巨大女子相撲部

   真西の元へ向かう美穂と藤崎。    その移動中、今まであったことを    藤崎は美穂に聞いていた。 藤崎「ずいぶんと浜から離れたな。    こんな所に一人でいたのかお前は?」 美穂「いえ、最初からここら辺に    いたわけじゃないです。少なくとも    人の目が届く範囲にはいました。    探されたりでもしたら困るので」 美穂「それでも他の皆とは距離が    ありましたし、向こうの岩陰からも    見える位置にいたようなので、    その人物は私に助けを求めたみたいです」 藤崎「岩陰から見える位置にいたから    助けを呼んだというのは論理に    かなっているが、皆から距離が    あるから助けを呼んだというのは    動機としては引っかかるな」 藤崎「そいつは、大勢に見られて    困る理由があったと推測できるが    違うか?」 美穂「えっいや・・・そういうわけじゃ・・」

美穂(今の会話だけで、椿の情報を    こうまで引き出してくるなんて・・。    勢いで否定しちゃったけど    たぶん見透かされてるだろうな) 美穂(万が一さっきの少女や椿が、    前の侵入者の仲間だと分かれば    助けてくれないかもしれない・・。    最低でも彼女達の正体が    バレないように気を付けないと・・)    慎重になりすぎるぐらいが    丁度いいと思った美穂はそれから    自ら喋りかけることはなくなっていた。    額に流す汗も夏の暑さに    よるものではなく、緊張による    冷や汗が流れ出ていた。 美穂(なんで槍薔薇ここに来る    侵入者れんちゅうはどいつもこいつも    人助けなんかしようとするのよ。    見捨てれるもんなら、見捨てたいのに    それができなくなっちゃうじゃん・・)

   そして真西がいた    岩陰に到着した美穂と藤崎。    奥を覗き様子を確認するが・・。 美穂「あ、あれ・・・?いない・・!?」    血痕だけが残っている状態で    先程までそこにいたはずの    真西の姿はなくなっていた。 美穂(ど、どういうこと・・・?    しばらく休むって言ってたのに。    もう移動したのかしら・・?    あの怪我じゃ崖の上は登れないだろうし、    浜辺には絶対に行くわけないわよね) 美穂(じゃあ、まさか海に・・!?    あの傷で海に出るなんて自殺行為よ。    でも、それ以外に、今のあいつが    移動できる場所はないし) 美穂(あの少女押し付けるのが目的で    それがもう終わったから、自害。    その可能性も0じゃないかも・・。    どうしよう・・・・)

藤崎「この出血量を見るに    ミドルなのは間違いないな」 藤崎「お前が一人で運べないと言っていたから    その可能性は視野に入れていたが    やはりそうだったか」 藤崎「ここにいたのは確かなようだが    姿が見えないのはどういうことだ?」 美穂「・・・・・・・・」 美穂「彼女がいなくなった理由は    私も分かりません・・    どこに消えたかも全く・・」 藤崎「そうか」    姿を見られては困るミドル。    この時点でかなり人物を    絞ることができてしまう。    これ以上の推測を立てられることを    臆した美穂は自身の予想を語らず    分からないと答えるしかなかった。

   真西の姿が消えたことを    心配した美穂はここで藤崎に    ある望みを聞いてもらおうとしていた。        しかしそれを説明するには    彼女達のことについて多少    話さねばならないものであった。        監督に彼女達の素性を読み取られるのを    恐れていたが、安否の確認を第一に    考えていた美穂は決心して口を開く。 美穂「実は監督・・・。その彼女の    ことについてなんですが、本当は    助けないでくれと頼まれてました」 美穂「でも、私どうしてもほっとけなくて。    それで監督の力を借りに・・」 美穂「傷は血痕の後を見ても分かると    思うのですが、あの少女より    ひどい状態でした」 美穂「そんな状態でここから姿を消すと    なると海に入ったとしか・・・・    もしそうなら・・・」

藤崎「そうだな・・・。    ちょっと待ってくれ」    それから藤崎は動きを止め    血痕の後を黙って眺め始めた。    何をしているのか分からない    美穂にとって、その時間は    気が遠くなるほど長いものに    感じられていただろう。    そして、答えが分かったのか    藤崎が美穂の方を振り向く。 藤崎「海には入っていない    それは間違いないな・・・」 美穂「ど、どうして分かるんですか?」 藤崎「血の流動を見ればすぐに分かる。    海から体を引きずって上がってきた    形跡はあるが、その逆はない」 藤崎「お前と離れた後そいつ自身の力で    移動はしていないな。別れた後は    気を失っている」 美穂「移動してないのに消えるなんて    矛盾してるじゃないですか?」

藤崎「自身の力でと言っただろ。    別の何者かによって    移動させられたみたいだ」 藤崎「この状態を見る限り移動させた奴が    誰かも大方の予想はつく。    少なくとも死んでいることはない」 美穂「ほ、ほんとですか監督」 藤崎「私を疑う気か?」 美穂「すみません・・」    この時美穂は、監督が自分を    安心させるために言っただけでは    ないかと心の奥底ではまだ    不安をぬぐいきれてはいなかった。    仮に死んでいたのだとすれば    そんなことを生徒の前で    言うはずもないとそう考えていた。

藤崎「とりあえず、そいつの安否は    心配するな。それより、二崎。    貴様それで隠れてるつもりか」 美穂「えっ・・・!?」    後ろを振り返る藤崎と美穂。    呼びかけから少しの時を置いて    二崎が岩陰から姿を現した。 二崎「さすがに監督相手だと    バレバレでしたか・・・」 藤崎「影からこそこそと    相変わらず陰気な奴だ」 二崎「すみません監督・・・」 藤崎「別に謝ることはない。    お前のことは信用している、    だから最初から話を聞かせてやった」    特別怒る様子もないので    一安心したのか、二人の会話に    混ざるべく二崎が近づいてきた。

藤崎「秘め事ばかりですまないが    今回も他言無用で頼む」 美穂「は、はい」 二崎「分かりました・・。    ちなみに、監督この島には    少しの住人はいると聞いていますが」 二崎「ミドルを移動させられるような方と    なるとかなり限られますよね?    この島には監督のような力を    持った方が他にもいるんですか?」 藤崎「そいつは、ここの住人じゃないよ。    まあ力はあるが、私のような    能力を持っているわけではない。    合宿が終わってからここに来る予定    だったんだが、あのあほが・・     勝手に来おって・・」 二崎「監督の口から力があるって    言うぐらいですからだいぶ信頼に    おける方らしいですね」 藤崎「まあな」 美穂「監督が他人を褒めるなんて    珍しいこともあるもんですね」

藤崎「なんだ美穂、普段私が    全く褒めてないみたいな言い方だな」 美穂「すみません、監督・・。    そういうつもりじゃなくて・・」   (いや、褒めたことなんてないでしょ) 二崎「美穂はちょっと頭があれなんで    許してあげてください・・」 美穂「あれって何なのよあれって!」 二崎「庇ってあげてんのに怒らないでよ。    すみません、監督・・」 藤崎「全くお前らは・・心配ないとは言え    怪我人が出てるこの状況で・・・。    仲が良すぎるのも考え物だな」 美穂「仲がいいのは否定しませんけど」 二崎「ちょっと美穂・・・・」 美穂「そうだ!せっかくだし前にやった    新技、監督に見てもらおうよ、ひとみ」 二崎「いや、それは遠慮しとく」

   その頃、新技をかけられるはず    だった筑井はというと    見知らぬ少女を抱え寮まで    向かう道の途中であった。 筑井「だぁ~っ・・・。きっつ・・。    最初は軽いって思ったけど    寮まで走るのはさすがに    堪えるな・・・」ゼェ・・・ ゼェ・・・ 筑井「でも寮は見えてるんだ・・。    あともう少し、頑張ろう!」    その後も息を切らしながらも    歩みを止めることは一度もなかった。    そして、寮を目の前に    したその時・・・。

74「・・・・・・んっ・・」    どうやら意識を取り戻したようだ。    その様子に一瞬驚いてしまった。 筑井「だ、大丈夫・・・?」    まだ目は開けていなかったが    その瞼を何とか開け    こちらの様子を見る少女・・。 74「・・・・・・・・・」    何かを小声でつぶやく少女であったが    それは言葉にすらなっておらず    筑井には何と言ったか理解する    ことはできなかった。 筑井「えっ・・・?    今、なんて・・・・?」    どうやら次は意識を失ったと    いうよりも深い眠りについたようだ。    小さな寝息をたてている。   筑井(何を言ったかよく分からなかったけど    無事を確認できただけでもよかったか)

   そして寮の門を目の前にした    筑井だったが、そこには    例のあいつの姿が・・・・。 冥瓦「おい、筑井細奈・・・」    声をかけられた先には冥瓦が・・。    遠くには藤崎に頼まれ伐採した    大量のまきが並んでいた。     筑井(くそっ・・こいつがいるなんて    タイミング最悪だな・・。    しかも、なんかいつもと    雰囲気が違うような・・・・) 冥瓦「どうやら、今は    てめえだけみたいだな・・」 冥瓦「俺と戦え・・・」    他に誰もいない状況    今奴を止めてくれる人はいないし    この少女まで庇わなくてはいけない。    いったい、どうすればいいんだ・・。

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