全文表示 巨大女子相撲部

   そして、一方筑井達はというと…

瑠璃「なんか急に寒気が・・・・」

瑠璃「早朝とは言っても7月だよ・・・?    こんな鳥肌立つことなんてある・・?」

美穂「この気配は、おそらく監督ね・・」

美穂「さっきので先輩も気を失ってるし    ほぼ間違いないと思う・・・」

   美穂の襟もとで失神して    しまった筑井。

   あまりの体力のなさに    気を失ってしまったようだ。

   彼の体力は小動物と    同レベルのようである。

瑠璃「それにしても、ナナだっけ?」

瑠璃「あなた結構すごいわね・・・。    一般人で私たちと同じぐらいの    影響しか受けないなんて」

瑠璃「普通ならもっと悶えるんだけどね」

72「経験がないわけじゃないからな」

72「にしてもすげえな・・。    頭が割れそうだ・・。」

美穂「ここまで強いのは久々よ・・」

美穂「この頭痛はすぐに止むから    心配しないで」

   監督がいることを察知した    瑠璃と美穂の二人は、

   焦りと恐怖も相まり、移動する    スピードが速くなっていた。

   しかし、いくら急いだとしても    72の荷物を取りに行っている    二崎が戻ってこないことには、    筑井を部屋へ戻すことはできない。

   その為、仮に3年寮前に早く到着    できたとしても彼女達は待機を    強いられることとなってしまう。

   そして、先程の殺気を感じて    からものの数分で、彼らは    3年寮前に到着する。

   だが、二崎がまだそこへ訪れて    いるわけもなく、待つだけの    時間がこれから始まるのであった。

   言ってしまえば、魔王のテリトリー内で    姿も隠さず、ただ立っているだけ。    あまりに無防備な状態。

   移動をしている時とは    比べ物にならない程の    緊張感を彼らは味わっていた。

瑠璃「ねぇ、監督がいると分かった状態で、    待機してるもの落ち着かないしさ、    影に隠れない・・・?」

美穂「何言ってんのよ・・!!」

美穂「それじゃひとみが、    私達を見つけられないじゃん!」

美穂「探すことになったんじゃ余計に    時間がかかっちゃうでしょ」

美穂「どのみち、監督が先に    来たら終わりなのよ」

美穂「ひとみが先に来ることを    信じましょう・・」

   そんな会話をしているさなか筑井が    やっとのことで意識を取り戻した。

   ここ数日で不本意な睡眠を    何度も取らされてきた彼は、    今の状況がどうなってるのか

   それを把握するスピードも    自然と早くなっていた。

美穂「あ、先輩気が付きました?」

美穂「ここからはナナだっけ?」

美穂「彼に先輩の身を任せないと    いけないので・・」

美穂「一旦下ろしますね」

   美穂は筑井を地面に降ろし    それから72に視線を向ける。

美穂「少しでも変な真似したら    次はただじゃすまさないから」

72「しつけえな・・・・」

72「お前みたいな口だけの    でくの坊は嫌いなんだよ」

美穂「誰が口だけですって!!    だったら本当にやってやるわよ!」

   煽りに乗せられ72を    踏み潰そうとする美穂。

   それをすかさず、    瑠璃が止めに入る。

瑠璃「ちょいまち美穂!!」

瑠璃「今こいつ潰したらダメでしょ!!    それにナナあんたも、一々煽るな!」

72「どうせ今は、俺に危害    加えられねえんだろ」

72「せっかくの機会だ。苦しめられた    恨みもあるし、雑言ぞうごんぐらいは言わせて    もらうぞ。クソでぶ野郎が」

美穂「あんたねぇ!!」

美穂「調子に乗るのも    大概にしなさいよ!!」

筑井「ナナさん、やめてくださいよ・・」

筑井「ちょっと怖いけど美穂さんも    悪い人じゃないんで・・」

72「・・・・・」

72「チッ・・・・・・」

72「まあ、そうだな・・。    こんなことやってても    仕方ねえか・・」

美穂「・・・・・・・・・」

美穂(私って怖がられてたんだ・・。    結構ショックなんだけど・・)

瑠璃「はぁ・・・・」

瑠璃「普段こんなことあまり    思わないんだけど、」

瑠璃「この中でまともなの    私ぐらいしかいないじゃん・・」

筑井「いや、それはないでしょ・・・」

瑠璃「ちょっと先輩!!?    それどういう意味ですか!!!」

美穂「なんであんたまで、踏み    潰そうとしてんのよ馬鹿!」

   すると物陰からもう一人の声が

二崎「あんたら全員馬鹿よ・・」

二崎「まったくこの緊急時に    のんきに喧嘩なんかしちゃって」

   声をかけてきたのは二崎。

   藤崎よりも彼女が先に来て    くれたことに、筑井達は    ホッと胸を撫で下ろした。

美穂「案外早かったわね。    それで道具はちゃんと    持ってきたの?」

二崎「当たり前でしょ。そうじゃな    かったらここまで来てないわ」

二崎「ただ昨日の "技" の衝撃で    ところどころ壊れている部品が    あるんだけど・・」

二崎「この状態でも先輩を送り    届けられそうかしら?」

   そう言って二崎は、持っていた    荷物を72に手渡した。

   道具を受け取った72は    中身の状態を真剣に確認する。

   一つ一つの道具を見るさまは    今までの72の雰囲気とは    かけ離れた印象のもので、

   まさに職人と言ったような    イメージを思わせるものであった。

72「まあ、これならなんとかなる」

72「ルート開拓は昨日の段階で    終わっているし、早ければ    10分で部屋まで送れる」

美穂「10分・・・・」

瑠璃「私たちもここにいるの    見つかったらやばいし    早く避難しようよ・・!」

二崎「さっきのオーラ・・・。    あなたも感じ取ったから    分かると思うけど・・」

二崎「たぶん3年寮ここまで来たら    真っ先に部屋に向かうでしょうし    足止めは期待しないでおいて」

72「期待何かはなからしてねえよ」

二崎「先輩を部屋へ連れ戻すことが    できたら、そうね・・・・」

二崎「3年寮の近くで身を隠してて    くれれば、それでいいわ。私達が    近くに来たら出てきてちょうだい」

72「分かった・・」

72「・・・・・・」

72「ッ・・・・・・」

   それから72は筑井を連れて    校舎横にあるダクトへ向かって    行った。

瑠璃「さて、じゃあ私達はどうしよっか」

二崎「茂みに隠れてやり過ごす    以外ないと思う・・・」

二崎「3年寮でなくても、その周辺で    私達の姿を見られれば、絶対    勘ぐられることになるし」

二崎「下手に帰る選択も    取ることはできないわ」

瑠璃「でも・・・私達の体じゃ    茂みにおさまらないと思うけど」

美穂「それでも何とか    おさめんのよ!」

二崎「寮裏がちょうど日影になってるし    そっちの茂みに隠れさえすれば、」

二崎「体をおさめきれないにしても    まだ発見される可能性を    減らすことはできるはず」

瑠璃「んじゃ、さっさと    寮の裏に回ろ!」

瑠璃「怖くてずっと震えてんのよ。    こっちは!!」

   筑井と72、そして2年生3人が    別れたちょうどその頃・・。

   藤崎はというと・・。

   美海の言っていた見知らぬ人物、    正確には、”存在しない人物”の    捜索を行い続けていた。

藤崎「・・・・・」

   ビュビュビュン!!

   音速を遥かに超える    スピードでの移動。

   その衝撃音で相撲部員たちは、    全員目を覚ましていた。

藤崎「・・・・・・・・」

   ・・・。

   藤崎は轟音を立て続ける中、    突然、その音が鳴り止む・・・。

   寮にいた女子相撲部員達は急な静寂に    余計恐怖心を煽られていた。

藤崎「・・・・・・・・」

藤崎「誰だ貴様は・・・?」

??「お、押忍ッ・・!    は、初めまして。藤崎様!」

??「私の名は冥瓦めがわら ももと申します」

藤崎「・・・・・・」

藤崎「何の用だ・・」

   謎の人物、冥瓦 百・・。

   美海の言っていた見知らぬ人物と    言うのが彼女のことだと思った    藤崎は問いかけを行う。

冥瓦「藤崎様に大事な話がありまして、    そ、それでここまで訪れた次第です」

藤崎「槍薔薇ここの一般出入りは    禁止されている」

藤崎「その事実を知らずして侵入して    きたかどうか、それは私の知る    ところではないが・・」

藤崎「お前の話の内容によっては    最悪死んでもらうことになる・・」

冥瓦「・・・・・・・・・」

藤崎「その覚悟があるなら口にするがいい。    それがないなら、さっさとここから    消えろ。まだ見逃してやる」

冥瓦「は、話します!」

冥瓦「ここで引いてしまえば・・」

藤崎「さっさと話せ」

冥瓦「・・・・・・・・」

   藤崎は筑井との速やかな    再会を望んではいるようだが、

   冥瓦かのじょが例の侵入者である    可能性が少しでもある内は    無視して移動するわけも    いかなかった・・。

冥瓦「来年、槍薔薇厳衛高校    女子相撲部入部に入部を    希望しております!」

冥瓦「それで、どうか入学を前もって    認めていただきたいと思いまして、    ここまで訪れました!」

冥瓦「よろしくお願いします!」

藤崎「・・・・・・・」

藤崎「帰れ」

冥瓦「えっ・・・」

   この手の ” おっかけ ” は幾度と    なく経験していた藤崎。

   彼女に対して特別な感情を    持つことなど微塵もなかった。

   強いて何か苛立つことが    あったとすれば、筑井との    再会を阻害されたことである。

   その事実に苛立つのみで、    冥瓦本人に興味を示す様子は    まるでなかった。

   その感情を分かりやすく    表現するかのように冥瓦から視線を    外し、藤崎は3年寮の方角を向く。

冥瓦「ちょ、ちょっと待ってください!」

冥瓦「伝えたい内容はこれ以外にも    あるんです!」

冥瓦「なので、そこまで    聞いていただけませんか?」

藤崎「・・・・・・」

藤崎「ハァ・・・」

   呆れたようなため息。    だが、彼女が移動しないことから    話を聞いてもらえると思った冥瓦は    少し嬉しそうな様子であった。

冥瓦「ありがとうございます藤崎様。    それではお話します!」

冥瓦「わ、私が入部した暁には」

冥瓦「この冥瓦と結婚を前提に    お付き合いしてくださ・・!!!」

藤崎「断る」

冥瓦「えっ・・・・。    でも、あなたに交際相手は・・」

藤崎「貴様はただのストーカーだろ。    交際とは相反する存在だ」

藤崎「思いあがるのも大概にしろ」

冥瓦「・・・・・・・」

冥瓦「なんと・・、こんな・・」

冥瓦「こんな侮辱の数々わたくし如きが    浴びてしまってもよろしいのか・・」

冥瓦「今日の日の出来事を    心から光栄に思います・・」

藤崎「・・・・・・・・」

   すると、藤崎は自分の身長程の    高さまで跳びあがりデコピンの    動作をとり始める。

   どうやらそれで、冥瓦を    どこかへ弾き飛ばそうと    考えているようだ。

   彼女との距離は約1m。    直接当てずとも簡単に人を吹き飛ばす    ことができる藤崎からすれば、    あまりにも近い距離だと言える。

   この距離であれば、女子相撲部員で    すら軽々と舞い上がるほどの    威力を喰らうこととなるのだが・・。

冥瓦「おっっ・・とっと・・!」

   冥瓦はたった、2,3m後ろに    飛ばされるだけでまだ地面は    足についていたのだ。

   膝から崩れ落ちること    すらなかった。

藤崎「・・・・・」

   藤崎の表情に強い変化はないながらも    態度には明らかに変化がみられた。

   そのことに冥瓦も気付いたようで、    少々苦しみながらも藤崎に話しかける。

冥瓦「これで、やっと気づいて    いただけたみたいですね・・」

冥瓦「そうですよ・・・。    私も藤崎様と同じ系統の    人間なんです・・」

冥瓦「それにしてもこれ程の    衝撃は生まれて初めて    味わいましたよ・・」

冥瓦「さすがです・・・」

藤崎「・・・・・・」

藤崎「まさか、こんな所で    出くわすとはな・・」

藤崎「アンダー・・・・と会ったのは    貴様で2人目だ」

冥瓦「へぇ・・・私達ってそういう風に    呼ばれてたんですか・・」

冥瓦「教えてくれて、どうも    ありがとうございます」

冥瓦「見る目少しは変わりました?」

冥瓦「お気に召さないわけ    ないと思いますが・・」

   自身と同じ系質 ”アンダー” 。

   その片鱗とも言える存在と    このような形で出会うことは    今まで一度もなかった。

   普段ポーカーフェイスの    彼女でも多少驚く様子を    見せているようであった。

藤崎「ただのガキではなかったわけか」

藤崎「天道、是か非か、    貴様を見ていると天に不平を    抱かざるを得んな・・・」

藤崎「だが、印象は少し変わった」

冥瓦「えっ!?本当ですか!?」

   ジョババぁ・・・。

   すると、そこら一帯に    変な悪臭が漂いだす・・。

藤崎「漏らしただろ・・・」

冥瓦「うっ・・・・・」

冥瓦「も、申し訳ございません!??」

冥瓦「あまりの幸福感につい・・」

藤崎「恍惚感こうこつかんで花を摘みだすとは。    畜生と同等だな・・」

藤崎「用事は済んだだろ。    私はもう行く」

   彼女に危険性がないと判断した    藤崎は移動を開始する。

冥瓦「えっ・・・!?ちょ・・・」

   その瞬間移動とも思える    動きを目で捉えられていた冥瓦も    また後を追いだしたのだ。

冥瓦「ま、待ってくださいっ!!??」

藤崎「ふん・・・・」

   彼女の動きを確かめたがっていた    藤崎はあえて、スピードを緩め    出発をしていたようである。

   それでも冥瓦のスピードは    相当なもので、そこに彼女は    関心を抱く様子を見せていた。

冥瓦「は、速い・・・・!?」

冥瓦「これが藤崎様のスピード・・。    目を開けるのがやっとだ・・」

冥瓦(それにしても、くっ・・)

冥瓦(パンツじゃなくてタイツか・・。    それが何より残念だ・・)

   そして、藤崎と冥瓦は音速を    超えるスピードで3年寮へと    向かっていくのであった。

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