全文表示 巨大女子相撲部

72「すまねぇな・・・・、    色々迷惑かけさせちまって」

筑井「いや、謝らなくちゃいけない    のは僕の方ですよ・・」

筑井「部屋から出してもらったのに、また    戻させることになっちゃって・・」

72「ほんと無茶ばっかり・・・」

72「ぐっ・・・・ッ?!」

   口を手で抑え何かを吐き出す72。

   初めに合った時に比べ明らかに    彼の容態は悪くなっていた。

筑井「だ、大丈夫ですか‥‥!?」

72「風邪だ、つってんだろ・・」

72「熱あるからきついだけだわ」

筑井「あまり無理しないでください・・」

72「無理させてんのによく言うぜ」

72「どのみち頑張んねえとあのデブ共に    半殺しにされかねないからな。    残念ながら無理はさせてもらうぜ」

筑井「・・・・・」

   藤崎がいつ部屋に到着しても    おかしくない状況の為、筑井は    早く進みたいと思っていたが

   足元もおぼつかずフラフラな状態の    72を見て何も言い出せずにいた。

72「筑井さんこそ大丈夫か?    口数減ってっけど」   気を遣って喋らずにいたのが却って    気になったのか72の方から    筑井に声をかけてきた。

   気を遣って喋らずにいたのが却って    気になったのか72の方から    筑井に声をかけてきた。

   その声は先ほどよりも小さい。

筑井「えっ、あぁ‥‥」

筑井「そういえば昨日から何も食べて    ないし僕も結構きついかも…」

72「そうか・・」

72「俺もあんまり弱音吐かねえ方    なんだけど、・・・」

72「今回は・・・・・」

筑井「良いじゃないですか、    たまには弱音ぐらい」

72「・・・・・・」

   その後しばらく、無言のまま    二人は天井裏を歩き続ける。

   そんな空気に耐えかねてか    次は筑井の方から声をかけていた。

筑井「ナナさんって年いくつなんですか?」

   会話の入りとして    素朴な質問から投げかけた。

72「えっ?俺の年齢・・?」

72「・・・・・」

72「正確には分からねぇ・・」

筑井「正確には分からない・・?」

72「聞かれたことねえし、どう答えりゃ    いいか分かんねえな‥‥」

筑井「それって、どういうこと・・?」

72「いろいろ事情があるって    言えばあるんだが・・」

72「そうだな・・・・」

72「・・・・・・・」

72「あんたには、どうも気にかけて    もらってるようだし・・」

72「俺達・・のことについて    ちょっと教えてやるよ」

筑井「な、なに・・・?」

72「まあ、何も言わず    聞いてくれや・・」

72「俺達には親がいねえんだ」

72「いつどこで生まれたかも分からない    所謂いわゆる、孤児ってやつ」

筑井「こ、孤児・・・・」

筑井「それほんとなの・・・・?」

72「ここで嘘ついてどうなんだよ」

72「信じねえならそれでもいいけどよ」

筑井「・・・・・・・」

72「で、孤児ってことだから    正確には分からねえらしいんだが    一応、17歳ってことになってる」

筑井「17歳か…僕より年下だったのね」

72「あんた、そしたら18か・・。    だったら敬語なんか使うなよ」

筑井「う、うん‥‥。分かった」

筑井(僕が監督に言ったことと同じだな‥‥)

72「ちなみにナナって名前は偽名だ」

72「本当の名前はナンバー72セブンツー。    俺が所属してる場所だとそう    呼ばれている」

筑井「セブンツー・・・」

筑井「何て言うか・・その・・」

72「変に気なんか遣うな」

72「こんなもん名前とも思ってねえよ、    入ってきた順番でしかないからな」

72「機械の製造番号と変わらねえって、    あんたもそう感じたんだろ?」

筑井「・・・・・・」

72「普通の孤児なら孤児院とか    あるいは親戚の家とかに    引き渡されるんだろうけど」

72「俺達のいるとこは    少し変わっててな」」

72「親自身が子供を売りに来る場所」

72「表社会にはでない裏の孤児施設」

72「誘拐なんかやってるから分かると    思うが、まともなとこじゃない」

筑井「親が売りに行くって・・・」

72「金がなかったり、あるいは単に金が    欲しかったり色々あるんだろ」

72「俺が売られた理由は知らない」

72「知る機会があっても    知りたくねえがな」

72「この事実は国側も認知はしてるが    それには何も口出ししてこない。    暗黙の了解って奴だ」

72「賭博禁止とか言ってんのに    綺麗ごと並べて認めてたりすんだろ」

72「建前だけで世の中そんなもん    ばっかでよ、光栄なことに    俺もその一部ってわけだ」

72「まあ、こんな薄汚れた俺の力でも    どこかの誰かをうるおわせることが    できてるんだとすれば」

72「こういう立場でいるのもそんなに    悪くはねえと思ってる」

筑井「・・・・・・・」

筑井「色々理由はあるんだろうけど・・    でも・・・・」

筑井「子供を売るなんて・・おかしいよ」

筑井「そんなこと普通国が    認めるとは・・」

72「なんで、黙認されてる    かってのは簡単な話だろ」

72「要するに俺らのことを益の    ある人間って国は思ってくれ    てるわけだ」

72「幼い頃から訓練を受けてるから    それなりに信用度も高えんだわ」

72「それに信用を得られてる    理由はそれだけじゃない」

72「俺らは小さい頃から唯一の家族とも    言える、パートナーと呼ばれる    人間と生活を共にするんだが」

72「例えば俺が失敗した時、俺だけ・・・ に    罰が与えられるわけじゃなく」

72「パートナーにも罰が与えられる。    そのシステムが仕事の成功率を    高める結果に繋がっている」

筑井「・・・・・・・・・・」

72「理不尽なシステムではあるが、    実際それがデカいのは俺自信が    実感している」

72「て、こんな話しても信じちゃ    もらえねえだろうけど」

筑井「いや・・・・」

筑井「ナナのことを見てれば    それが嘘じゃないって分かる」

筑井「きみの実力は本物だもん」

筑井「でもそしたらさ・・・。    この誘拐を失敗したら・・」

72「なに、心配すんなって」

72「今回は大丈夫な理由がある」

   そこまで何とか言い終えた72は    また、大きな咳をして喋らなくなる。

   しかし筑井はまだ彼から聞きたいことが    あった為、続けて彼に声をかけた。

筑井「今までの話聞いてると    なんで・・・・」

筑井「なんで僕の誘拐を    辞めてるのかが分からない・・」

筑井「美穂さん達もいないし道具もある」

筑井「体力がないのかもしれないけど    やろうと思えばできないという    ことはないんじゃないのか‥?」

筑井「パートナーに罰がないと言っても    誘拐を辞める理由がそもそもない」

   今の発言にキョトンとした    表情で筑井を見つめる72。

   正論でも言われて納得しているかの    ようなそんな表情をしていた。

   そんな彼の心の内を理解することなど    できるはずもなく、なぜそんな表情を    したのかと筑井の中で更に疑問が深まる。

72「あんた思ったより察し悪いな。    俺はあんたに恩を売ってんだよ」

筑井「・・・・・・・・?」

72「さっき利益がどうとか言っただろ」

72「俺も同じさ、今任務を放棄した方が    ゆくゆく俺自身の為になる」

72「そう思っただけの話だ」

72「物事の過程はともかく    答えの導き出し方は基本単純」

72「利があれば人はそっちに動く。    ただそれだけのこと」

72「あんただってそうだろ?」

72「俺をここに残すことに利を感じたから    残す決断をあいつらに伝えた」

72「そうじゃないのか?」

筑井「・・・・・・・・・・・」

筑井「ナナの言う通りだよ。    僕の我儘を通すために言ったん    だから、それは否定できない」

筑井「でも、それだけじゃない」

筑井「あなたが良い人だと思ったから・・。    だから少しでもいい結果になればと    思って気持ちを伝えに来たんだ」

72「・・・・・・」

72「フッ・・・。そうか」

72「にしても良い人なんて言われたのは    初めてだな。ありがてぇ言葉だ」

72「恩着せがましいが、    そう思ってくれてんならよ」

72「良い人のお願いを一つ    聞いてくれやしないか?」

筑井「え、えぇ・・・・?」

72「じゃあ、ちょっと言うけどよ    今パートナーいるっつったろ?」

72「そのパートナーがやたらと外の    世界に憧れてて、そいつも    そろそろ外に出られる日が来るんだ」

72「それでさ、もしもそいつに会う機会が    あったら相手してやってくんねえか?    知り合いもいねえしよ」

72「外に憧れてるっていう割には    何にも知らねえ馬鹿だから、    ちょっと心配なのよ」

筑井「そ、それは構わないけど‥、    どうしてそんなこと僕に‥‥?」

72「俺みてえな奴も受け入れてくれんなら    問題ねえと思ってな・・」

72「あいつも人見知りだから    何かしら接点ねえと    人間関係築くの難しそうだし」

72「今あんたを戻してやってるのは    その貸しを作るためさ・・」

72「まあ、パートナーそいつと会うことは    ねえかもしんねえけどよ」

筑井「分かった・・」

筑井「もし会うことになれば    頑張って友達になるよ」

72「それ頑張ることかよ・・。    まあ期待してるぜ」

筑井(期待か‥。それに応えられる    自信はないけどな‥。    そんなできる人間じゃないし)

   それからまた二人は喋らなくなる。

   部屋の真上まで残り僅かとなったその間    筑井はあることを思い返していた。

   何を思い返していたか‥‥‥、

   それは72が美穂に捕まっていた時に    言い放っていた言葉である。

   同情した・・・・その一言が頭をよぎっていた。

   監禁されていた筑井の姿を見て    72はそう言っていたのだ・・・。

   そして、72のパートナーは    外に出たいという願いを持っている。

   その2つの発言を踏まえると彼らが、    自由のない生活を送っているのは    容易に想像することができた。

   天か地かで言えば"地"に存在する人達。

   そんな彼に何か助けの手を    差し伸べられないのか…。

   己は無力だと考えつつも    どうにかできないか思考を巡らせる。

   生きてきた環境は違えど理解し    あえた部分はある。

   ここで初めて自分のことを理解    してくれた彼を見捨てたくないと    思っていた。

72「ここの真下が元いた部屋だ」

72「一度降りてるから    もう大丈夫だよな?」

筑井「うん、大丈夫‥‥」

   考えを巡らせるも結局何も言い    出せないまま部屋の真上に到着。

   自分の力では何もしてやれない。    そう結論づいたようだが‥‥、

   その答えに行きつく過程で何も    思いついていないわけではなかった。

   どうするのがベストなのか、自分    なりに一つ答えを見出してはいた。

   それは、72の作戦を成功させる。    ただそれだけである‥。

   彼をここに残すにも槍薔薇と    72にリスクは生じている。

   そして、彼のパートナーは    問題ないと言っていたが、

   72自身については何も言って    いないことから帰す選択も    彼が犠牲になる可能性がある。

   72や槍薔薇のことを思った結果、    彼の中での正解は自分自身が    誘拐されることと結論づいていた。

   しかし、自分が犠牲になる    覚悟など今の彼にはなかった。

   それに、筑井はこう思っていた。

   72はそれを言わせない為に    あえてパートナーと言う名の    貸しを作ったのではないかと。

   都合のいい解釈かもしれないが、    筑井はそう思えて仕方なかった‥。

   決して逃げの思考のみで    そこに至ったわけではない。

72「それにしても藤崎が全然    来る気配がないな。だいぶ    こっちに運が向いてるらしい」

72「だが、いつ来るか分からない。    だから俺も一緒に降りる    わけにはいかない」

72「ロープも引き上げなきゃなん    ねえし、ここで一旦お別れだ」

72「俺はあのクソでぶ共の元に行ってくる」

72「それじゃあな」

筑井「ちょっと待って・・・!」

72「・・・?」

筑井「・・・・・いやなんでも、またね」

72「おぅ、また」

   その後72はドアノブについていた    ロープと侵入用のロープを回収し    天井を元に戻す。

   部屋についた筑井は一息つくことも    なく部屋の様子を観察していた。

   まだ藤崎が訪れている形跡が    ないのを確認し一先ひとまずの安堵。

   それから72の今後を考え始める。

筑井(監督が彼に手を出すか出さ    ないかは信じるしかないか・・)

筑井(いや、万が一そうなった場合は    僕が止めに入るしか‥‥)

筑井(でも、それだと僕と彼が接触した    事実がバレて美穂さん達がどんな目に    合うか分からないんだよな・・)

筑井(とは言ってもだ。    誘拐はされてはいないんだ)

筑井(接触させてしまったかもしれないけど、    それならいいだろ。問題ないだろ)

筑井(もし、今回の件で72や美穂さん達が    罰を喰らうようなら何としてでも    説得して阻止しないと・・!)

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