巨大女子相撲部

筑井「子供を買い取りし始めたって‥‥、    一応認められた上で会社化して    いるんですよね‥‥?そんなこと    して大丈夫だったんですか?」 則夫「国の立て直しが必要な時代だった    からね。それに買い取られる子供達も    いずれ飢え死にするような子達だけ    だったから駄目だいう人間は    まあいなかっただろうな」 則夫「そもそも田舎町の養護施設に口出し    できる程余裕もなかったろうし」 則夫「金に余裕のあるやつが    沢山の子供育ててたってだけさ。    今やってたら間違いなくアウト    なんだけどな」 則夫「だが、それを今でもやってのけ    てるのが現会長の久内 徹さ。    はっきり言って父親よりやり手だよ」 筑井「もともと土木作業員を育てる会社が    変化していって今のナンバーに    なったってわけですね‥‥。    そしてそれをやったのが現会長」

則夫「筑井くんが言った通り    ナンバーを作ったのは久内 徹だ。    先代の頃からあった組織では    あるらしいんだが入れ知恵を    したのは間違いなく奴だ」 則夫「じゃあ父親の話はここら辺にして、    徹の話をしよう。20年程前に    奴が社長の座に就くことになる。    渡はその前にくたばってたから    エヌオーの代表は徹で3代目だ」 則夫「合同会社エヌオーの代表が    徹になるわけだが、そのぐらいの    時期に初のミドルが発見される」 筑井「20年ぐらい前にですか?    ミドルが現れたのって    結構最近なんですね・・」 則夫「幼少期では他より少し大きい程度    だから巨人症の一種だと思われてたん    だが、思春期を境に今までに類を見ない    程の急成長を始める病気だから、    発見自体はだいぶ遅れてのことなんだ」 則夫「今のミドルの最高齢は35歳だから    正確に言えばミドルの登場は    35年前だな」

則夫「最初に発見された時はそれこそ    急な巨大化としか思われてなかった    からウイルスによる後天性の病かと    考えられていたが」 則夫「さっきも言った通りミドルは    幼少の頃から他より大きくなる    共通点が発見されてから先天性の    ものと判断されるようになった」 則夫「そしてミドルの登場でエヌオーの    方針にも変化が見られるようになる」 則夫「合同会社エヌオーから    福祉支援施設ミドルに変わる。    これが今の彼女達の病名の    きっかけにもなった」 則夫「彼女達のような巨大化した    女子達の福祉施設を誰よりも    早く作ったのが久内 徹だ」 筑井「ミドルの保護始めたんですね…。    でも、だとすると今までエヌオーで    働いていた子供達ってどうなって    しまったんですか‥‥?」

則夫「この時期にはすでにナンバーと    言う名義で裏社会って言えば    いいのかなそっちに活動の場を    移行している」 則夫「土木の需要はないわけじゃなかったが    所謂いわゆる供給過多。元々安いだけが取り柄で    信用なんてあってないような会社だ。    仕事も徐々に減っていったんだろう」 則夫「それを見越した結果、戸籍の無い    子供達を一番有効に使える手段が    裏稼業、つまるところ今のナンバー」 則夫「元々土木作業してた子達は独り立ち    して社会に出られはしたものの    徹の代になってからその方針も    変わったわけだ」 則夫「表向きはミドルの支援施設。    だが、本質はナンバー。    これが福祉支援施設ミドルの実態。    女子相撲協会になった今でも    この形に変化はない」 筑井「・・・・・・・」

則夫「なんで久内の奴がミドルの    保護を始めたのか分かるか?」 筑井「土木やナンバーだけだと会社が回らな    かったからじゃないんですか‥?    生活費もバカにならないでしょうし。    ミドルでどうやって利益出すか    までは分からないですけど‥‥」 則夫「普通に考えたらそうだろうな。    会社のテコ入れの為に新しいことを    始めるのは珍しいことじゃない。    だが、俺はそれだけじゃないと    思っている」 則夫「姉貴を誘い入れるのが奴の狙い。    あくまで憶測でしかないが目的の    一つとしてそれが頭にあったのは    ほぼ間違いないと言っていいだろう」 筑井「監督‥‥?ここでやっと出てくるん    ですね。でも、なんでミドルが    監督を釣る餌になるんですか?」 筑井「そう言えばなぜ監督が女子相撲に    携わってるのかも謎なんですよね。    昔やってたのは聞いてますけど    性格的に意外と言うか‥‥」

則夫「姉貴一人だったら興味は    持ってないだろうな。筑井くんは    飛空さんって知ってるか?」    飛空ってたしか・・。    雪鳴が手紙書いてた人の名前か。    監督が出た大会の優勝者だっけ。 筑井「飛空恵美さんって人ですか?」 則夫「そうそう、元々姉貴が    女子相撲に携わっているのも    飛空さんの影響なんだ」 則夫「飛空さんが女子相撲の認知度を    上げようとしている手伝いを    姉貴もしていたんだよ」 筑井「へえ・・」   (人の手伝いとかするんだな‥) 則夫「久内はそのことを知っていたから    ミドルを利用して相撲を    始めたってところだろうな」

筑井「監督が協会に入った経緯は    なんとなく分かりましたけど、    でも、なんで監督を誘う必要が    あったんですか・・?」 則夫「早い話、数だろ」 筑井「数?」 則夫「客寄せだよ客寄せ。とは言っても    姉貴を誘い入れた頃なんて、    知名度はないに等しかったけどな。    力も極力隠してはいたし」 則夫「久内がなんで姉貴のことを知って    いたのかは、定かではないが奴は    姉貴が今後社会にもたらす影響力を    誰よりも先に見抜いていたんだろう」 筑井「社会にもたらす影響力って・・。    監督ってそんな影響力がある人    なんですか・・?歴史の教科書に    載るとか聞いてはいますが具体的に    なんでかよく分からないですし」

則夫「なんだ、今の若い子は    知らないのか・・?」 筑井「僕あんまニュースとか見なくて」 則夫「宗教団体って程じゃないが    支持派とそうじゃないのが結構いる」 則夫「昨夜も話した通り姉貴の力は    神の領域と言っても過言ではない。    その気になれば人類を    滅ぼすことなんて簡単にできる」 則夫「協会に属してから公の場に    出る機会も増えてな、知名度が    それなりになった頃には    姉貴を利用して金儲けしようと    する奴も出てくるわけだ」 則夫「この国の平穏は彼女によって    成り立っていると言っている    藤崎派と呼ばれる人間と、いつ世界を    滅ぼすかも分からないからもっと行動に    制限をかけろと言う反藤崎派。    大まかにわけてこの二つがいる」

則夫「ちょっと過剰な表現だったが    実情はそこまでカルト的なもの    じゃなくて、タレントを見て    こいつは好き、あるいは嫌いとか    その程度の考えがほとんだだろう」 則夫「その区分けとしてさっきの二つの    言葉が使われてるだけだ」 則夫「それでも世間の認知度は、    相当なものだからな。姉貴に    媚びた政党が数字を伸ばすなんて    ことも珍しいことじゃない。    その逆もありはするが」 則夫「久内はそうなることを予想できていた    んだろうな。いや、予想ってよりは    そうなるように仕向けたんだろうが」 筑井「そういうの聞いてると    なんか監督も気の毒ですね」 則夫「支持派とかそんな連中どうでも    いいと思ってるはずだ、そもそも    支持する経緯も少し特殊なわけだし。    アイドルとかのファンとは    ちょっと違うんだよ」 筑井「支持する経緯・・・?」

則夫「アンダーは殺人が許されている。    これが支持する要因‥‥‥、    て、よりは批判できない要因    としてでかいだろうな」 筑井「えっ‥!?殺人が許されてる‥‥?」 則夫「力で取り押さえることができない以上    縛りを設けて不満を募らせるよりは    束縛しない方がリスクを回避できると    国が判断してのことだろう」 則夫「実際、別の国ではアンダーによって    滅ぼされた都市も存在している。    それ以降規約は一気に緩くなった」 筑井「・・・・・・・・」ゴクッ 則夫「君達の親世代ぐらいならこの殺人    許可の話を知っているだろうが    メディアもこの話はしなくなったし、    このことを意識してる人間が    減っているのは間違いない」 則夫「そもそも姉貴も殺し自体に    興味がないわけだし、道徳だって    人並み以下だが存在はしている。    実情、殺人や破壊行為が行われて    ないから恐怖してる人間は極少数だ」

則夫「アンダーの恐ろしさを知っている    親世代が肯定してたり、それこそ    怒りを買えばどうなるか分かった    もんじゃないから何も言えない」 則夫「知名度あるにもかかわらず批判されて    ないから勝手に良い人だって思い込む    人間が増える結果になったわけだ」 則夫「それに昨日も言ったろ。恋沙汰が    ないって。スキャンダルが全くないから    無駄に好感度があんだぜ。協会で自由に    やってる姿すら持ち上げられる始末」 則夫「それでよ‥、気にくわないのがさ    殺さないっていう当たり前のことを    してるだけで、それをありがたがって    る連中も中にはいるってことだ。    反藤崎派よりよっぽどイかれてるわ」 筑井「そ、そうなんですね・・。    とにかく、どれだけすごい人    なのかは分かりました・・」 則夫「今言ったのが取り巻きの    様子なわけだが、それらを    利用して協会は動いている」

則夫「姉貴を協会に入れることで    それと同時に姉貴の支持者や、    その支持者を取り込みたい企業や    政党を奴のコントロール下に    加えることに成功した」 則夫「それだけじゃないか。    反対派のコントロールも奴の    手中にあると言っていいだろう」 則夫「ハッキリ言って末恐ろしい奴だよ。    久内の奴は・・。どこまで考えて    いるのかが分からんからな」 則夫「あんだけ化け物じみた力を    持ってて融通の利かない姉貴を    ここまで使える奴もそうはいない」 則夫「姉貴を取り込むために    ミドルの保護を始めたって話は    結果論からの推測でしかないんだが    今の地位に昇りつめたのも     偶然とは思えないんだよな。    あまりにも上手くできすぎてる」

則夫「アンダー前にすればどんな兵器も    ゴミみたいなもんだからな。    久内の奴は姉貴という最強の兵器を    手懐け今の地位についたわけだ」 筑井「力と言う力は彼の元に    集まってるってわけですね」 則夫「そうだな。だからと言ってそれが    悪いわけじゃないんだけどな」 則夫「奴がいなければミドル達は    衣食住の確保ができないわけだし」 則夫「非情な奴ではあるかもしれんが    上に立つ者として奴ほどの    適任者は他にいないと思っている」    そう述べた後則夫さんは    ナナの方を見つめた。 則夫「そうは言っても蜥蜴とかげの尻尾切り    って奴なのか、ナンバーの方は    まともな扱われ方はしてないんだな」 則夫「そっちの女の子がここにいる時点で    奴がナンバーに携わってないのは    容易に想像できる」

ナナ「今はほぼ放置状態。    上が変われば、かなり    ましにはなるんだけどね」 則夫「俺はナンバーについては    あまり詳しくはないんだが    今のトップは別人なのか?」 ナナ「あんたの糞姉貴にも昨夜    同じこと聞かれたわよ」 筑井「おい、言葉に気をつけろよ    さっきも言っただろ!」 則夫「くそだと思ってるってことは    俺とは気が合いそうだな。    全然言ってくれて構わないぞ    気持ちわりーよな、ほんと」 筑井「いや、則夫さん・・・」 則夫「つか、まーた自分でばらしてたな‥。    姉弟だってこと‥。    この口の軽さはどっかで    検査うけねえとやべえかも・・」

則夫「まあでも、姉貴のことを    恨んでんのは仕方ねえだろうな。    今の上が誰かは知らねえけど    副会長の姉貴が見て見ぬふり    してるわけだからな」 則夫「姉貴のこと擁護するわけじゃ    ねえけど、姉貴がナンバーに    関わることはできねえんだわ」 ナナ「は・・?なんで・・?」 則夫「姉貴が動くとナンバーの存在が    世間にバレる可能性が高まるからな。    色んな意味で影響がでかい」 則夫「今ナンバーが世間に知られてないのも    暴力団やカルト教団が皮被って    くれてることもあるわけだし、    それだけ必要とされてる組織なわけだ。    安易に崩壊させることはできない」 則夫「それに接触禁止という契約も姉貴が    協会に入る段階で交わされている。    仮に手を出すようなことがあれば    ミドルへの支援を切ると言う話だ」 筑井「先に手は打たれてるって    わけですね・・・」

則夫「ナンバーの突出した才は数多の    世界で役に立っているからな。    もし世間的にバレるようなことが    あれば、国そのものが傾き兼ねない。    だから、口出せねぇんだわ」 則夫「あんまり言いたくはないけど    許してやってくれないか」 ナナ「・・・・・・・」 ナナ「別にいいけどさ・・。    あの性格だけはどうにかして    ほしいもんね・・」 則夫「そりゃ、あの性格治すのは    久内でも無理だろうな‥‥」   一呼吸終えて話を終える則夫。    背筋を伸ばしあくびをし始める。 則夫「ん、んぅー・・・・・。    もう、話はこの辺でいいか・・。    ちょっと疲れたわ、普段喋ってねえし」    そう述べた後、則夫はソファから    腰を上げ棚から薬品を一つ手に    取り、出口の前に立った。

則夫「俺はネズミ達とたわむれてくるけど    きみらどうすんの今から?」 筑井「ど、どうするって言われても・・・」 ナナ「メシ・・」 筑井「・・・・・?」 ナナ「腹減った。メシ持って来い」    一連の流れのおかげか少し    こちらに心を開いた様子のナナ。    お腹がだいぶ空いていたようで    ご飯の催促をしてきた。 則夫「そっか。食堂まで俺が案内すっから    じゃあ筑井くんついてきなよ」 筑井「わ、分かりました‥。    ちょっと待っててね」    そしてそれからナナを    残して二人は部屋を出て行った。

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