巨大女子相撲部

   ご飯を食べ終わった彼は    また部屋に戻る。    ナナは変わりなくベッドで眠りに    ついていた。それから、医務室内は何の    変化もないまま一日が過ぎていく‥。    どれだけ疲れているのかは分からないが    ナナは朝から一度も微動だにすることは    なく、眠っていると言うよりは死んで    しまっているのではないかと心配して    しまうぐらい変化はなかった。    そして時刻が18時を過ぎた頃。    外から賑わいのある声と地響きを    感じ、それで筑井は女子相撲部員達が    寮に戻ってきたことを把握する。    藤崎からナナはミドルに対し    負の感情があると聞いていたので    悪い変化がないか不安になり、    彼女の様子を見る。    外からわずかに声や振動を感じるが    彼女がそれに反応を示す様子が    なかったので一先ず安心していた。

   寮へと戻ってきた女子相撲部員達。    彼女達は練習でかいた汗を流す為に    まず入浴し、その後食事を済ませる。    それらが終了したのが約20時。    女子相撲部員達はそれぞれの部屋に    戻り自由な時間を過ごしていた。 野崎「美香!今日はジャンガやろ!」 美香「ん・・いや、私はいいや」 野崎「なんで!!?いいじゃん!    やろうよ!!」 美香「今日疲れてるし。そんな体力    私もうないのよ」 野崎「だったら、寝てから入ってきて!」 美香「どんだけやるつもりなのよ‥」    彼女が何故参加を拒むか‥。    それはこれから筑井の様子を    観察しに行こうと考えていたからだ。    違和感なく出て行くタイミングを    どうやら探っているようだ。

美海「よし!だったら私が美香の    代わりに頑張っちゃおうかな!」 樫昇「今日はやるんだ」 美海「昨日に比べれば全然疲れてないから!    それにジャンガなら頭使わなさそう    だし、私の本気モードをお披露目    するには丁度良さそうだもん!」 樫昇「そ、そう‥」 野崎「あれ、そう言えば雪鳴    いないけどどうしたの‥?    昨日もいなかったよね」 美海「雪鳴はいつもお風呂別だからね。    あの子ちょっと潔癖なとこあるから」 樫昇「潔癖なら後から風呂入るのも    嫌がりそうなもんだけど」 美香「一番風呂なんて    贅沢いう子じゃないでしょ」 樫昇「そりゃまあ、言わないか雪鳴なら」

   それから15分程経過。野崎、樫昇、    湯川、美海がジャンガで遊ぶ中、    美香は部屋の隅に一人座っていた。 野崎「まだ雪鳴来ないね‥?そろそろ来ても    いい頃じゃない?、早く一緒にやり    たいのにね‥」 美香「・・・・・・・・」    出て行く口実考えるのは    難しいことではなかったが    今の彼女は慎重にならざるを得ない    理由があり、安易に行動することを    躊躇ためらっていた。    そんなタイミングで今の野崎の発言は     彼女にとって助け舟と言える。    これを利用すれば自然に部屋を    出れると思いその言葉の直後    美香は間髪入れず会話に入る。 美香「一回私が様子見てくるわ。もしかしたら    のぼせてるのかもしれないし‥」 美海「私もいこっか・・?」 美香「いいわよ別に、様子見に行くだけだし」

   今の美海の発言に美香は内心    かなり焦りを見せていた。    それもそのはず、彼女が慎重になって    いた理由はその美海が原因なのだから。    美海が何か秘密を知っているので    あれば、行動を抑制しに来る。    幼馴染であった彼女だからこそ    逆にこちらの心理も読み取られて    いるのではないかと、想定して    美香は動いていたようだ。 野崎「美海が抜けたらゲーム続かないじゃん!    悪いけど、美香一人にお願いできない」 美香「私から言い出したことだし    お願いされなくてもいくわよ」    そして腰を上げた美香は入り口を    開け一瞬、後ろを振り返る。    その時不安そうな顔で見つめる    美海と目が合った。        感づかれていると美香は思ったが    筑井を見に行くチャンスは    ここしかない為、その視線を無視し    何も言わず彼女は部屋を出る。

   万が一事故が起きている可能性もある    ので、先に浴室を確認しに行くが、    そこに雪鳴の姿はなかった。    これで雪鳴が別の場所に行っている    裏がとれたので、すれ違いになったと    言えば遅れて帰ってきても怪しまれる    ことはない。    そう考えた美香は筑井の様子を見に    行くべく一般寮へと向かって行った。    一般寮では彼女達は大きすぎて室内を    歩くことができないので、外側から    中の様子を確認するしかない。    仕方なく美香は一般寮横を    一人寂しく歩いていた‥。    しばらく歩みを進め、医務室付近に    近づいた時、手前から人の気配を    感じ一旦彼女は身を潜める。

   美香が確認したその先には    なんと、雪鳴の姿が・・・。    何かするわけでもなく    外から医務室前の廊下を    ただ見ているだけのようだ。 美香(ゆ、雪鳴がどうしてここに・・?    もしかして私と同じ目的で‥‥?    監督に禁止されていることなのに    ここまで来るなんてちょっと意外‥。    案外そういうの好きなのかしら?)    筑井の監禁の件について、    雪鳴もまた美香と同じだけの    情報を得られている。    そのことは理解していたので    雪鳴もまた彼に対し関心を抱き    独自に調べていても何もおかしく    ないと美香は考えていた。    そんな雪鳴の様子を監視していると    彼女がこちらに向かって来たので    美香は更に奥へと隠れる。

   彼女としては別に雪鳴と    会うこと自体それ程都合の    悪いことではないのだが、    美海に告げ口されても困るので    接触は控えることにしたようだ。 美香(結局何もしてないわね‥。    まあ、先輩に見つかったら    監督に言われて終わりだし    静かに立ち去るのは当然か) 美香(それにしても普段真面目な雪鳴が    こんなことしてるなんてね‥。    人間の裏の一面を見てしまったようで、    ちょっと変な気分になるな‥)    そして、そのまま美香の存在に    気付くことなく、雪鳴は    女子相撲部寮へと帰って行った。    彼女が完全にいなくなったのを    しっかり確認してから、美香は雪鳴が    元居た位置へと移動し始めた。

   中を覗き込むが見えるものは    普通の廊下だけ。    暗くて見づらくはあったが医務室の    室名札を発見し、まずここが目的の    場所で間違いないのを確かめる。    それで筑井達がいることは    分かったが、中に入れないので    それ以上の確認は何もできない。    周囲の様子を探ってみるも    何かヒントを得られそうな物は    何も見えなかった‥。    このまま居座ることもできなくは    ないが、こちらの存在に気付かれれば    面倒なことになるのは目に見える。    成果がないならせめてマイナスに    ならぬよう終わるべきだと考えた    彼女は、雪鳴同様その場から    姿を消すことを選んだようだ。

瑠璃「何してんのそんなとこで」 美香「うヮ・・・・!?」    彼女が戻ろうとした時    後ろには何故か瑠璃が立っていた。    込み上げていた緊張のせいか    その存在に声を掛けられるまで    全く気付いていなかったようだ。 美香「る、瑠璃先輩・・・・    別に私変なことしてませんよ・・」 瑠璃「それじゃ変なことしてましたって    言ってるようなもんだけど‥。    別に、それはいいや」 美香「それより瑠璃先輩・・。    ここではあまり大きい声    出さない方が・・・」

   すると、医務室の中から    筑井が姿を現す。 筑井「ちょっと怪我人いるんだから    静かにしてほしいんだけど」    普通に歩いてくるだけで本来なら    彼女達の存在はバレるのだ。    それに加えて会話まで始めれば    気付かれるに決まっている‥。 瑠璃「あれ、ここ医務室だったんですか    すみません・・・」 美香(えっ・・知ってて    ここに来たわけじゃないの‥?    てっきり私と同じ目的で    来てるのかと思ってたけど‥) 美香(あ、もしかして‥自分だけ    助かろうとしてるんじゃ‥。    先手を打たれた‥!)

筑井「何しに来たのかは、なんとなく想像    つくけど今は帰ってくれないか。    監督に言われてるはずだろ?」    昨夜、藤崎にナナと相撲部員達は    接触させないと聞いていたので、    彼女達がどう説明を受けているかは    分からないにしても、おそらく    それに近い内容は伝達されている    ものだと筑井は考えていた。    美香の様子を見て、それが伝えられ    ていることは間違いないと思った彼は    ナナを見られぬよう強気に前に出る。 瑠璃「あ、いやその・・誤解してる    みたいなんで言っときますけど    先輩目当てでここに来てる    わけじゃないんですよ」 筑井「じゃあ、何しに来たって    言うんだよ・・」

瑠璃「実は美穂がいなくなっちゃって…。    それで今捜してるところなんです」 筑井「美穂さんが消えた・・?」 美香(それで偶然ここまで来たってわけね。    瑠璃先輩の場合、偶然なのかは    怪しいところだけど、まず美穂先輩を    捜しているのは間違いなさそう‥) 美香(先輩目的なら、ここで    声を出すわけないだろうし) 瑠璃「また特訓してるだけだろうから、    放っておいても良いってひとみに    言ったんですけど全然    聞いてくれなくて‥」 瑠璃「いつもは割と放置してる    感じなのに、なんか今日は    様子おかしいんですよね‥。    それで渋々捜してるってわけです」 筑井「なるほどな・・」 瑠璃「こっちは早く休みたいんですが、    まあ私は優しいんで協力してあげて    るんです。私ってほんとにいい子」

筑井「・・・・・・・」 瑠璃「監督から先輩のことは聞いてます。    今病人の面倒を見てるんですよね?」 筑井「うん‥」 瑠璃「先輩が静かにしてほしいと    言ってたところから察するに、    今その人は眠りについているって    ところでしょうか‥?」 筑井「そうだけど・・。    回りくどく言わなくていいよ‥。    僕も探すの協力すればいいんでしょ」 瑠璃「よかった・・。さっさと捜索    終わらせたかったんですよ。    ほんとに美穂ったら心配ばかり    かけるんだから‥」 筑井(ここにずっといられるのも    困るしこう言ってさっさと    移動してもらうに限るな‥)

筑井「美香ももちろん協力してくれるだろ」    美香がここに来ている意図を    見抜いていた筑井は彼女が何か    言う前に協力を要請した。 美香「え、そりゃもちろん・・」   (くっそ、何にもこれじゃ    分からないじゃない・・)    筑井は上手くこの場から2人を    遠ざけることに成功。    自身が移動する前に、念の為    ナナが起きていないかを確認する    べく一度医務室内を覗く。    まだ彼女は眠りから覚める様子は    なさそうなので、少しの時間だけ    ここを離れることにしたようだ。 筑井「じゃあ捜索始めよっか。    手分けしての方がいいだろ。    30分後に広場で落ち合おう」    こうして医務室前から    3人は移動をし始めた。