巨大女子相撲部

74「何縁起でもないこと言ってんの!    ここから出るまで死ぬ    わけないでしょッ!!」    声をかけてきたのは74と呼ばれる少女。    彼女は現在の72のパートナーである。    血縁上の繋がりこそないものの    兄妹のような関係にあった。        ナンバー達はパートナーと    2人1組で生活のほとんどを共に    過ごす。親密な関係になるのも    必然の結果であろう。        74は72より後に、ナンバーに    加入した言わば後輩。 パートナーであり    指導する立場でもあった、72は    彼女にロープ術や潜入術を    おしえるのも務めの一つであった。    だが、その関係も見方を変えれば    人質のようなもの。彼らが協会側に    楯突けないのもパートナーを    思うが故である・・・。

72「死んだらすぐ出れんだろ?」 74「ほんと、兄さんって人は・・・」 74「私を怒らせるとどうなるか・・    分かってんでしょ・・・・?」 72「・・・・・、今疲れてっから    て、・・・・⁉」 74「それっ・・!!」    そう言って彼女は72に    飛び掛かり、くすぐり始める。 72「ちょっ・・・や、やめろ・・!    他の奴らも見てんだろうが・・!」 72(くっそ・・。こんなんでも今の    体力だと・・・結構やべぇ・・)    いつもより元気がない72の様子に    気が付いた、74はくすぐるのを    すぐに止め、2人は定位置に    腰を下ろした・・。

74「で、今回の任務どうだったの?」 72「失敗・・・・」 74「えっ・・?! 失敗・・・。    うそでしょっ・・?」    初めて聞く失敗の言葉に    戸惑い気味の74。それに対し、    72は表情一つ変える様子はない。    このような反応も予想の範疇内    だったのだろう・・。 72「ビビってんのかお前?    情けねえな、心配すんな・・・・。    ここの連中、俺には超あめえから。    何もされねえよ・・・」 74「ビビるわけないでしょッ!!    私をいつまでも子供扱い    しないでよね!!バカッ!!    ドジッ!!!マヌケ!!!!」

74「どんな罰だって全然    怖くないんですからねーっだ!!」 72「めんどくせえな・・。俺だって    たまには失敗することだってある。    キレるこたねえだろ・・」 74「失敗に対して怒ってんじゃ    ないっつーのッ!!    ほんとバカなんだから・・・」 72「るっせぇな・・。どこに    そんな元気あるんだか・・・」 72「ほんとガキみてぇ・・。    金玉ついてても違和感ねえわ・・。    いや、金玉ねえのが違和感あるな」    72の初の失敗・・・。彼らにとって    大きな事件であることに変わりはない。    72が失敗ミスを犯さないからこそ74の    失態を大目に見られてたのも、また事実。

   ここには、ナンバー制度    というものが存在し、高難度の    任務を成功させることによって、    昇進に似たシステムが用いられていた。    成果に応じ、待遇の改善が随時行われる。    年功序列は一切なし。    実力だけがものを言う世界。    72にもその昇進の声はかかって    いたが、彼はそれを断っている。    理由は、74の存在・・・・。    失敗ばかりする彼女のことを    心配し今の地位に留まっていた。    待遇の改善を行う代わりに    74が任務を失敗した時に    72に課せられる罰を帳消しに    してもらっていた。    そして彼にはもう一つ    昇進を望まぬ理由がある。

   ” No.73 ”ナンバー セブンスリー    かつて、彼のパートナーであった人物。    73の存在が彼の人格形成に    大きな影響を与えていた。    73は理由も分からぬまま、ある日    突然いなくなってしまったのだ・・。    家族同然・・・・、いや、    互いの命を預けあってた関係・・。    それ以上と言っても過言ではない。    幼い彼にとって、その別れは    何より辛い経験となっていた・・。        そんな過去のトラウマもあり、    別れることへの恐怖心が    人一倍強くなっていた72・・。        彼は得ることよりも    失わないことを優先する    生き方を選んだ。

74「誰が金玉ついてるって・・・?    もう、私の年も15、れっきとした、    レディーなのよ!」 72「どこがレディーだよ・・・。    谷間の一つも作れねぇんじゃ    男と変わんねぇって・・」 74「また、くすぐられたいの?    デリカシー0男。ブサイクなんだから    中身ぐらい、善くしろっての」 72「可愛けりゃいくらでも    媚び売ってやるよ。おめえには    その必要性を全く感じねえから    こんな口の利き方してんだ、あほ」 74「これ以上馬鹿にするようだったら    次はぶつ・・。いや、金玉潰して    女にしてやる・・・」 72「分かった分かった・・・。    本気にすんなって・・半分は・・」 72「・・・・・・。    冗・・談・・・・・」

74「・・・・・?どうしたの・・?」 72「なんだ・・・・・?」 74「えっ・・・・?」 72「俺、今何してた・・・・?」 74「何って・・私と喋ってたじゃん・・」 72「あ、あぁそうだったな・・」 72「へへっ・・・騙されてんじゃ    ねえよ。ばーか!演技だよ演技・・」 74「・・・・・・・・・・」 72「こんなんもんも見抜けねえから    ガキって言われんだよ・・! 74「・・・・・・・。    最近・・なんか様子変だよ?    ちょっと休んだら・・・?」 72「はっ・・・・?」

72「何様のつもりだよ・・・・。    人の心配より自分の心配しろ・・」 74「・・・・・・・・・・」    憂慮の眼差しを向ける74。    その様子を見た72は    観念したのか、あるいは    別の意図があるのか・・・。    一度瞳を閉じた・・。    一刻を経て再び瞳に光を入れる。    瞬きのそれとは違う重い瞼の動き。    74はその姿を    真剣に見つめていた。 72「74・・・・・」 74「・・・・・?」 72「ちょっと聞いてほしいことがある」

74「嫌だ・・・・」 72「いいから聞け・・」 74「・・・・・・・・・・・・・・」 74「うん・・・・」    意味深な雰囲気に奇妙さを    覚えた74は、話を聞くことに    多少抵抗があるようだった。 72「槍薔薇厳衛高校・・・・。    今回俺が行った場所の名前だ。    ここから北へ直進した位置にある。    距離もそう遠くない・・・」 72「そこもミドル収容してる施設    なんだが・・。まあ、ここよりは    遥かにマシなとこだった」 72「お前も外出る機会あったら、    寄ってみろよ。歓迎してくれると    思うぜ・・・・・」 72「・・・・・・・・いやっ」

72「行け・・・!兄貴が    どうもすいませんでしたって    伝えに行ってこい・・・・!」 74「はっ・・・?なんで私が    謝らなきゃいけないのよッ!    何言ってるのかも全く分かんないし。    謝るなら自分で行けっての・・」 72「そういうめんどくせーの苦手    だからよ・・。シャイだろ俺」 74「どこが・・・」 72「筑井細奈って人だ。    行ったら、そいつにそう    伝えといてくれ・・・」 74「何そのふざけた名前・・」    その言葉を聞いた瞬間、    彼は74を鋭く睨みつけた。

72「おいっ・・・!」    勢いよく74の胸倉を掴み    自身へを引き寄せる。 72「親が悩みに悩んで    つけてくれた名前だぞ・・」 72「それがどんな名前だろうと    馬鹿にするのだけは    絶対許さねぇッ!!」 72「次ふざけたこと言ったら    俺がお前をぶっとばすぞ!!」 74「そんなに怒らなくても・・・」 72「いいから、さっきの発言    訂正しろッ!!」 74「ご、ごめんなさい・・」

72「・・・・・・・・・」    そこで、また喋らなくなって    しまった72。彼が口を開くのを    74は待ち続けるのであった。    それから1分以上の沈黙が続いた。        72「ハァ・・・・・・」 72「急に怒ってすまねぇ・・・・。    詫びと言うわけじゃないが、    お前の言うこと聞いてやるよ・・」 74「な、なに突然・・・?    自分から謝る気になったの?」 72「そっちじゃねえ・・」 72「お前さっき言ってたろ?    休めって・・・。たまには休暇    とるのも悪くねぇと、思ってよ」 72「今から相談しに行くわ・・」    72は腰を上げ、一人    扉のある壁の方まで歩き始めた。

   壁までたどり着くと    その壁に手を触れ上を見上げる。    見上げる先にあったものは鉄格子。    この部屋で唯一彼のみが    利用している脱出口である。    透明なロープを用い    上までいつも登っていた。    その存在は協会側は知らないが    他のナンバーは皆認知している。    しかし、透明ロープを使い登れるのは    ここでは72と74のみなので、    彼ら以外ロープに触れることはない。    さらに言えば、このロープを使い    外に出たとしても、ミドルに    発見されれば罰を与えられる。    外での出入りは72のみ    許されていた為このロープは    実質72専用の脱出手段であった。        72が振り返るといつの間にか    74が後ろに立っていた。

72「お前ここもう登れたっけ・・?」 74「3日前に登れたばっかじゃん・・。    全然覚えてないんだから・・・」 72「そうだったな・・・・。    成長したなお前も・・・」 74「・・きもッ!!何言ってんの・・」 72「・・・・・・・・・・」 72「休暇の許可はすぐに    降りるだろう・・・・。    その間、俺いねえけど    もう大丈夫だよな。15だもんな」 74「・・・・・・・・・・」 74「土産ぐらい持ってきてよ・・・」

72「ハンバーガー買ってきてやるよ。    できればな・・・」 74「いっつも出掛ける時はその台詞。    買ってきた試しないじゃん・・」 72「忙しくなるとつい忘れてな・・。    つか、療養の場合、外出るわけ    じゃねえから、そもそも    買ってこれねえわ、すまん」 74「嘘つき・・・・」    そして、72は透明な    ロープを掴み、上まで登り始める。    もうすでに体力は尽きてる    はずなのだが、何千何万と    繰り返してきたこの動き。    体に指示を出すまでもなく    無意識の内に登ることができた。    筋肉が労を記憶していた。

74「普通に登れてるし・・。    全然疲れてないじゃんッ!?」 72「騙しが俺の基本だからな。    演技だっつっただろ・・」 74「フンッ・・!ずる休み好きなだけ    取って来ればいいじゃんッ!    こっちは帰って来なくても、    何も困らないんだから!」 72「そうか・・そりゃ    心強いな・・・・」 72「だったら安心して、    永い休みを貰えそうだ・・」 72「じゃあな・・」    そして彼は鉄格子の    内側から外の世界へ    飛び出していくのであった。

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