巨大女子相撲部

   そして美穂と刀祢が試合を行うべく    お互い向かい合う形になった。    すぐにでも取り組みを行える状態。    緊張感が一気に高まる。    他の生徒達は各々練習していた為    取り囲んで観戦されることはなかったが    槍薔薇と孔雀ヶ原の好カード同士の    対決に皆、視線を無意識に向けていた。

刀祢「まさかお前から吹っ掛けて    来てくれるとはな、永嶋」 美穂「ほんの肩慣らしのつもりよ」 刀祢「相変わらず試合前に挑発して    きよんな。そんなんせんでも    うちはいつでもMAXで突っ込ん    だるから、必要ないわそんな台詞」 美穂「ふっ‥そうだったわね」

   それから二人は腰をかがめ    取り組みの姿勢を取る。    こういった練習試合では    開始の合図はない。    互いのタイミングで    取り組みを始めているため    最初の数秒は牽制けんせいしあう状況が続く。

   そして、先に動いたのは刀祢。    腰を大きく屈めていた彼女は    その勢いを利用し美穂に    思いっきり飛び掛かる。    それに合わせ美穂も動き出すが若干の    出遅れで受け身にならざるを得ない。    バランスを崩していた美穂は    それを立て直し正面から    組み合う形をとる。

   如何いかに相手を倒すかを二人は探り合う。    互いの肉体をつかみ合い    あらゆる方向に力をかける。    ものの数秒。彼女達は張り手などで    相手を押すも互いに後退すらせず    その場に踏みとどまっていた。    傍から見れば力が釣り合っている    状態に見えるだろうがこれは美穂に    とってはあまりいい状況とは言えない。    美穂の戦い方はパワーで勝負すると    言うよりもテクニックで戦うスタイル。    それと打って変わり刀祢は    性格をそのまま反映させたような    とにかく力で勝負するタイプ。    こういったその場に踏みとどまる    取り組みになった場合、純粋な    力比べにならざるを得ず、この状況は    美穂みほの技術を殺しに来てると    言ってもいいものであった。

   今までこういった取り組みを避け、    自分のスキルを如何に発揮するか。    そこに重点を置いてきたはずの    美穂にしては荒々しい戦い方。    そんな彼女の取り組み方に    二崎は先程までと同様    違和感を感じているようだ。 二崎(今の形を崩そうと思えば    リスクはあるけど美穂の技術なら    崩せないことはないはず) 二崎(純粋に力で勝敗を決するなら    おそらく、刀祢に軍配が上がる) 二崎(でも、だからこそかしら‥。    自分の弱点を克服すべく    あえてそういうスタイルをとって    いるとも受け取れる‥) 二崎(あるいは何か作戦が‥?)    彼女の普段とは違う行動の連続に対し    無理やり理由を付け納得しようと    二崎はしていた。

   そんな二崎を横目に見ながら    二人の取り組みを見直す花園。    二崎と同じ考えに至っていたのか    定かではないが何か腑に落ちないと    言った様子で二人の姿を見ていた。    それから刀祢と美穂が    張り付いたまま数秒が経った頃、    決着は突然ついた。

   倒されたのは美穂。    彼女を力で無理やり    振り払い、刀祢が美穂に    勝利を収めた。    かなりの勢いをつけたのか    刀祢の体も半周しバランスを    崩して彼女も倒れる。    その後、先に刀祢が立ち上がり    美穂の元から離れながら話しかける。

刀祢「永嶋、お前舐めとったんか    知らんけどパワー勝負でうちに    勝てるとでも思っとったんか?」 刀祢「こっちは対永嶋用に特訓しとった    にもかかわらず、今の試合じゃ    それを試すこともできんかったぞ」 刀祢「まあ、でも勝利は勝利。ありがたく    この余韻、噛みしめさせてもらうわ」    試合になった時の刀祢は普段と    違いクール。勝利の喜びを    やたらにひけらかすことはなく    静かに美穂の傍から離れて行った。    周りの女子相撲部員達も    二人の試合を眺めていたが    賞賛の声などは雰囲気を察してか    あがることはなかった。

   刀祢が去っていった後、    ゆっくりと美穂は立ち上がる。    なぜかそれほど悔しそうな    様子ではなかった。        部長候補、永嶋美穂の敗北。    槍薔薇からしてみれば今後の    士気にかかわる大きな問題。    それを一番意識しているのは美穂の    はずなのに平気な様子なのは    どういうことなのだろうか‥?    そう二崎は疑問に思っていた。

   表面上で必死につくろっているのかも    しれない。その可能性も考慮し    美穂の精神面をケアするべく    戻ってきた彼女に二崎は声をかける。 二崎「美穂、大丈夫・・?」 美穂「別に心配されるようなことは    ないと思うけど」 二崎「10回やって10回勝てる程、    甘い相手じゃないものね。    刀祢も孔雀のエースの一人だし    この敗北を気にする必要はないわ」 美穂「それは分かってる・・」 二崎「・・・・」 美穂「とにかく今はこれでいい」

二崎「えっ‥?どういう意味・・」 美穂「先輩に昨日焦るなって言われたの。    刀祢との試合をして分かったわ。    今私に必要なのは練習じゃなくて    自身を見つめ直す時間」 美穂「悪いけど今日はちょっと    練習控えて休みを取る。    少し考える時間が欲しいから」 二崎「そ、そう・・」    美穂は部長候補に選ばれてから    依然より練習量が増加にしていた。    それにもかかわらず、真西に    敗北したあの日からその量は    更に増加していたのだ。    そのことを気にしていた二崎に    とって彼女の休養を取ると言う    発言は、理由はどうであれ安堵感を    与えるものに変わりはない。    彼女が、そう言うのであれば    余計な詮索はせず休ませて    あげようと考えたようだ。

   美穂との取り組みが終わった    刀祢は花園に話を聞いていた。 刀祢「今の取り組みどうでした」 花園「まあ、あんたは悪なかったで。    実力の全てが出せてないにしても    練習の成果はよう出とった」 花園「悪かったって言えば永嶋さんの方。    あの子どうも何か隠しとるな。    こっちに情報取られまいとしとるんか、    分からんけどあれが彼女の実力やと    思わんことや」 刀祢「押忍‥。それは実際にやった    うちもよう分かってます」 花園「意図は読み切れんにしても    今は全力を出し切れん    理由があるみたいやな」 花園「ただ、二崎さんの様子見とっても    彼女も理由は分かっとらんかった    みたいやし永嶋さん個人の問題で    ああなっとったんやろうな」

花園「もし、永嶋さんが力の全てを    出し切れたとしても今の    あんたならギリ五分五分ぐらい    まで、もっていけるはず」 刀祢「五分五分っすか‥。しかもギリ‥。    正直、死ぬほど特訓しましたし    今はうちのが強いと思っとったん    ですけどね‥」 花園「調子にのんなあほ。    確かにあんたはここ最近で    目まぐるしいほど成長したが    仮にも永嶋さんは槍薔薇のトップ。    あなどったらアカン」 刀祢「それも、そうっすね‥。    ちょっと過信しすぎてたかも    しれません」 花園「まあ、でも今の調子なら    来年の槍薔薇はおそらく歴代最弱。    目標は別に見据えても    ええかもしれんな」

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