巨大女子相撲部

   筑井が部屋を出る少し前、    最後に彼は藤崎と話をしていた。 筑井「僕はこれから寝ますけど    監督はどうされるんです?」 藤崎「今夜はここにいる。    筑井くんは知らないと思うけど    私眠ることができないの」 筑井「不眠症なんですか。監督でも    そういうことあるんですね」 藤崎「違うって!今の力を手にしてから    眠らなくても大丈夫な体になっただけ」 筑井「そ、そうだったんですか・・。    確かに監督に限って不眠症なんて    ありえないですよね」 藤崎「私のことバカかなんかだと    思ってんの・・・・?」 筑井「あ、いや・・監督程たくましい方が    そうなるわけがないと思って・・」 藤崎「なにそれ・・・?逞しい・・?    それだったら、バカって言って    くれた方がよっぽど嬉しいんだけど」

藤崎「頼りがいがなくてか弱い女の子に    一度でいいから戻りたい・・。    逞しいとかただの悪口じゃん」 筑井(戻りたいって・・。か弱い    時期なんて絶対ないだろ) 藤崎「あ、そうそう筑井くん。    言い忘れてたことがあった」 筑井「なんですか?」 藤崎「そこに、冥瓦でかぶつ寝てんじゃん。    あいつ明日の朝、輪山りんざんに連れて    行かなきゃいけないから、    もう私ここには戻ってこない」 筑井「リンザン・・・?」 藤崎「輪山って言うのはお師匠様が    住んでる場所の名前ね」 筑井「あぁ・・お師匠様の所に    そういえば行くんでしたね」 筑井「でも帰ってこないって、    部員達この島に取り残されちゃい    ますけど大丈夫なんですか・・?」

藤崎「美穂と二崎にはもう伝えているし、    孔雀の監督に、禿藪医者もいる。    私がいなくても問題はないはず」 藤崎「明日は孔雀と合同練習に    なるから、その間筑井くん    面倒ちゃんと見ててね」 筑井「は、はい・・」 藤崎「槍薔薇の部員に最悪見られるのは    いいとして、孔雀の連中に    姿が見られるのはまずい」 藤崎「そもそもミドルは一般人との交流が    禁止されてるし、ナナこいつの存在が    知れれば要らぬ誤解を生みかねない」 藤崎「筑井くんの場合はもう雑誌に    載っちゃったから問題ないけど    ナナこいつのことは誰も知らないし」 筑井「分かりました・・・」    その言葉を最後に医務室を    後にする筑井。 筑井(正直不安しかないけど監督も    外に出なければならない用事が    あるわけだし僕が頑張らないと‥‥)

   外に出て医務室のドアを閉めた瞬間    重要なことを筑井は思い出した。 筑井(そういえば、寝るとは言ったものの    僕の部屋ってどこにあるんだ・・?    監督がいる医務室じゃ怖くて    寝られないし、どうしよっかな・・) 筑井(医務室に戻って聞くべきだろうけど    あの空間に入るのも気まずくて    仕方ない。もう一度入るのは嫌だな) 筑井(寮って言うぐらいだから探せば    部屋の1つぐらいはあるだろ・・。    少し散策してみようかな)    それから筑井は自身が寝泊りできる    場所を求め館内を歩き出す。    所々照明がついており、    女子相撲部員達の声があちこちから    聞こえていたので、外は暗いものの    そこまで恐怖心を感じていなかった。    しかし、一人でいることに次第に    心細さを感じ始めた彼は    自然と相撲部員達がいる別館の    方へと向かってしまっていた。

   皆部屋に戻り誰もいない廊下。    一人寂しく歩いていると後ろ・・、    というか頭上から人の声が。 雪鳴「あれっ先輩・・?」 筑井「うわぁっ・・・!?」    驚いた拍子に後ろを振り返ると    そこには雪鳴が立っていた。 筑井「ちょっと・・脅かさないでよ!    ビックリ系無理なんだって・・」 雪鳴「ご、ごめんなさい・・。    脅かすつもりじゃ・・・」 筑井「て、雪鳴はこんな時間に    一人で何してるの・・・?」 雪鳴「私は今お風呂から上がってきた    ところで、部屋に戻ろうと」 筑井「そ、そうなんだ・・」 雪鳴   「・・・・・・・・」 筑井

   お互い人見知りと言うこともあり    2人の会話はすぐに止まってしまった。    こんな空気は、過去に何度も味わって    きているが、慣れるものではない。    そんな状況を打破すべく筑井は    なんとか言葉を絞り出した。 筑井「今から部屋に戻るんでしょ?    僕も遊びに行っていいかな・・?」    行く宛もなく、一人寂しく夜の館内を    徘徊するよりは彼女達の元へ    向かう方がいいと思ったようだ。 雪鳴「えっ!?大丈夫なんですか?」 筑井「そんなに驚くことかな・・?」 雪鳴「監督のこともありますし・・    もし私達の部屋に一緒にいるの    見られたら怒るんじゃ・・?」 筑井「今夜、監督は医務室で冥瓦達の    こと見てるからその心配はないよ」

筑井「念のため聞いておきたいんだけど    美海ともしかして一緒の部屋?」 雪鳴「えっ‥‥、そうですけど?」 筑井「あいつが変なこと・・・・やりだしそう    だったら止めに入ってくれない?    時間も時間だしちょっと怖くてさ‥」 雪鳴「そ、そんな‥‥!?うち恥ずかしくて    間に入れないですよ‥‥!!」 筑井「そ、そう‥‥。まあ他の子も    部屋にいるんでしょ?だったら    他の子に頼むことにするよ」    そうして筑井と雪鳴は    寮部屋まで向かい始める。    さすがに女子高生相手に一緒の部屋で    寝かせてくれと言えるはずもないので    就寝場所は決まってないままだが。    そもそも彼にとってそれは危険を    伴う行為である以上自分から    頼むことは決してない。    とりあえず彼は一人という環境から    まず逃れることを優先したようだ。

   そして、美海達がいるであろう    部屋までたどり着いた。    雪鳴が扉を開けそれに筑井も続く。 美海「美香ぁああ!早く背中かいてよ!!」 美香「棒かなんかでかけばいいでしょ」 美海「美香の手がほしいよ!    孫の手も棒もないんだから!」 美香「うっさい!!だったら壁で    掻きなさいよ壁で!!!    んっ・・?あ、雪鳴おかえり」    口論をしている最中後ろを振り向いた    美香が最初に僕の存在に気が付いた。 美香「あれ、先輩も一緒なんですか」 美海「えっ・・・・!?先輩!!!!」    中にはうつ伏せで寝ている美海と    カードゲームをやっている    4人の1年生達の姿が。 樫昇「サプライズゲスト登場じゃん」

美海「み、皆、変なことしないでよ!!」 野崎「美海にだけは言われたくない」 美海「私がレイプする    わけないでしょ!!」 樫昇「誰もレイプのレの字も言ってないって」 湯川「IMO・・」 美香「えっまじ・・・」    一人喋っていなかった女の子が    急に声を出した。どうやら    カードゲームでリーチになったらしい。 野崎「まじ強いんだけど、ゆっかー。    これで上がれば4連勝じゃん」 湯川「絶対勝つ・・。あと、    その呼び方やめろ」 美香「一人だけやる気がおかしいでしょ    あんた・・・」

筑井「あの3人って誰・・?」    直接名前を聞き出すことができない    彼は雪鳴に小声で質問した。    筑井の問いに対して    雪鳴もまた小声で応じる。 雪鳴「左から野崎ちゃん、樫昇ちゃん    湯川ちゃんです」 筑井「ありがと・・」    質問をし終えた彼は少し前に出て    さっそく5人に話しかける。 筑井「で、なんで美海は寝てんの?勝って    抜けたわけじゃなさそうだけど・・」 美香「美海は弱すぎてやる気    無くしちゃっただけですよ」 美海「違うって!背中がかゆいから    やめただけだし!!」 雪鳴「それやめる理由になってないよ    美海ちゃん・・・」

   ふとした疑問が浮かんだ筑井は    またしても雪鳴に声をかける。 筑井「雪鳴は参加する様子ないけど    参加しないの・・?」 雪鳴「うちはあれです・・・。    あの、ルールが分からなくて。    覚えるのもどうも苦手で」 筑井「そうなんだ。    だったら仕方ないか」 美海「せんぱい!背中かいてください!    砂で埋められてる時に何かに    噛まれてかゆいんです!!」 筑井「んまぁ、構わないけどさ    自分でかくことできないの?」 美海「私たち肩幅とお肉のせいで    背中に手が届かないんですよ    お願いしますって!!」 筑井「美海には、世話になったし    断るわけにはいかないか。    やってあげるよ」

   そして彼は美海の背中の上に登る。    彼女の大きくなった背中を前に    冥瓦の様子を見た時と同様    どこか悲しげな気持ちになる筑井。     筑井(巨大化しているのが、いつも近くに    いるのに目に見えて分かる・・。    これも源ってやつの影響なのか)    そんな心境の変化を表に出すことも    なく彼は美海に声をかける。 筑井「パっとみどこも変化ないけど・・」 美海「どこか赤くなってませんか?    たぶんなってると思うんですけど」 筑井「んぅ‥‥適当にかくから場所教えて」 美海分かりましたお願いします!!    手を置いていた位置の少し    上に手を伸ばし強めにかき始める。 美海「あっ!気持ちい!一発目で当たりです!    そこ集中的にお願いします!!」 筑井「最初から当たったんだ。    良いって言うまでやってあげるよ」

美香「だぁーーー!!    また、美里一抜けじゃん!    あんたズルしてんでしょ!!?」 湯川「ズルするぐらいな死ぬ方がマシ。    それにきみらに負けることが    あれば末代までの恥。覚悟が違う」 野崎「末代って何?」 樫昇「子孫とかのことでしょ・・?    正確には違うとか聞いたような    聞いてないようなって感じだけど。    とにかくすごく恥ずかしいってこと」 野崎「へーそれなら、勝たせてあげないとね」 美香「ものの例えだから    別に気を使わなくていいのよ・・。    まず野崎あんたじゃ勝ち目ないし」 美香「そもそも私達の場合    子孫残せないんだから、    末代だとか何だとか    気にしなくていいのよ!」 野崎「わはは、美香それ言えてる!」

筑井「そろそろ、いいかな美海・・・?    ん・・美海・・?」    返事がないのをおかしく思った彼が    様子を確認すると、すでに美海は    深い眠りについてしまっていた。 筑井(まあ今日一日でいろいろ    あって疲れたんだろうな・・)    美海の上からゲームをしている4人と    一人机に向かう雪鳴の姿を確認する。    雪鳴が何をしているのか気になった    彼は美海を起こさないように慎重に    体から降り彼女の元へ近づいて行った。 筑井「何してんの・・・?」 雪鳴「お、お手紙を・・書いてたんです」 筑井「今どき手紙か・・。珍しいね・・」 雪鳴「私たち通信機器を所持するの禁止    されているので、手紙でしか    外と連絡をとることができないんです」 筑井「そうなんだ・・。    それで誰に手紙出してんの・・?」    雪鳴と会話をしていると    そこへ野崎が口を挟んできた。

野崎「雪鳴、藤崎派なのに    飛空ひあきさんに手紙出してるんですよ!    どう思いますか筑井パイセン」 筑井「ひ、ひあきさんって誰・・?」 美香「えっ!?知らないんですか先輩?」 筑井(皆なんか驚いてるけど    そんなに有名人なのか・・?) 雪鳴「監督が第一回の大会で    準優勝なのは先輩ご存知ですか?」 筑井「監督と初めて会った時に    そう言えばそんな話聞いたな」 雪鳴「その時の優勝者が    飛空ひあき 恵美えみさんです」 筑井「雪鳴はその飛空さんって人に向けて    ファンレターを出してるわけか。    監督の因縁の相手だろうし野崎かのじょの    言い分も分からなくはないね」 雪鳴「で、でも、すごい人なんですよ    飛空さんは・・・!!」

雪鳴「海外でもうち達と同じ病気の人が    年々増加しているらしくて    そういった人たちのサポートを    するために世界中を転々と    しているそうです」 雪鳴「飛空さんのそういった活動に    すごく感銘を受けました!    将来彼女のような人になるのが    うちの夢なんです!」 筑井「いい夢じゃん」 雪鳴「何回か返事ももらってます。    槍薔薇のことも気にかけて    くれてるみたいですよ」 美香「忙しい人なんだから    読んでるわけないって・・。    マネージャーかなんかが返事    書いてるに決まってるでしょ」 雪鳴「飛空さんはそんな人じゃない!」    飛空さんという人の話題になると    いつもより熱くなるんだな。    尊敬しているのがよく分かる。

樫昇「まあ、あれですよ先輩。今言った    二人は世界的に超有名な2人なんで、    覚えておいた方がいいですよ。    歴史の教科書にも載るのは    間違いないって言われてますし」 筑井「すごいな…。歴史の教科書に    載るかもしれない人から    相撲を教えてもらえるんだから、    きみたちも幸せものだね」    そこまですごい人だったとは・・。    そんな人に言い寄られてるなんて    あまりに荷が重すぎる・・・。 美香「それより先輩!一緒にIMO    やりましょうよ!」 筑井「僕もやっていいの?    こう見えても芋掘りの筑井という    異名が付くぐらいには強かったから    ゲームが楽しくなくなるかもよ?」 樫昇「なんですかそのくそださい異名・・。    それにハードルも上げまくって    ますけど大丈夫なんですか?」 筑井「大丈夫大丈夫、期待に応えてみせるよ」 湯川「本気マジに潰しにいきます・・」

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