全文表示 巨大女子相撲部

   時は少し戻り、美香が    浜辺に着く少し前のこと。

   先に森に到着していた筑井は    入り口手前で立ち往生を    余儀なくされていた。

   その理由は‥。

筑井(んッ・・来たは良いものの    怖くて中に入れない‥‥)

   昨夜は、美穂がいたから    まだ入れたものの、一人では    どうしても足を踏み出すことが    できずにいたようだ‥。

   それでも、この森に美穂が    来ているかもしれないと彼は    思っていたので、何とか    勇気を振り絞り1歩前進する。

則夫「ま~たきみか。    何回肝試しやってんのよ」

筑井「ひえっ!?

則夫「そんな驚くなよ。    まだ森の手前だぞ・・・」

筑井「す、すみません・・・。    人よりちょっと臆病で

則夫「ちょっととは思えんけどな‥」

則夫「俺は昨日と同様    ネズミ調査なわけだが、    筑井君はなんでここにいんの?」

則夫「本当に肝試しって    わけじゃないよな」

筑井「あっ、いや、実は・・・・」

   質問をされたので、美穂が    いなくなり今捜索の協力を    していると則夫に伝える。

則夫「消えた永嶋さんを探す為に    この森に来たわけね‥」

則夫「でも、何でここだと思ったわけ?」

筑井「則夫さんとこの森で    話をしたじゃないですか」

筑井「あの後、彼女の悩みを色々聞いて、    もしかしたらまた打ちひしがれ    てるのかもと思って‥」

筑井「だけど、来たはいいものの怖くて    森に入れずいたんですよ‥」

則夫「来る前からそうなることぐらい    予想できそうなもんだけどな」

則夫「まあとにかく、一人だと    入れずにいたってわけね」

筑井「そ、そうなんです‥。    もし良かったら一緒に    探してくれませんか?」

則夫「ネズミを探す為にどうせ森に    入るんだ、もちろん協力するよ」

則夫「姉貴にも何かあったら手伝って    やれとも言われてるしな」

筑井「ありがとうございます」

   それから二人は暗い    森の中へ入っていった。

   一度入ったから、恐怖心がなく    なっていてもおかしくないはず    なのだが、彼の場合は違う。

   昨晩のことがなかったかのように再び    怯える感情を前面に出すのであった。

則夫「ちょ、あんま近づかないで    くれるか・・男子高生に    近寄られても俺は喜ばんぞ‥」

筑井「す、すみません‥。    ちょっと癖で・・・」

則夫「最悪近づくのはいいけど手とか    繋ごうなんて、考えるなよ‥」

筑井「さすがにそれはないですってッ!」

則夫「それにしても気になってはいたん    だが、ナナあのこの面倒見てたはず    だよな?良いのかほっといて?」

筑井「今寝ているんで大丈夫だと思います」

筑井「それに、ご飯を持って行った後も    僕に色々話もしてくれましたし」

筑井「少しの信用は得られているはず    ですから、たぶん勝手なことは    しないと思いますけど」

則夫「だと、いいんだが・・」

則夫「まあ、あの体じゃまともに    移動もできんだろうし    それ程心配する必要はないか」

則夫「それよりも、今後あの子を    どうしていくかが問題だな‥」

筑井「一応監督は槍薔薇で彼女を    保護すると言ってましたが‥」

則夫「ほぉーん‥。槍薔薇か‥」

則夫「まあ隠すだけなら悪くないかもしれ    ないが、今朝も話した通り姉貴と    ナンバーの接触は禁じられている」

則夫「正式に脱退しました何てことは    ないだろうし、庇護ひごしてんのが    バレたら大問題になる」

筑井「監督はナンバーだってこと    気付いてないんですかね‥?」

筑井「だから、槍薔薇で保護すると」

則夫「どうだろうな‥」

則夫「それは分からんが気付いていようと    気づいていまいと、あの子を    槍薔薇で保護するのは    良くないと俺は思うけどな‥」

筑井「例えばなんですけど則夫さん。    この島に彼女を住まわせることは、    できないんですか?」

筑井「監督の島とは言っても監督が    面倒見るわけじゃないですし」

則夫「ここも協会の管轄に    あるのは変わりない」

則夫「姉貴が責任を取らされることは    ないかもしれないが、ここにいるのが    バレりゃ、あの子はナンバーに    戻るはめになるだろう」

則夫「結局のところ、野放しにしたり    どこかの誰かに預けたところで    まともな人生を歩めるとも思えん」

則夫「なんだかんだ槍薔薇で保護するのが    最善だと思ったのかもしれないな」

則夫「まあ、あくまで姉貴がナンバー    だと気付いてればの話だが」

則夫「適当に考えた結果が槍薔薇って    こともあり得なくはないだろう」

筑井「消去法で槍薔薇になったって    ことなんですかね‥?」

則夫「それは本人に聞かないと分からん」

則夫「ただ姉貴は結構、論理的だからな。    考え無しってことはないと思うが」

則夫「でも、面倒を任されているのは    筑井くんなんだろ?」

則夫「きみがそれじゃダメだと思うん    だったら、姉貴の言われた通りに    動き続けることもないと思うけどな」

筑井「・・・・・・・・・・・」

筑井「彼女のことについてなんですけど    前もって面倒を見てほしいと    ある人から頼まれてはいたんです」

筑井「その人の為にも彼女を    不幸にはさせられないと言うか‥、」

筑井「とにかく僕にできることは    全部やるつもりです」

筑井「それが仮に監督の意思に    そむくことであっても‥」

則夫「ほぉ・・・・・・・」

則夫「どこの誰に彼女のこと    頼まれたかは聞かないでおくけど」

則夫「いいんじゃないのそういうの」

則夫「それより、そんな臭い台詞    久々に聞いたもんだわ。    若いっていいね」

則夫「言いたいことをついつい    言いたくなる癖がついちまってな。    すまない」

則夫「て、それはきみも同じなのかな」

則夫「とにかく、筑井くんは本気    みたいだからできる協力は    俺もしてやるよ」

   そう述べた後、則夫は    財布のようなものを手に取り、    中から一枚の紙を取り出す。

則夫「これに俺の番号が書いてある。    何か相談事があれば    ここにかけてくれ」

   則夫が取り出したものは彼の名刺。

   名前と電話番号とこの島での役職    だけが書かれたシンプルなもの。

   目の前に差し出されたので    筑井はそれを受け取り    ポケットにしまう。

筑井「ありがとうございます」

則夫「姉貴のことに関する    相談なら勘弁だけどな」

筑井「ははッ・・・」

   先行き見えぬ中、味方が    一人できたことで少しの    余裕ができた筑井。

   そんな心境の変化もあってか    その会話以降、則夫に近づき    すぎることも自然と無くなっていた。

   それから歩き続けること約3分。

   そろそろ昨夜、美穂と二人で    話し合ったあの浜へと到着    しようとした時のこと。

筑井「・・・・・・・・」

筑井「則夫さん・・・・」

則夫「なんだ‥?」

筑井「ここから先は少し慎重に    進んだ方がいい気がします‥」

   何かの気配を感じたのか彼は    その場に立ち止まり則夫に一旦    止まれと手で合図を送る。

則夫「・・・・?」

則夫「どうしたんだ?」

筑井「いえ、なんか悪い予感がして。    何もなければいいんですが‥」

   そこから二人は木々に    身を潜めながらできるだけ    気配を殺して浜へと向かう。

   慎重に歩みを進め浜の様子を    目視できる位置まで到着した二人。

   恐れつつも筑井はその先の    光景を視界に入れる。

筑井「・・!?」

   驚いた様子でしばらく    浜辺の状態を確認する筑井。

   彼が目にしたその場所では    本人が予想だにしていなかった    出来事が起こっていた。

NEXT