巨大女子相撲部

   そして、海で遊び終えた    女子相撲部員たちは、夕食を終え    肝試しの準備を進めるのであった。    肝試しと言っても、誰かが    おばけの格好をして脅かすという    ものではなく、ただ夜道を歩き    神社にあるお守りを持って帰るだけ    という、シンプルなものだ。    だが、僕は特別怖がり・・。    はっきり言って行きたくなどなかった。    でも、美穂さんと二人きりになれる    タイミングもここしかないだろうし、    我慢して行くしかない・・・。

瑠璃「美穂よかったじゃん!    先輩と一緒になれて・・!」 美穂「う、うん・・・」 瑠璃「完全に照れちゃってんじゃん。    あんたらしくないわね」 美穂「う、うっさい・・!    一々ほんと・・」 瑠璃「えへへっ、まあいいじゃん。    どうせこれからそんな小さな    ことも忘れちゃうんだろうし」 美穂「ま、そうね・・・」    肝試しを行うために森の    手前で待たされていた    女子相撲部員たち。    監督からの指示でここで待機していた。

藤崎「みんな待たせたな。    参加者はそろってるか?」 美穂「はい全員揃ってます」 藤崎「そうか・・たしか    お前らが一番最初だったな」 藤崎(この時だけとは言え美穂と一緒に    いるのはいささか不愉快だな) 藤崎「・・・・・・・・・・・」ギロッ 筑井「・・・・・・・ッ!?」ビクッ 筑井(すげえ睨んできてるし・・。    言い出したの自分だろ) 藤崎「んじゃ、あんたたちから    さっさと行ってこい。    次の組は2分後に出発しろ」

   この肝試しは全員参加というわけではなく    毎年、参加人数は決められている。    マラソン上位者から希望した者    だけが参加するようになっていた。    上位の1年生7人と2年生8人が    ペアを指定して、14人と16人の    計30人が行くことになっていた。    そのうちの一人が僕だから    2年生は実質15人だが。 美穂「じゃ、先輩いきますよ」 筑井「う、うん・・・」    恐怖を感じながらも    あの日のことについて聞かなければ    ならないという信念があった筑井。    勇気を振り絞り、美穂と共に    暗い森の中へ足を踏み入れる。

   そして、森の中を歩く僕たち。    恐ろしくなって僕は無意識の内に    美穂さんに近づいてしまっていた。 美穂「せ、先輩・・・・。    ちょっと近づきすぎですよ・・。    暗いし間違って踏みそうになるんで    もう少し離れてくれません」 筑井「え、あ、ごめん」    なんか前々からではあるのだが    美穂さんとはどことなく喋りにくい。    あまり、喋ってくれる方でもないし    喋ることがあっても    ほとんどは、部活で用事が    ある時ぐらいだからなぁ・・・。    こんな暗い中で会話がないと    ちょっと怖いので何とかして    会話を続けたいものだが    いったいどうすれば良いものか・・。

   いきなり、あの日のことについて    聞いてみようかな・・・・。    でも、せっかくの肝試しで    そんなこと急に切り出すのも    雰囲気壊しちゃうしな・・。    まだ、切り出すべきじゃないだろう。    それから二人で歩くも    特に会話もなく木々がざわめく    音が妙に耳に入ってくる。    周りに何かいるんじゃないかと    思い益々ますます、恐怖心が強くなる。    そして、闇に目が慣れ徐々に    周りの様子が分かるように    なってくると変なものが    目に移りそうでそれはそれで    少し怖くなってしまっていた。

   そんな中、歩みを進めていると    目の前を何かが横切った・・!? 筑井「ウぎャあ…ッ!?!」    美穂さんもその声に驚いたのか    腰を抜かしそうになっていた。 美穂「ちょっと・・いきなり    叫ばないでくださいよ・・・。    こっちがびっくりしたじゃないですか」 美穂「ど、どうしたんですか・・?」 筑井「いたよ・・!前に・・何か?!    横切る・・・・!!」 美穂「な、なに言ってるんですか・・?    何もいないじゃないですか」 美穂「えっ・・・・・」    何かを見つけたのか    一瞬固まる美穂さん・・・。

美穂「ぎゃああああ!!!」    次は美穂さんが飛び跳ねて驚き始め、    腰を抜かした彼女は勢いよく倒れた。    その衝撃で周囲の木々が大きく揺れる。 筑井「な、なに・・?!    なにかいるの・・・!!?」 美穂「わ、分かんないですけど・・。    茂みに大きな影が・・」 筑井「じょ、冗談言わないでよ!!」 美穂「ほ、ほんとうですって!!」    その時僕は、恐怖心のせいか    自分でも気づかぬうちに美穂さんに    くっついてしまっていた。 美穂「ちょっ、先輩・・!」    彼女に言われ、やっと    今の状態に気付きすぐに離れる。     筑井「ご、ごめん・・。ぎゃあああ!!」    彼女から離れた直後、茂みから    何かが出てきた。

   何に驚いたかと言うと    それはおそらく、美穂さんが    言っていた大きな影の正体。 則夫「たくっ・・・やっと3匹か・・・。    今の揺れのおかげで捕まえれたな」    暗闇ではっきりとは見えないが    そのシルエットと声には覚えがある。 則夫「ん?なんだ?槍薔薇の生徒か・・?」    正体は則夫さん。    いったいなんでこんなところに。    則夫さんは手に持った    何かを腰にある袋に入れた後、    頭に装着していたライトを    付けこちらを確認し始めた。 則夫「あれ、筑井くんじゃん」

筑井「の、則夫さんか・・・。    驚かさないでくださいよ」 則夫「脅かしたつもりはないんだがな。    で、何してんのこんなとこで」 筑井「肝試しの際中で・・・・。     それよりなんで則夫さんもここに?」 則夫「ん、まあ、あれだ仕事みたいなもん」 筑井「足はもう大丈夫なんですか?」 則夫「痛みはまだあるけど    動くのに支障はないよ」 美穂「先輩、この人の知り合いなんですか?」    そういえば会ってるの    僕とあの一年3人だけだったな。 筑井「えぇ、彼はここで医者やってる、    藤崎則夫さんだよ。ちょうど例の    女の子を連れて行く時に会ったんだ」 美穂「藤崎・・・・・」    すると、慌てた様子で則夫さんが    こちらに近づいてきた。

則夫「ちょっ・・!?筑井くん・・・!    あんまり広めて貰っちゃ困るよ。    紹介する時苗字は言わないでくれ」 筑井「す、すみません・・」   (最初合った時は普通に話してたから    いいと思ってたんだけど・・    ダメだったかのか・・・) 美穂「もしかして監督の    お父さんだったりして・・」 則夫「なっ・・・・!?    俺は弟だ!!誰がお父さんだ!!」 美穂「えっ・・?!弟・・・!!!    嘘でしょ・・・!!」 筑井「自分でばらしちゃってる    じゃないですか・・・」 則夫「しまった・・・・条件反射で」 美穂(監督に弟なんていたんだ・・    それにしても似てない・・)

美穂「そ、その、気になってたんですけど    何か捕まえてましたよね?    いったい何を・・・・」ガクブル 則夫「ん?ねずみ」 筑井「ねずみ・・・?」 則夫「生態調査ってところかな」 則夫「この島も一般の出入りが規制されて    長いから、生態系も独自の    進化を遂げ始めている」 則夫「最近の仕事は怪我人の面倒見るよりも    こっちが多くなってきてるな」    ネズミが入っているであろう    その袋をよく見ると大きく    うごめいてるのがよく分かる。      あの中には他にも    ねずみが入っているんだろうな・・。    考えただけで気持ちが悪い・・。

則夫「そう引くなよ二人とも。    さっきも言った通り仕事だし。    趣味でやってるわけじゃねえから」 筑井「でも、なんでねずみなんか・・?    捕まえてどうするつもりなんですか?」 則夫「このネズミこの島にしかいない    固有種なんだけど、天敵である    蛇が激減してからというもの    数が増えに増えちまってね」 則夫「このまま、放っておくと    こいつら増えすぎて自滅しかね    ないから、なんとかしてやろうって    のが目的の一つではあるな」 則夫「分布や個体数も正確に    分かってないからこうやって    フィールドワークで状況を    見て回ってるわけ」 筑井「そういうことだったんですか」

美穂「でもなんで、蛇が激減したんですか?    ネズミがいっぱいいるなら    むしろ増えそうな気もしますけど」 則夫「んぅ・・・。ちょっと不思議な    話なんだが、蛇が減った原因は    ネズミこいつらにあるかもしれないんだ」 筑井「ネズミが原因・・?    食べ物一緒だったりするんですか?」 則夫「ん、いや・・そういうわけじゃ    ないんだが・・、どう言えば    いいかな・・?蛇を食いだす    ネズミが現れたらしいんだよ」 美穂「普通逆な気がしますけどね」 則夫「俺も直接見たことあるわけじゃ    ないから分からんのだが    どうやら突然変異の個体が    いるみたいなんだ」 則夫「おそらく、そいつのせいで    蛇の数が減っている」 則夫「毒を持ったのかそれとも強い牙や爪を    手にしたか、あるいは集団で狩りを    することを覚えたか・・・」

則夫「一番可能性が高いのはネズミの巨大化。    唯一目撃情報もあるしな・・」 筑井「ネズミの巨大化・・?    他の動物ってことは・・?」 則夫「この島にいる、こいつら以外の哺乳類は    コウモリぐらいだからな。それはない」 則夫「もし本当に巨大化しているならミドルや    姉貴の症状と関係している可能性が    ある。捕獲して研究できれば病気を    治す手段も何か分かるかもしれない」 則夫「このフィールドワークの一番の目的は    その巨大ネズミを探すことにある」 筑井「ネズミ版のミドルってことですか。    急な巨大化って意味だと    共通してますもんね・・・」 筑井「んっ?でも監督は別に巨大化してません    けど、どう関係してるんですか・・?」 則夫「そりゃあれだ、大まかに言えば    ミドルとアンダーは同じだからな」 筑井「えっ・・?」

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