巨大女子相撲部

   寸道に投げ飛ばされた筑井・・。    上空を猛スピードで飛び続け、    現在地面へと下降の一途を辿っていた。 筑井(このままだと・・・・。    間違いなく・・死ぬ・・・!)    今まで幾度となく    死を目の前にしてきた筑井で    あったが、それは人に直接危害を    加えられるものだけ。        これは感情など持たぬ物理的運動。    いくら命乞いをしようと、    地球の重力は容赦などしてくれない。    地面と言う名の地獄へ誘うだけだ。    こんな状況下ではもう彼自身の    力で生還を果たす手段など    残されてなどいない・・・。

   避けられない運命を前に恐怖心が    なくなった筑井は、死というものを    受け入れ始めていた・・・。 筑井(この速さだと水面に落ちても    ただじゃ済まないだろうな) 筑井(運よくネットの上にでも落ちれば    まだ助かる見込みはあるだろうけど    そんな奇跡起こるはずもないし・・) 筑井(最後に見れた光景が病室の天井    じゃなくて、雄大な景色で    良かったと思うべきか・・)    今まで生き残りにかけては    誰よりも必死だった彼もこればかりは    完全に諦めてしまっていた。    なんて粗末な人生だったのだろうと    過去を振り返る余裕すら現れる始末。    もう慌てても何も変わらないのだから、    最後ぐらい平穏な心で閉めよう。    そう心に誓いを立てる・・。

   ばるるんっ!! 筑井「ガハッ・・・!!?」    偶然にも落ちた場所は二崎の胸の上・・!    彼女の胸がクッション代わりとなり    奇跡的に彼は助かったのだ・・!!    しかし、当の本人は目を閉じていた為    そのことにまるで気付いておらず今の    衝撃は地面に激突したものだと勘違いし、    そのまま眠りにつこうとしていた・・・。     筑井(これが地面に落ちた感触か。    思ってたよりも柔らかい・・。    死ぬ時ってこんな感覚なのか・・)    しかしその柔らかな大地は    激しく揺れ続け眠ることができない。    何かがおかしいと思い目を開こうとした    その瞬間、女性の声が降り注ぐ。 二崎「せ、先輩・・?なんで空から・・?」    しばらくぶりに目に映る景色は    やたらと神々しく見えた・・。 筑井「・・・・・・・。うぉ・・!?    天使の姿って・・二崎さんと    そっくりなんだな・・・・」

二崎「何言ってるんですか・・先輩・・?」 筑井「んっ?あれ・・まだ生きてる?    なんで僕はこんなところに・・」 二崎「聞きたいのはこっちですよ・・。    急に先輩の方から胸に飛び込んで    来るからほんと驚きましたよ」   (胸に飛び込んできたか・・。    ちょっと表現が良くなかったかしら) 筑井(そういえば・・!?投げ飛ばされた    はずだけど・・もしかして胸の    上に落ちて助かったのか・・?) 筑井「に、二崎さんあなたは命の    恩人だ、恩に着るよ!」 二崎「・・・・・?    何のことかは分からないですけど    先輩、監督と一緒じゃなかったんですね。    先に寮に向かってるものとばかり・・」 筑井「・・・・・」   (そういえば今マラソン中だったっけ?) 筑井「一応、僕も参加者みたいだし・・」

二崎「先輩も参加者だったんですね。    それなら幸運だったみたいですよ。    もうゴール目の前です」 筑井「えっ!?ほんと!?」 筑井(ラッキー・・。    これでだいぶ楽できた・・・) 筑井(そりゃあんだけ理不尽な目に    あってたんだ・・これぐらいの    幸運がなきゃ割に合わない・・) 筑井「ちなみに二崎さん・・。    今何番目にいるか分かる?」 二崎「私は3番目です。    ついさっきまでは2番でしたけど    先輩が今前に立ってますからね」 筑井「じゃあトップは・・・?」 二崎「美穂です」

筑井(やばい・・・このままでは    美穂さんが優勝して肝試しに    行かされるはめになってしまう・・) 筑井(偶然にしろ、今この位置まで来れた    チャンスを逃すわけにはいかない!!)    ピンチの後に訪れた最大のチャンス    休んでる暇などないと思った筑井は    二崎にある要求をしてみることに。 筑井「に、二崎さん・・!!一つお願いが!!」 二崎「なんでしょうか・・?    苦し気な表情してますけど・・?」 筑井「その、僕を・・・」 筑井「僕を下宿先まで    投げ飛ばしてください!!」    普通に走っても勝てるかどうか    分からないこの勝負。だったらいっそ    投げ飛ばされ確実に勝利をもぎ取る方が    賢いだろうと筑井は考えた。    藤崎が先に寮に向かっていると聞いた    彼は投げられても間違いなく助かる    だろうと確信し、この提案を持ち掛けた。

二崎「何言ってるんですか・・?!    これは人間大砲の大会    じゃないんですよ」 筑井「で、でも僕・・。何としてでも    勝たなくちゃいけないんですッ!!    美海の為にも・・・・!!」   (とか、言っておくか・・・) 二崎「・・・・・・」 二崎「残念ですがお断りさせていただきます」 二崎「皆は必死になって走っているのに    一人だけずるしようとしている    先輩の手助けはできません」 筑井「うっ・・・」   (言い返す言葉もない・・・) 二崎「もしかして、ここまで飛ばさ    れてきたのも何か卑怯な    手を使ったんじゃ・・?」 筑井「そ、それは絶対にない・・!!    ここにいるのは本当に偶然なんだ!」 二崎「・・・。最初の反応思い返しても    それは嘘じゃなさそうですね」

二崎「それじゃあ・・・」    彼女は何かを考え付いたのか    僕を地面に降ろしてくれた。 二崎「このまま私の上に乗って    ゴールすると言うのも周りからすれば    フェアと言えないでしょうから、    ここから先輩一人で走ってください」 二崎「ほんとならルール違反で    超重量特訓になるところですが    ここまで生きて来られたのも何かの    運命でしょうし、特別サービスです」 二崎「美穂を無事に追い越せれば    先輩の望みも果たされます」 二崎「文句はないですよね?」 筑井「・・・・・・・・」 筑井「もちろん」       唐突に走らされることとなった    筑井だが、これに関しては    それほど悪いものだと思っていなかった。    軽いウォーミングアップをとり    走り出す準備をすぐに行った。

筑井「よしッ!!」ダッ!!    筑井は美穂を追い抜くべく    猛スピードで走り始める。 二崎「はや・・・・・。    先輩逃げ足だけはずば抜けて    早いと思ってたけど・・・    普通に走っても速いのね・・・・」 二崎「いや、これもある意味    肝試しから逃げるために    速くなってるってことなのかしら」    全速力で走り抜ける筑井。    逃走力だけは随一の才を持っていた    彼は、グングンと美穂との差を    縮め初め、ものの一分程度で    遠くにある美穂の背を捕らえ始めた。 筑井(このペースのまま走り抜れば    間違いなく追い越せる・・!!    こっちはまだほとんど体力減って    ない状態での全力・・いける・・!)

藤崎「速いな・・・。未來と同じくらいか」    先に下宿先へ移動していた藤崎は    遠くにいる美穂の姿を眺めていた。 美穂(絶対にトップでゴールする・・!    前の侵入者を逃がした件もあるし監督に    少しでもできるところを見せないと・・) 筑井「ウおおおおォォー!!!」 藤崎「へぇ・・」 美穂「せ、先輩・・?!」(参加してたんだ・・)    後方から筑井の声がし、驚愕する美穂。    今まで全く来る気配がなかったという    のに、いったいいつ追い上げてきたのか    不思議で仕方なかった・・・。 美穂(なんて速いの・・。ここまで走ってきて、    まだあんなにスタミナがあるなんて・・。    でも、負けるわけにはいかない!!)    投げ飛ばされてきたことなど    知らない美穂は実力でここまで    来たものだと勘違いしていた。        余裕をもって走っていた美穂だったが    筑井の姿を見て焦りを感じ始める。

   さらにスピードを上げ始めた美穂。    元から筑井並みのスピードが    あったにもかかわらず、それを    さらに数段加速し始めたのだ。 筑井「う・・そだろ・・・?!」   (すでに10㎞以上走って    疲れているはずなのにあれだけ    速くなるものなのか・・!?)    足の速さしか取り柄のない彼にとって、    ハンデをもらっての、この圧倒的       敗北は屈辱的なものであった。    そして、そのまま下宿先の門を    美穂が一番最初に通り抜ける。 藤崎「は~い。永嶋美穂。    一着でごおる・・っと」    美穂がゴールしたのを確認した    藤崎は目の前にタイマーを    出現させ時間を確認する。 藤崎(予想よりちょっと速かったが、    未来までとはいかないか) 美穂「ぜえ・・・はぁ・・・    やったっ・・!一番・・・」

   それに遅れること15秒ほど後に    筑井も門を通過した。    すかさず藤崎が筑井の前に立つ。 藤崎「筑井くん、2番だよ!よく頑張ったね!!    ご褒美に晩御飯作ってあげるから」 筑井「いや・・、それ・・・    ごうも・・ガハッ・・・・・」   (だめだ・・息が切れて喋れない・・。    いや、喋れなくてよかったか) 藤崎「なに・・?睾丸・・?あぁ分かった!    滋養強壮の為に睾丸食べたいんだね♡    だったら、ネズミの睾丸の刺身に    してあげる!」 筑井(死んでた方がマシだった・・・)    そんな二人の様子を美穂は    不機嫌そうに眺めていた。 美穂(なにこの対応の差は…。    勝ったのになぜか不快・・) 筑井「美穂さん・・いるんです・・から    一緒にいないほうが・・・」 藤崎「あんな奴、気にしなくていいから」 美穂(気にしろっての・・怪力サディストめ)

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