全文表示 巨大女子相撲部

   後方から未來達の様子を見ていた    筑井は、隠れるように茂みの    位置に移動していた。

   安全が確保された後に姿を    現わすことを烏滸おこがましいこと    だと思った彼は、

   自ら前に出るのを    躊躇ためらっていたようだ。

   そんな筑井の様子を    知ってか知らずか    則夫が未來に声をかける。

則夫「なんにせよ、まず永嶋さんを    運ばないことには治療もできない」

則夫「すまないが大内田、彼女を    ミドル用医務室まで運んでくれ。    後、ついでに俺達も」

未來「でも、あの二人はどうします?」

未來「一人なのか二人なのかどっちか    分からないですけど」

則夫「そうだな・・・・」

則夫「ほっとくわけにいかないんだが、    あいつらは後回しでいい」

則夫「できれば、永嶋さんを慎重に    運んでほしいからな」

則夫「奴等も今は気を失っているだけ    だろうし、波も穏やかで脂肪で    沈む心配もない・・」

則夫「となれば彼女を優先    して問題ないだろう」

未來「分かりました」

未來「でしたら寮まで移動するんで    則夫さんとダーリンは私の    肩の上に乗ってください」

未來「あ、ダーリンは好きな    場所でいいのよ」

筑井「・・・・・・」

未來「どうしたのダーリン・・?」

未來「美穂の怪我を見て元気    なくなるのは分かるけど、    返事ぐらいしてくれないと」

筑井「ごめん、肩の上でいいよ‥」

   冴えない表情の筑井を    見て心配をする未來。

   その原因が美穂の怪我に    よるものだけではないと感じ取った    彼女は深く彼の心境を掘り下げる    ことは、しないようにしていた。

   それから筑井は月明かりの灯る    浜辺に姿を現す。

   未來が2階建ての建物程の大きさが    ある手をゆっくり地面に降ろし    二人を肩に乗せるために誘導する。

   先に筑井だけが彼女の手のひらに    乗り肩まで移動するが、

   なぜか則夫が乗る様子を    見せないので未來が    気になって質問をする。

未來「則夫さん何してるんですか?    早くしてくださいよ」

則夫「あ、いや俺高所恐怖症なんだわ。    なんかもっと別の場所ねえの」

未來「高くない場所だと、靴の中しか    ないですけど、それじゃ歩く時    衝撃凄いですよ」

則夫「んぅ~・・だったら    ポケットの中にでも    入れててくんないか。    我慢はする・・」

則夫「そもそも靴よじ登るだけ    でもそこそこ、高いし    それならポケットのが    マシだな」

   そして未來は大きな手を    地面に再び降ろし、それに    恐る恐る則夫が乗る。

   二人が体の上に乗ってから彼女は    美穂を慎重に持ち上げ、    医務室まで移動を開始した。

未來「大丈夫ダーリン・・?」

未來「元気出して」

筑井「ご、ごめんなさい・・」

筑井「ただちょっとショックで・・」

筑井「それにしても、大将は    よく平気でいられるね」

未來「大将でもないし兵器でもない!」

未來「ハニーって呼んでって    言ってるでしょ!」

筑井「そんなこと言ってたっけ・・?」

筑井「それに平気の意味たぶん    間違えてると思うんですけど」

未來「あ、そうなの・・?」

未來「人間兵器なんて呼び名が    ついた時もあったからつい。    ごめんなさいね」

未來「平気って言うのは    気持ちのことよね」

未來「それなら私だって    ダーリンと同じよ」

未來「美穂のことはここに入学してきてから    ずっと面倒見てたし、残念には思う」

未來「でも、その分美穂この子のことを    よく知ってるわ。

未來「このぐらいの怪我なら    乗り越えられるってこともね」

未來「私は美穂を信じてるから    過剰な心配はしてないわ」

筑井「未來さんがそう言うのなら    大丈夫そうですね」

未來「少し元気が出てきたみたいね。    良かったダーリン♡」

筑井「うっ・・・・」ブルッ・・

筑井(そういえば色々なことがありすぎて    今の今まで忘れてたけど    僕は彼女に結婚を迫られてるんだ)

筑井(こんなタイミングでさすがに性行為    とか求めてはこないだろうけど、    心配ではあるな・・・)

筑井(あれ?そういえば・・    なんで彼女はここにいるんだ?)

未來「なんで私がここにいるかって?    えっとそれはね・・・」

筑井(心の声読まれてんだけど・・。    強い人はみんなこうなのか・・?)

未來「実は私、後輩達の合宿が    終わった後、この島で監督に    稽古をつけてもらう約束    していたの」

未來「それでこの島にいるわけ」

筑井「なるほど、そうなんですね・・」

未來「ちょっと敬語やめてよ!!」

筑井「ヒっ・・!?」

未來「さっきから大将って読んだり    未來さんって言うのも気になって    たけど、さすがに我慢の限界!」

未來「いずれ一つ屋根の下で暮らすんだから    そういうのはやめてちょうだい!」

筑井「わ、分かった・・」

筑井(怒らせるとめちゃくちゃ怖い・・)

筑井「でもなんでこんなに早く・・?    まだ、合宿中なのに?」

未來「それはもちろん・・・」

未來「ダーリンの顔を一目見たくて♡    監督にはダメって言われてたんだけどね」

筑井「ゔ・・・・っ」

筑井「そ、そうなんですか・・」

未來「だから敬語やめてって    言ってるでしょ!!

筑井「ひぃいい!?」

   恐怖で転げ落ちそうになる筑井。

   それを何とか肩を上げて    未來は抑える。

未來「ちょっと、優しく言ってるのに    そんなに怖がらないでよ」

未來「夫婦生活になれば、喧嘩も    あるでしょうし、このぐらいで    緊張してたら駄目よ!」

筑井(これで優しいって・・。喧嘩に    なったらどれだけ怖いんだ・・)

筑井(いや、たぶん怖い    とかの次元じゃない)

筑井「そ、そんなこと言われても・・」

筑井「未來さん、風格と言うか    迫力が女子高生のそれじゃなくて    つい敬語にもなっちゃうんですよ・・」

未來「う、ハニー悲しい・・」

未來「次は本気でオコっちゃ    おうかな・・

   未來の表情に大きな変化はなかったが    妙な息苦しさを感じ始めた筑井は    急いで謝ることにしたようだ。

筑井「ご、ごめんよ、ハニー!!」

筑井「僕が悪かったから怒らないで・・」

未來「やっぱりダーリン優しい♡」

未來「さすが私に勝利を収めた男ね」

筑井(それは実力で勝ったわけ    じゃないのにな・・・)

筑井(というか一応、僕が    勝ったんだから結婚の話は    なくなってるはずだろ。    なんでまだ諦めてないんだ・・)

未來「そうそう、ダーリンに    大事な話があるの」

筑井「な、なんだいハニー・・」

   恥ずかしがりながらも    彼はなんとかハニーと    呼び続ける。

   美穂の件からずっと    筑井にとっては    苦しい時間が続いていた。

未來「今年大会で私達が    優勝したのよ」

筑井「ヒええええェ・・!?」

   一番恐れていた話題に入り    筑井は頭を抱えだす。

   先ほど浜辺で起きた出来事よりも    恐ろしいことが今から起こるかも    しれないと思い、彼は恐怖していた。

未來「どうしたのダーリン?」

筑井「れ、冷静になるんだハニー・・」

筑井「早まっちゃいけない・・。    とにかく落ち着くんだ!?」

未來「ダーリンの方が落ち着いてよ。    いったいどうしたって言うの?」

筑井(このままだと間違いなく犯し殺される)

筑井(ここで美海と交際してると言うしか    ないか・・?でも、それ大丈夫か?)

筑井(いや、ここ以外に言う場面ないだろ‥)

   このままでは彼女との性交を    避けられないと思った筑井は

   決死の覚悟で、美海と交際している    ことを伝えると決めたようだ。

筑井「優勝したことは僕も知っているよ」

筑井「それについてなんだけど僕からも    大事な話があるんだハニー・・」

未來「ん・・・・?」

   その時の彼女の瞳は、期待とも    受け取れる感情を表現しているようで、    それがより、彼の口を閉ざさせる。

   だが、ここまで来たら    もう突き進むしかない。

筑井「実は僕、美海と    交際しているんだ!」

筑井「悪いとは思ってるけど、彼女を裏切る    わけにもいかないから交際もできないし、    一緒に寝ることもできない」

筑井「ほんとごめん!!」

未來「・・・・・・・・」

   謝った後、恐ろしさのあまり    ずっと目を閉じ続ける。

   その間未來もまた、口を開くことは    なかった。まるで、筑井がこちらを    見るのを待っているかのように・・。

   それを自然と感じ取った筑井は    恐る恐る恐怖に怯えきった    瞳を未來へ向ける。

   そんな彼が最初に見たもの。    それはなんと、彼女の微笑む顔。

   何を考えているのか全く    分からずいたので、なおさら    怖気づく結果となっていた。

未來「それは良かったわ!」

筑井「えっ・・・・?」

未來「私も正直、高校すぐ出て    結婚って言うのは抵抗あったし    ダーリンにも男性として    遊ぶ時間が必要だと思ってたの」

未來「沢山の交際を重ねることで    男性として成長するダーリン」

未來「今後が楽しみだわ」

筑井(何この人・・・すごいポジティブ)

筑井「じゃあ、寝るって言うのは・・」

未來「心配しないで卒業するまで    我慢しててあげるから」

筑井(卒業したらやるのか・・。    1年間の無事は保証されたけど    このままじゃ、絶対死ぬ・・)

   延命処置はできた筑井であったが    約束された死へのカウントダウンは    止まらぬまま・・。

   現状だけでも助かったと    考え、話に一区切りをつける。

   そして、彼らはミドル用の    医務室へと到着する。

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