全文表示 巨大女子相撲部

   女子相撲部専用医務室へと    到着した筑井と未來と則夫の3人。

   その建物は寮から少し離れた    場所に建てられていた。

   見た目は航空機用倉庫を連想させ、    巨大な彼女達でも難なく収容できる    ように作られている。

   到着後すぐ、未來が    筑井と則夫を地面に降ろす。

   どうやら未來はここに訪れるのは    初めてじゃないらしく、

   則夫を降ろす際に慣れた様子で入り口を    開けてもらえるよう頼んでいた。

   地面に降ろされた後、則夫は    一般人用入り口から中に入ると    正面の巨大なシャッターが開きだす。

   中に開閉を行うスイッチのような    ものがありそれでけたのだろう。

   シャッターが開いたのを確認すると    未來は腰を大きく曲げ中へと入る。

   入り口の高さも3年生のミドルが    入れるよう20m前後の高さが    あるのだが未來からすれば    それでも低すぎるようだ。

   筑井が一般入り口横から未來の    様子を見てみると中にはいくつかの    マットが床に敷かれており、

   その中の一つに美穂を    寝かせようとしていた。

   割れ物を扱うよりも慎重に    美穂をゆっくりマットに    乗せる姿を見届ける。

   無事寝かせられるのを確認し終え、    もう一つ気になっていたことが    あった筑井は視線を美穂の隣に移す。

   そこには見覚えのないミドルが    もう一人倒れていたのである。

   その人物が何者であるか    彼には心当たりがあった。

   ナナを運ぶ時のことである。

   あの時、美穂と藤崎の会話の内容で    もう一人の怪我人がいることを    聞いていた彼は隣に寝ているミドルが    その人物で間違いないと考えていた。

   そして、その怪我人が誰であるかも    すでに美穂から話を聞いて知っている。    真西 椿であると。

   彼の予想通りそこに    眠っていたミドルは    真西 椿。

   だが、今は美穂のことが気がかり    だったため筑井は彼女について    誰かに何か聞くことはしなかった。

   それから未來が中から出てきた少し後に    入り口のシャッターが閉まりだす。

   そして則夫も中から再び外に出てきた。

則夫「運んでくれてありがとな。    後のことは俺に任せてくれ」

未來「分かりました。美穂のこと    よろしくお願いします」

未來「私はこれからさっきの二人の    様子を見てきますね」

則夫「お前は強いから心配はしてないが、    相手は得体のしれない連中だ。    あまり油断はするなよ」

未來「はい」

   二人の会話がひと段落すると誰かが    こちらに向かって声をかけてきた。

功刀「大内田 未來さん    お久しぶりです」

   そこにいた人物は、二崎と功刀。

   浜辺から移動していた彼女達は    筑井達より少し遅れて医務室に    到着してきたようだ。

未來「あら、見つかちゃった。    私が来ていることは    皆に内緒にしててね」

功刀「それはいいですけど、    なんで内緒にしてるんですか?」

未來「藤崎監督に特別稽古をつけて    もらうつもりだったのよ。    秘密の特訓だから内緒なの」

功刀「大会優勝後なのに、まだ強く    なられるんですね。さすがは    大内田 未來さんです」

未來「それはどうも。まあ、    プロ試験のためなんだけどね」

二崎「あ、あの未來さんすみません・・」

二崎「美穂見てませんか・・?」

未來「美穂ならこの中にいるわ」

未來「ちょっと疲れてたみたいだから    今、中で寝ているところよ」

二崎「・・・・・・・・・・」

二崎「だったら、中に入れ    させてください・・」

二崎「彼女に話しておき    たいことがあるんです」

則夫「いや、中には入らんでくれ」

則夫「患者は彼女だけじゃないんだ」

   二崎が何者なのか則夫自身    それを知ることはなかったが、

   美穂との関係はその様子から何となく    察することができていたようである。

   未來も則夫もまた彼女が美穂の容態を    知れば、間違いなく取り乱すものだと    考えていたので中には入れさせない    ようにだけ努めていた。

二崎「・・・・・・・・」

   二崎が一歩前に踏み出したのを    見た功刀が彼女の肩を掴み    動きを止める。

功刀「気持ちは分かりますけど、    彼の言うことを聞くべきです」

二崎「・・・・・・・・・」

   彼女の言葉を聞いてから二崎は    一歩引き下がり険しい表情となる。

   しかし、そこから反抗的な    態度を見せる様子はなかった。

   それを確かめてから次は    功刀が一歩前に出る。

功刀「藤崎則夫さんですよね?」

功刀「この島でお医者さんをやっている    のは耳に挟んだことがあります」

則夫「俺のこと知ってるなんて珍しいな」

功刀「えぇ、まあそういうの    調べるの好きなんで」

功刀「申し訳ないですが私からも    質問をさせてくれませんか?」

功刀「このままでは二崎さんも    スッキリしないでしょうし」

功刀「永嶋さんは怪我をしてこちらで    眠っているんですよね?」

功刀「怪我の具合や原因など、簡単にでも    お聞かせいただければ嬉しいのですが」

則夫「・・・・・・・」

則夫「事故による軽い怪我だ。    そんな心配する程のものじゃない」

   一呼吸おいて、則夫に合わせてた    目を二崎の方へと向ける。

功刀「・・だそうですよ二崎さん」

功刀「ちなみに彼はお医者さんです」

功刀「今から治療に専念されるものだと    思いますし私達はもう帰りましょう」

功刀「無事が確認できただけ何よりです」

   二崎の肩を再び掴む功刀だったが    それに反発し彼女は手を振り払った。

二崎「藤崎則夫さんでしたっけ・・」

二崎「本当のことを話して    くれませんか・・・?」

二崎「美穂は誰かにやられ    たんですよね?」

二崎「事故じゃないことぐらい    こっちは分かっているんです」

二崎「正直に話してください!!」

功刀「・・・・・・・・」

未來「ひとみ落ち着きなさい‥!    人を勝手に疑ったりしないの!」

二崎「私は美穂かのじょのことを誰よりも    知ってるつもりです!!」

二崎「確かに練習ではいつも    無茶ばかりしていました‥」

二崎「ですが、今回のように相撲部に    穴を空けかねない行為は    絶対にやらないと断言できます」

二崎「そうなったら誰かに傷つけ    られたとしか考えられません!」

二崎「彼女の様子もこの島に来てから    ずっとおかしかったですし、    何か隠してることがありますよね?」

則夫「・・・・・・・・」

則夫「フゥ・・ハァ・・・・」

則夫「あぁ、お前の思ってる通り    彼女は襲われて怪我をした。    それであってる」

則夫「だが、それは永嶋さんから    喧嘩吹っ掛けたからだ」

則夫「そして相手は襲われたから    返り討ちにしただけのこと」

則夫「あくまで彼女にも    非がないわけじゃない」

則夫「だから弔い合戦なんて    考えるんじゃねぇぞ」

二崎「・・・・・・・・・・・」

則夫「怪我の状態はハッキリ    言って良くない」

則夫「来年の大会はおそらく    出られないだろう」

筑井(そ、そんなに‥‥)

則夫「まあ今回の怪我を見るに生かして    もらったって感じではあるから    死ぬことはないと言っていい」

則夫「しかし、完治するには途方もない    時間を要することになる」

則夫「ここまで話すべきではなかった    のかもしれないが、」

則夫「その様子だと怪我させた奴等を    絶対探しに行くだろうと思ってな」

則夫「永嶋さんのことを思うん    だったら何もするな」

則夫「厳しいことを言わせてもうらが、    今何かされるのは迷惑だ」

二崎「・・・・・・・・」

二崎「クッ・・・・・・・・」

   落ち込んだ二崎の様子を見た    功刀が後ろから声をかける。

功刀「これ以上怪我人が増えてしまえば    則夫さんも面倒を見きれませんし」

功刀「何より、永嶋さんもあなたまで怪我を    してしまったら喜ぶとは思えません」

功刀「後は則夫さんを信じましょう」

功刀「落ち着かないとは思いますが    今日はもう休むべきです」

   それから二崎は何も    喋りだすことはなく、    二人は寮へと帰って行った。

則夫「はぁ・・・・」

   二崎達の姿が見えなくなってから    深くため息をつく則夫。

   間違った行動をとって    しまったのではないか?

   彼のため息はその意志を伝えて    いるように感じられた。

   そんな姿を見たせいか筑井も    また更に憂鬱な気分となる。

   そして彼は先程の会話で気に    なっていたことがあったのでそれを    戻ってくる則夫に尋ねてみることに。

筑井「美穂さん本当に来年の    大会出られないんですか?」

則夫「あぁ無理だろうな・・」

則夫「骨折の箇所も多いしミドルの情報が    少ない以上、完璧な治療を施す    ことができない」

則夫「仮に早く治ったとしても    後遺症もあるかもしれんし」

則夫「それがなくても間違いなく他と    差が開く結果になるだろう」

筑井「そ、そうなんですか・・」

筑井「・・・・・・・」

筑井(美穂さん誰よりも頑張ってたのに‥。    僕だって彼女のこと応援しようと‥)

   今になって、昨夜あの浜辺に誘導され    会話をしたのにも今夜の出来事が    関係していたのではないか・・。

   そう考え始めていた彼の心境は    より複雑なものとなっていた。

   美穂はあの場でもっと強くならなけ    ればいけないと決意を新たにしたにも    かかわらず再び惨敗を喫している。

   それに加え大怪我まで負い、    その怪我も治療にはかなりの    時間を要するものであれば

   仮に意識が戻っても戦線復帰する    気力はもう残っているはずもない。

   今までの彼女の頑張りを    知っている筑井は、

   もう戻ってこないかも    しれない彼女のことを思い    胸を苦しめていた。

   気鬱な雰囲気に包まれる中    未來が最初に口を開く。

未來「後輩達がご迷惑をおかけして    申し訳ございません・・」

則夫「お前にも大概世話    焼かされてきたからな。    今さら気にはしないさ」

未來「じゃあ、私は先ほど言った通り    あの二人を回収しに行ってきます」

未來「彼女達もここに運んで来た方が    いいでしょうか?」

則夫「あぁ・・それはちょっと困んな・・」

則夫「できれば顔合わせねえ方がいいだろ。    んぅ・・・そうだな・・」

則夫「あいつら自身こっちに危害を加える    様子もないし、ハッキリ言ってこれ    以上面倒ごとが増えるのはごめんだ」

則夫「もし、あいつらの姿を確認したら    安全な場所に移して、もうそのまま    見逃してやってくれ」

未來「そうですか、分かりました・・」

   そして未來は医務室前を離れ    先程の浜辺へと向かって行った。

則夫「俺は今から治療に専念    しなければならん」

則夫「筑井くんももう帰りな。    明日も早いんじゃないのか?」

筑井「そんなことはないんですが・・・」

筑井「て、あ・・?!」

筑井「美香と瑠璃と合流しなきゃ    いけないんだった!」

筑井「人と待ち合わせてるんで    やっぱり僕も、もう戻ります!」

則夫「せわしないな・・」

則夫「あ、そうだ。もし、永嶋さんの    ことを聞かれたら、問題ないで    通してくれ」

筑井「わ、分かりました・・」

筑井「じゃあ、美穂さんのこと    よろしくお願いします!」

則夫「おぅ、任せときな」

   そして筑井もまた移動を開始し、    医務室前から人の姿が消える。

   夜道を一人、走り抜ける筑井。

   そんな姿を影から    見ている人物がいた。

   その正体は美香。

美香「・・・・・・・」

   二崎達の後をつけ医務室前での    会話を全部聞いていた彼女は    筑井が戻るのを確認し、同じように    広場まで移動を開始する。

   そして、謎の二人の様子を確認すべく    浜辺に移動していた未來はというと、

未來(さてと、戻ってきたは良いものの‥)

   あたりを見渡すが先ほど    吹き飛ばしたあの二人の姿は    消えてしまっていた。

未來(おかしいわね‥。あの威力で殴って    もう目覚めてるとは思えないけど)

未來(思ってたよりかなりタフだった    みたいね・・。どういう体の作り    してるのかしら)

未來(一応意識は戻ってるらしいし、    見逃せって言われてるから    深追いはしない方がよさそうね)

未來(はぁ・・・・。    でもこうなるんだったら・・)

未來(マジで殴ってた方が    良かったかしら・・)

   それから未來は彼女が寝泊りを    していたスペースまで帰って    行くのであった。

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