巨大女子相撲部

   その後、着々と部員達が    下宿先へと到着してくるが    冥瓦がこちらに来る気配はない。    こっちに来るものとばかり思っていたが。 筑井(あの変態が来る様子がないな・・。    監督も絶対に不機嫌になるだろうし    来てほしくはないけど・・。    まだ、あそこにいるんだろうか・・)    ヘトヘトになっている部員達を    眺めていると、先程思いっきり僕を    投げ飛ばしてくれたあのおっかない人が    息を切らす様子もなく門を通過してきた。    一瞬僕に目をやったようだが    彼女はすぐに目を逸らす・・。    そして監督の元へかけより    何か会話をし始めた。    そういえば美海も一緒にいた    はずだけど別れてたんだな。 寸道「えっと藤崎さん・・・。    かくかくしかじかで・・・」    どうやらこれまであったことを    監督に伝えているようだ。

藤崎「そうか・・。    手合わせしてどう思った?」 寸道「力は1年の少し強い方と言った    ところでしょうか。スピードだけは    ありますが見切れない程じゃないです。    動きがあまりに単調で    長所を活かしきれてない」 寸道「今良い点を上げるとすれば    将来性だけですかね」 藤崎「私に育てろと、そう言ってる    ように聞こえるな・・」 寸道「藤崎さんがよければ」 藤崎「状況によるな」 藤崎「今のレベルで留まるようなら    まず、入学は認めない。    3年クラスの相手はまず無理だからな」 寸道「そうですか・・。    それなら安心しました。    向上心はあるようなので    期待に応えてくれると思います」 藤崎「応えんでもいいがな」

筑井「ちょっとあんた!?」 藤崎「ん?筑井君どしたの?」 筑井「聞いてくださいよ監督。    この人に僕は・・・」 寸道「ちょっ・・・・?!    ちょちょちょちょちょ・・!!」 寸道「ま、待って・・・・。    先にやられたの私なわけだし。    あれはやり返しただけのこと。    ここはお互いさまということで    隠密に・・!!」 筑井「お互いさまで済まされる問題か!!」 寸道「すみません・・」 藤崎「えらく元気だね今日は」 筑井「今まで生きてきた中で    今日ほどアドレナリン出てる日は    ないですよ!!」 藤崎「へえ、よかったじゃん」 筑井「よくないです!」

筑井「まあ、僕にも全く非が    ないわけじゃなさそうだし、    これ以上は言わないけど・・。    あんなことはもう勘弁してよ・・」 寸道「お、押忍・・・。    あれ言われると、カ゚ッと    なってついつい・・・・」 筑井「頼むよほんと・・」 筑井(そういや・・どうして僕は    投げ飛ばされたんだ・・・?    何か言って怒らせたようだけど    全然思い出せない・・)    投げ飛ばされたと同時に    叫んでいたので、何を言っていたのか    よく分かっていなかったのだ。    仮に聞き取れていたとしても    上空に投げ出されたショックで    覚えていることはなかっただろうが。 筑井「あ、そうだ!    監督にも言わなきゃいけないことが    あるんですよ!?」

筑井「冥瓦から聞きましたよ。    僕に勝ったら交際するとかなんとか。    よく分からないこと勝手に    決めないでくださいよ!」 藤崎「筑井君・・・・。    私が冥瓦のものになるの    やっぱり嫌なんだね」 筑井「全然違いますよ!!」 藤崎「むぅ・・・💢」 筑井「その約束のせいでこっちは    殺されかけたんですよ!?」 藤崎「だから何?」 筑井「へっ・・?」 藤崎「だから何だって言うの?」

筑井「だから何って・・・。    監督は僕が冥瓦に殺されても    いいって言うんですか・・・?」 藤崎「殺されかけたって言う割には    怪我一つしてないじゃん。    だったら別にいいでしょ」 筑井「んな無茶苦茶な・・・」 藤崎「まあ、寸道こいつがいるから大丈夫。     心配しなくていいから」 筑井(安心できないのは    彼女も同じなんだけどな・・。    いつ怒るか分からないし) 筑井(それにこっちは勝手に約束された    こと怒ってるのに、その謝罪もなし    この人には何言っても一緒だな・・。    こっちが引くしかないか・・)    再び二人が話し出したので    諦めて壁際に戻ることに。

   最初からこんなんじゃ    日が落ちる頃にはほんとに    死んでるんじゃないのか・・。        先のことを不安に思いながら    一人で座っていると    見覚えのある二人が近づいてきた。 美香「先輩!おつかれさまです」 雪鳴「ど、どうも」 筑井「お、君たちか。    美海は一緒じゃないんだね」 美香「美海は途中でぶっ倒れてましたよ。    最初に飛ばしすぎてたから    ああなるのは目に見えてましたけど」 美香「考え無しっていうか    昔からあんなんですよ美海は」

美香「それより先輩    5日前の朝、私達と離れた後    何があったんです・・?」 美香「美海が来るまで時間あるでしょうし    その間に聞かせてくれたら    嬉しんですけど・・・」    ナナが来た日の話か。    美香はたしか何も知らなかった    はずだろうし話せることはないな・・。 筑井「あの日のことか・・・・」    結局ナナはどうなってるんだろうな。    あの日のことを知ってる人達の    様子を見ても何も分からないし    その日のことについて知りたいのは    僕も同じなんだよな・・。        ・・・・・・・・・・。    そういえば美穂さんがマラソンで    一番だったから、肝試しに一緒に行く    ことになってるはずだよな・・。    その時に話を聞けるか・・。    そもそも、他の人に聞かれても困る内容    だしその時しか聞くチャンスはないな。

美香「先輩っ!なにぼーっとしてるんですか?」 美香「なんか様子が普通じゃないですね。    5日も気絶してましたし    よっぽどのことが・・・・」 筑井「そ、そうそう僕も気絶させられて    あの日のことはあんまり    覚えてないんだよ」 美香「ちょっ誤魔化さないでくださいよ!    何も知らないなんてこと    あるはずないじゃないですか!」 美香「もしかして監督か美穂先輩に・・、    犯されちゃったとか・・?」 筑井「えっ・・?何言ってんだよいきなり⁉    そんなことあるわけないだろ・・!!」 美香「でも、5日も寝込むって    そのレベルのこととしか・・」 雪鳴「まぁまぁ美香ちゃん。    先輩は話したくないみたいやし    無理に聞き出しちゃ悪いよ」 筑井「あ、ありがと・・・・。    優しくしてくれるのきみぐらいだよ」

雪鳴「そ、そんな私なんて・・・」 美香「ちょっとなんか私が悪者みたいに    なってんじゃん。    雪鳴ふざけんなよ!」 雪鳴「うぅ・・・そんなつもりじゃ」 筑井「そう怒らないでって・・。    気にするのは悪いことじゃないし。    ただ、犯されたとか    そういうのは絶対ないから    変な噂広げんなよ・・・」 美香「・・・・・そう言われると    ますます怪しいですね・・」 筑井「否定したから怪しいみたいな    考え方やめてくれよ・・。    美香の悪い癖だぞ」 美香「それは自覚してます。    でも人間すぐには変わらないですから」    それからてきとうに喋りつつ、    美海が来るのを待っていたが    一向に現れる様子はなかった。

美香「どうしたんだろ・・美海遅いわね    歩きでも着いてそうな頃なのに」 筑井「途中から目を覚ましては    いたから、そのまま向かってるとは    思うんだけど・・・」 雪鳴「何かあったんかな・・・?」    待ちぼうけをくらいながら    遠くに映るものを眺めていると    何か動くものが見えた。    目凝らしてそれを見てみると    それが美海であることが分かった。    だが、何か様子が変・・。    どうやら眠ってしまっているらしい。    誰かに担がれてこちらに向かっている。    でも、あの30tの巨体を    抱えられる人物って・・・。 藤崎「・・・・・・・」

   美海を抱えていた人物の正体。    それは紛れもない冥瓦の姿だった。    どうやら美海はまたどこかで    気を失ってしまっていたらしい。 美香「あれっさっきまで道に    立ってた女の子じゃん    ちっちゃいのに力あるのね」    黙々と歩いてくる冥瓦に    全員の視線が集まる。    そんな視線を気にする様子もなく    彼女は下宿先の門を通過する。    そして、美海を丁寧に    地面へと降ろした。

   美海を下ろし終えた冥瓦は    藤崎の方へ視線を向け    彼女の元へ向かおうとし始めた。    そこにすかさず寸道が前に出る。 冥瓦「あんたの相手をするつもりは    しばらくないよ・・。    今用があるのは藤崎様だ。    そこをどいてくれ」 寸道「美海ちゃんを連れてきてくれたことは    感謝するが、それとこれとは話は別だ」 寸道「お前のような怪しい奴を    迂闊に近づけさせてたまるか」    周りが何事かと騒然となっている。    皆は現地人か何かかと思っていたので    突然の訪問に困惑するのも    仕方のないことだった。

藤崎「どけ、寸道。    いらん気遣いだ」 寸道「押忍・・・」    寸道が藤崎の前から    離れ冥瓦と向き合う形になる。 藤崎「冥瓦、恩を売りに来たつもりだろうが、    一人で走りきるのがうちの決まりだ。    勝手に手助けなどするな」 冥瓦「恩を売るつもりはありません。    当たり前のことを行っただけです。    損得で人助けをしようなど以ての外」 冥瓦「ですが、藤崎様のことを考えず助けて    しまったのは、不徳の致すところ。    彼女はルールを破ったかもしれませんが    それは全て私の責任です。    罰をお与えになるなら、どうか私に・・!」 藤崎「それが狙いだろうが、気色の悪い」

冥瓦「あ、ばれました。    善意の押し売りじゃ    そちらも気分が悪いでしょうし、    軽い冗談ってやつですよ・・」 冥瓦「て、私が話したいのはそんな    ことじゃなくて・・・」    パンツの中に手を入れ    例の手紙を彼女は取り出した。 冥瓦「この手紙の内容は、    本当なのでしょうか・・・・?    それだけでもお応え願いたいです」 藤崎「貴様・・私を疑っているのか・・?」 冥瓦「い、いえ決してそういうわけでは・・。    ですが一つ腑に落ちないことが・・」

冥瓦「隣の寸道そいつを倒すなどという    回りくどいことをせず、    すぐにでも筑井 細奈やつと    戦わせてください!」 筑井「えっ・・?!」 冥瓦「手合わせすらせず、敗北を押し付け    られるのは不服で仕方ありません」 藤崎「ハァ・・。疑うばかりか命令も    聞けんと言うのか・・・。    この程度の要望すら聞き入れて    もらえないようじゃ交際も上手く    いかなさそうだな・・・・」 藤崎「貴様の為を思って考えて    やったと言うのに・・残念だ・・」 冥瓦「す、すみません・・そこまで考えて    くださってくれてるとは・・・」    分かりやすい嘘だが、もちろん    冥瓦がそれに気付くことはない。 筑井(この手の人間の扱いなれてんな・・。    後から絶対落とすんだろうけど・・)

冥瓦「度重なる無礼の数々・・。    腕一本を折ることで    お許しいただけないでしょうか!」    掴んだ腕に徐々に力を入れる冥瓦。    骨のきしむ音が全体に響き始める。 寸道「ば、ばかか!お前は!」 冥瓦「馬鹿なわけないだろ!!    当然の償いだ!!」    さすがにこれには監督も    対応に困るだろ・・・・。    変に優しくすれば依存度増しそうだし。    また、気絶でもさせるんじゃ・・。 藤崎「・・・・・・」 藤崎「足りんな、両の腕だ」 全員「え"えええぇえ?!」 寸道「ちょっ藤崎さん・・・?!」 筑井「二人とも言うことぶっ飛びすぎですよ!    どっちも頭おかしいですって!」

藤崎「頭おかしいって・・・?」 冥瓦「誰が・・・?」 筑井「あ、いえ・・、    何でもないです・・・」   (やばいな今日・・・・・。    さっきのイベントのせいで妙に    興奮している・・。気を付けないと) 藤崎「冗談に決まってるだろ。    なぜ皆、本気にしている?」 美香(あんたの場合冗談に    聞こえないんだよ・・) 藤崎「それに、そんな腕いくらへし折った    ところで、何の価値もない。    いずれ価値を見出せる日が来るやも    しれん、それまで大事にとっておけ」 冥瓦「・・・・・・・・・・!」 冥瓦「あ、ありがとうございます!」    その言葉を聞いた冥瓦は何かを    覚悟したように表情を険しくし    それから、地面に膝をつき始める。

冥瓦「あの、藤崎様!!」    そして次は両手を地面につけ    四つん這いの体勢に・・・。 冥瓦「大変失礼なのは承知の上ですが    もう一つお願いがございます!」 冥瓦「今回の合宿私めも一緒に参加する    ことはできないでしょうか?」    この時皆こう思っていた。    ただでさえ、機嫌を損ねさせているのに    まだ要求を繰り返すのかと・・。    やばい展開を予感した部員達は    自然と藤崎と冥瓦の    周りから距離を置き始めていた。 筑井(いや、流れ察すれば無理なこと    ぐらい・・・・・)    すると冥瓦は    藤崎が何かを切り出す前に    続けてこう話した。

冥瓦「来年の全国大会、    私も出場するつもりなので!    ライバル達のこと    少しは知っておきたくて!」    女子相撲部員たちを前にいきなり    現れ、この挑発的発言。    ただでさえ、部員数の多い槍薔薇で    1年生がレギュラーになると    言っているのだ・・・。    正気の沙汰ではないのは確か。 美穂(全く・・ 威勢のいいのが来たわね) 二崎(なんで、嬉しそうなのよ) 美穂(ああいうやる気あるの、    私嫌いじゃないわ) 二崎(美穂もあいつと同じタイプね) 美穂(どこが一緒だって言うのよ!)

藤崎「ふっ・・・」    突然不敵な笑みを浮かべる藤崎。    周りの女子相撲部員たちも    見慣れない監督の様子に    明らかに困惑していた。    島一つなくなるんじゃ    ないかとすら皆覚悟していた。

藤崎「その驕慢さは気に食わんが、    面白い・・・。1日だけなら    めんどうみてやる」 冥瓦「ほ、ほんとですかッ・・・?!」チョピッ・・    皆彼女のことを    良く知らないせいもあってか    相当、疑心暗鬼な様子。    というより、僕自身    命を狙われてる状態に    あるから一緒にいられるのは    非常に困るのだが・・・・。    なんか嫌な展開になってきたな・・。

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