巨大女子相撲部

   それから島に到着した僕達は    下宿先まで向かうことに。    これだけの人数を収容できる    建物なら、さぞ巨大なのだろうが    その姿はどこにも見当たらない・・。    それどころか、目の前には    鬱蒼うっそうとした木々だけが生い茂る    だけで、建物一つ存在しない。 藤崎「全員揃ったようだな。    さっさと宿に移動するぞ」 美香「近くに建物らしい建物    見当たりませんけど    どこにあるんですか?    その下宿先・・・・?」 藤崎「ここから10㎞離れた場所に    あるから、今からそこへ向かう」 美海「バスで移動するんですか?」 藤崎「たわけが、これは強化合宿だぞ。    バスなどあるわけないだろ。    宿まで、走って向かう」 美海「えぇ・・そんなぁ・・・」

美穂「毎年これなのよ。    ま、頑張りなさいよ」 美香(10㎞ってほぼ島の真裏じゃないの?    だったら最初からそっちに    船止めろっての・・・・) 藤崎「不満の声が出るのは分かっていた。    だから、特別に褒美を    考えておいてやったぞ」 二崎「褒美・・・?」 二崎(去年はそんなものなかった    はずだけど・・・?)

藤崎「一番にゴールできたものは    筑井細奈と肝試しに行ける    権利を与える」 美海「やったーー!!」 美香「えらく喜んでるけど、    ほんとにあんた彼女なの?    そんなもんいつでもできるでしょ」 美海「あ、いやそうなんだけどね・・。    みんなの目があると堂々と    できないじゃん、デート・・・」 瑠璃(何言ってんだか・・)クスクス 筑井「ちょっ監督!!?」    筑井は慌てた様子で藤崎の元へ    駆け寄っていった・・・。

藤崎「なに?」 筑井(勝手にそういうこと言われちゃ    困るっていうか、そもそもいいん    ですか・・?監督はそれで) 藤崎「うん、別に」 筑井(えっ・・?でも僕は困るんですよ!    今の発言取り消してください!!) 藤崎(相撲部のためだから協力して。    肝試しの間ぐらい別にいいでしょ。    お礼は体でちゃんと払うから) 筑井(体で払われたら僕死んじゃいますよ。    それに相撲部の為になるとも・・) 藤崎(チッ・・今の発言でプッツンきたわ・・。    もう訂正何てしてあげない・・!) 筑井(くっ・・・・)    どうせ強制なんだろ・・。    元からこっちが引くしかないんだよな。        今後もこういうこと増えてきそうだし    この人の攻略法を考えないと    いけないな・・・・。

藤崎「左に進んでいけば下宿先に着く。    別れ道もないから    1年も迷うことはないだろう」 藤崎「私は寮前で先に待っている。    荷物は船を宿まで回しとくから    心配はするな」 藤崎「全員完走しきったら    合宿の説明を行う。    というわけだから、急いで走れ」    島に到着して解放的な気分に    なれたというのに、いきなり    特訓じゃテンション下がるな。 藤崎「それじゃ、よーい・・・・」    ビュンッ!!    掛け声を言い切る前に監督の姿は    消えてしまっていた・・。

美香「最後まで言わないんかい!!    スタートまで言いなさいよ!!」 美海「それを言うなら”ドンッ!”でしょ?」 雪鳴「美海ちゃんも美香ちゃんも何言ってんの?    ”ドギャン!”でしょ、普通は」 美香「えっ何その気持ち悪いの・・?    誰が言ってたのよそれ・・」 美海「て、そんなこと話してる場合じゃないよ!    さっさと行かないと!!    先輩とのデートを奪われてしまう!!」    鬼気迫る表情でスタートを切った美海。    二人はあまりのスピードに完全に    置いて行かれてしまっていた。 雪鳴「はやっ・・・・。    絶対ばてるよ、あれじゃ」 美香「いや、先輩のことになると    美海は100倍のパワーを出せるから    分からないわよ・・・」

   一瞬出遅れた美海達とは対照的に    美穂はすでに走り始め先頭に立っていた。 二崎「ちょっ美穂まっすぐだって・・」 美穂「えっああ、ありがと・・・。    前に誰もいないと迷っちゃうのよね」 二崎「たまに発揮するわねその    方向音痴・・・。何で真っ直ぐの    道を曲がろうとするのよ」    過去に筑井に1年生を呼びに    行くように頼んだのも自身の    方向音痴が起因してのことだった。 美穂「なんか、あるじゃんたまに・・。    ちょっとひらけて道っぽくなってるところ」 美穂「部長候補として、どうしても今年は    勝ちたいから道案内お願いね、ひとみ」 二崎「言われなくてもそのつもりよ。    美穂のスピードだと途中から    ついていけなくなると思うから    大まかなルートは先に教えとくわ」 美穂「よく覚えてるわね・・・」

   皆が下宿先へ走り出し    一人取り残された筑井…。 筑井「えっ僕も走んの・・・?」    賞品とはいえ一応女子相撲部員で    あった彼も、走らされるはめに・・。 筑井「でも、僕も参加選手の一人って    ことは、もしも僕が一番になれば    肝試しに行かずに済むんじゃん・・」 筑井「だったら何としてでも      一番になるしかない!!」        彼は世間一般で言うビビり。    お化け屋敷や肝試しといったイベントは    一番苦手としていた。    それに、女子相撲部員と    夜中に二人っきりになるのは    いろいろと危険が多そうなので、    それも、回避しなければならない。

   回避するチャンスがあることに    気が付いた筑井は大慌てで    彼女達の後へ続く。    しかし競争をしようにも歩幅の差は数倍。    どう見ても勝ち目のない勝負に    思えるが、それは短距離に限った話。    今回は長距離走。    女子相撲部に入部してからというもの    逃げ足だけは速くなっていた筑井。    スピード、スタミナ共に入部前とは    比べ物にならない程成長していた    彼はこの競争に勝機を見出していた。    予想は的中、しばらく走った先に    最後尾の姿が。        彼女達は数十トンもの鎧を着て走っている    ようなものだ、いくら筋肉があろうと    スタミナ勝負になれば筑井に分がある。    徐々に希望の色が見え始めていた。

   一人美穂と二崎の後を追う美海    しかしなかなかその後姿を    捉えられずにいた。 美海「にしてもあの二人    さすがに・・・すごい・・体力…。    私はもうへとへとなのに」    距離は現在2㎞地点。    まだまだ先は長い。    徐々にスピードを落とし始める美海    しかし走りを止めることはなかった。 瑠璃「あれっ?美海じゃん?    さっきまでの勢いはどうしたの?    そんな調子じゃ私が    先輩もらっちゃうよ」 美海「くっ・・・負けません!絶対!」 瑠璃「おっし!がんばれがんばれ!」 美海(馬鹿にしないでよ・・・!)

   先頭を走っていた美穂    彼女は息一つ切らしていなかった。 美穂(これで一番になって監督に    私の実力を認めてもらわないと・・!) 美穂(それに先輩と二人っきりで    話さなきゃならないこともあるし    この勝負は是が非でも負けられない)    筑井に対して伝えたいことが    山ほどあった美穂。 二人きりの状況を    作ることができずにいたので、肝試しは    彼女からしてみれば願ってもない    チャンスであった。 二崎「なんかスピード落ちてない?    大丈夫、美穂・・・?」 美穂「えっ・・?ちょっと考え事してて・・」 二崎「このペースのままなら、    私が追い抜いちゃうわよ」 美穂「そんなことさせるわけないでしょ」

   独走状態のまま    美穂と二崎はどんどん    下宿先までの距離を縮めていく。 ??「すっとーっぷ!!すとーーっぷ!!」    急に謎の人物が2人の前に飛び出てきた。    見た目から察するに、おそらく女。    美穂達と比べれば明らかに小さいが    身の丈は一般人の2倍以上はある。    二人は現地人が現れたものだと思ったが    こんな何もない場所で突然現れた    ことに違和感を感じていた。    それに現地の人間と言っても    ここで生活している人間は    国から認められた人物のみ。    普通なら人とこんな場所ですれ違う    ことなどありえないのだ。 ??「ちょっと聞きたいことがある」 美穂「他をあたって・・・。    今はどうしても休んでられないの」    森の中で出会った不審人物と    関わらないほうが良いと思った2人は    彼女を無視することにしたようだ。

   そのまま走り続ける美穂達は    彼女をそのまま追い抜いて行った。    しかし、追い抜いたかと思った    その瞬間後ろにいるはずの彼女が    また、目の前に立っていたのだ。 美穂「なっ・・・・」 二崎(確かに抜いたはずなのに・・?    いったいどういうこと・・?)    得体の知れぬ人物に    気味悪さを感じていた美穂と二崎。    このまま逃げ切ることも叶わな    さそうなので、話を聞くことに。 冥瓦「先に自己紹介をするべきだったな。    私の名前は冥瓦百。 わけあって、    藤崎様という方と筑井とか言う    クソ野郎を探している。    あんたら知らないか・・?」 美穂(なに、こいつ・・・?    監督と先輩の知り合い・・・?)

二崎(彼女、前の誘拐犯の仲間の可能性が    ありそうよ。動きからしてただ者    じゃないし何も教えない方がいいわ) 美穂(確かに・・。 でも、先輩になんか    恨みあるっぽいけど、    放置したままで大丈夫かしら?) 二崎(監督が手は打ってるって言って    たから心配はないはずだけど) 美穂(まあ、監督と一緒にもう寮へ    向かってそうだし、その心配は    しなくても大丈夫そうね。    私達に対して、危害を加える様子も    ないから、無視でいいか・・)    小声で美穂と二崎が話し合っている間    冥瓦はただ2人を見上げて待っていた。 美穂「藤崎様って人は私達は知らないわ。    先を急いでるから通して」 冥瓦「そうか知らないか・・。    忙しいところすまなかった」 二崎(案外あっさり通してくれるのね・・。    まあ、面倒ごとにならなくて    良かったってところかしら・・)

   二人が過ぎ去った後も    その場から移動をしない冥瓦。    ここが人の通り道であることを    分かった彼女は、藤崎が来るやもしれん    という希望を胸にその場で    待ち続けることを選んだようだ。    その後も2年生たまに1年生が    通過するも冥瓦のことを全員無視。    こんなところに人がいることを    皆、気味悪がっているようだ。 美海「はぁ・・・はぁ・・・・    ぜぇ・・・ぜぇ・・・・    もう無理・・・・」    完全に疲れ切っていた美海は    休憩場所か何かと勘違いしたのか    冥瓦のわきに座り込んだ。    彼女にならまだ話が聞けそうだと    思った冥瓦はさっそく    美海に声をかけてみることに

冥瓦「いったいここでは何が    行われているんだ・・?    さっきから人がたくさん通ってるが?」 美海「部活で走らされてんの・・!    ほんと鬼畜な監督よ!」 冥瓦「その体だと大変だろ。    その監督もまた、厳しい人だな」 美海「厳しいってもんじゃないわよ    私の彼氏まで奪おうとしてるのよ!!    鬼畜よ鬼畜!!!」    息を切らしながらも美海は    なんとか冥瓦の質問に答えた。 冥瓦「とんでもない奴だな・・・。    生徒の彼氏を奪おうとは・・」 冥瓦「で、その監督は何て名前・・・?    て、あれ・・・・・?」

   隣に座っていた美海の    様子を見るとすでに意識を失い    眠ってしまっていた。 冥瓦「これじゃ喋れないか・・。    まあ、最初の奴等が知らないって    言ってたし、話を聞く限り    こいつらの監督は    藤崎様ではなさそうだな・・」    そして美海が寝込んでいる間も    何人かの女生徒達が通り過ぎていく。    誰も相手にしてくれないながらも    冥瓦は何かを予感しているのか    その場から移動することはなかった。    しばらくすると、一般人サイズの    人影が・・。もしかしたらと思い、    冥瓦はそちらに目をやる。    茂みは暗くその正体が    何者か分からずにいたが・・、    距離が縮まるにつれその正体に    お互いが気づき始めた。 冥瓦「お、お前はあの時の暗殺者!!」

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