけどやってほしい    ことがあるんだ」

美海「何でも言ってください!    やれるだけやってやりますよ!」

筑井「その返事が聞けた    だけ良かったよ」

筑井「今は時間があまりないんだ。    内容については帰りの船で    話しをするよ」

美海「ラジャーです!」

美海「私もご飯早く食べないと    いけないので話は    また後でってことですね」

   そうして二人の体は    すれ違い、それぞれの    向かう先へと進んでいった。

   美海と別れた後、    筑井は女子相撲部専用の    医務室前に到着する。

   一般入り口隣に設置してある    インターホンを鳴らして、    中にいるであろう則夫を呼び出す。

則夫〚おお、来たか筑井くん。    ちょっと待ってろ〛

   その一言だけを言い残し    通話は途切れる。

   その後インターホンの    前から一歩も動くこともなく    筑井は則夫が出てくるのを    待っていた。

   そして、しばらくすると    目の前のドアが開く。

則夫「すまんな朝から」

筑井「い、いえ大丈夫です」

筑井「それより話って言うのは?    まさか美穂さんに何か・・」

則夫「永嶋さんなら一命を    取り留めてる。もう心配    することはない」

則夫「だから、彼女のことで    呼んだわけではないんだ」

筑井「そうなんですか、良かった。    でも、だったら何の用で・・?」

則夫「中にいるもう一人が    筑井くんと話をしたいってよ」

筑井「・・!?」

筑井「・・・・・・・・・・・」

筑井「そういうことですか・・。    分かりました・・」

筑井「僕からも彼女と話をしたいと思って    いたので、丁度良かったです」

筑井「その前に則夫さん・・」

則夫「んっ?」

筑井「ちょっと質問をして良いですか?    個人的なことにはなるんですけど」

則夫「なんだ?・・・・・」

   それから筑井は則夫に    あることを質問した。

   それを聞いた則夫は一度考え込む    動作を取ってから返答をする。

則夫「んぅ・・・・・」

則夫「俺は出向いたことがないから    知らんな。名前だけなら    聞いたことはあるんだが」

則夫「ただ、まあ分かることはある」

則夫「たしか花盛はなもりからが一番近いって    のは聞いたことがあるな」

則夫「まず、そこへ向かうといい」

筑井「花盛・・?    意外と都会の方なんですね」

則夫「一番近いってだけで    そこからもだいぶ距離は    あるとは思うけどな」

則夫「俺の番号は渡してたよな。    こっちでも調べとくから    花盛についたら一報をくれ」

筑井「分かりました。あの、    もう一つだけ聞きたいことが    あるんですけどいいですか?」

則夫「あぁ、構わないよ」

筑井「あの、監督の連絡先って    則夫さん知っていますか?」

筑井「結局のところ監督に聞くのが    一番手っ取り早いですし、    連絡が取れればいいんですけど」

則夫「いや、俺は知らんな・・」

則夫「そもそも姉貴が携帯なんか    持ってるとは思えんが」

筑井「そ、そうですか」

   この則夫の発言に何か腑に落ちない    といった反応を筑井は見せていた。

   そんな姿を見た則夫はその様子を    疑問に思いつつも気にしても仕方    ないと思ったのか、

   それから筑井を誘導し    医務室内へと入っていった。

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