巨大女子相撲部

雪鳴「か、かんとく・・・・。    お早いお帰りで・・・・」    そこに立っていたのは監督の藤崎美理央    先日に全国女子相撲大会に    行っているはずの彼女がなぜもうここに…。    大会は最長で3日…。    どんなに早く帰って来ようとも    今日の夕方まではかかるはずである。 美海「お、おはようございます!!」 美香「おはようございます…」 藤崎「・・・・・・。」 藤崎「何の距離があるって?」    挨拶を意に返さず、問答を続ける藤崎…。    遥か下から見上げられているはずなのに    見下ろされている錯覚すら覚える・・。    それほどまでに、凄まじい迫力を放っていた。

美香「あ・・・・、え、その・・・。    鳥・・・⁉見慣れない鳥が    茂みの奥の方で飛んでたので    それを見てたんです。」    とっさについた嘘。    この時美香にしては単純な思考。    筑井を今見られるのはまずい…。    それだけが頭をよぎる。    早い話今彼が部屋の外に出ているという    ことを、監督が知れば    自分たちも含め女子相撲部全員が    超重量特訓の被害にあう可能性がある。    そう思い彼の存在を悟られぬようにした。    しかし発言をしたそばから後悔。    嘘がばれた時のリスクを考えていなかった。    真実…、少しの偽りを交えた真実を伝えれば    罰を免れることができたかもしれない。    だが、口に出してしまった。    完璧なまでの虚実を…。

   その迂闊さ・・・。    むしろ、それに気づかなければ    動揺する心を表に出すことはなかっただろうが    不幸にも気付いてしまった…。    そしてそれを藤崎が見逃すはずもなく    美香を黙って見つめていた。    最後に発言をしたのは己なのだから    見ているのは当然…。 ごく自然な流れ…。    そう思うことでしか平常心を保つことは    できなかった。 藤崎「そう・・・・」    瞬間、鳴り響く衝撃    全身、身の毛もよだつような    恐怖の波…。    3人は何が起きたのかまるで理解できなかった。    ただ眉間にしわをよせ冷や汗を流すほかない。 藤崎「5羽・・・」

藤崎「近くにいた鳥5羽の動きを止めた・・・。    大丈夫、殺してはいないから」 藤崎「でも、この中に    珍しい鳥なんていないけど…」    どのようにして鳥の種類まで    判別しているのか…。    今の彼女たちでは到底理解できなかった。       だが、監督の神とも捉えられるような    驚異的な力…。    その姿を幾度となく目にしてきた    彼女たちにとってそれらの発言を    疑う余地などあるはずもない。 藤崎「どうした?3人とも…?    そんなに怯えることないだろ・・・?    それとも、後ろめたいことが    あるから、そんな顔してるのか・・?」

   全てお見通しなのか否か    この緊迫した空気の中で藤崎の考えを読む    ことなどできるはずもなかった。    彼女たちからしてみれば、この状況は    喉元に槍を突き付けられながら    尋問を受けているのと同じ。    時が経てば白状せざるを得ないこの状況。    舌を噛みちぎってしまった方が    楽なのではないかとすら思えてしまう    緊張感に包まれていた。    だが、そんな究極の槍を    もろともしないしない精神が唯一残っていた。    不屈の精神…ともいうべき    その精神の持ち主は、美海であった。 美海「あっち…⁉あっちに見慣れない人がいて…    それで・・・・・・」

   美海が指さした方角は2年生と筑井達が    向かった3年寮の方角とは逆を指していた。    もちろん彼女たちが見ていた方向とも    真逆である・・・・。    藤崎が来た方角指さしているのだ・・。    誰がどう見てもそれは奇異な行動であった・・。    当の本人は、それすら気づく余裕がない。    その姿に美香と雪鳴は死を悟った。    自身の監督に殺されてしまうと    覚悟した。それ程までにに今の藤崎の    オーラは狂気じみていたのだ。        そんな間も顔は泣きじゃくり完全に    崩れていたが、美海は一度指さした方角を    ずっと、指し続けていた。 藤崎「へぇ・・・・  そう・・・」    超強大なオーラの衝撃    人間が放つエネルギーとは思えぬほどの量の    パワーが瞬間的に解き放たれる。    息をするのも忘れるという表現がよくあるが    事実、彼女たちは呼吸ができなくなっていた。

   それはただ、緊張によるものだけ。    監督が放つオーラに気圧され    体が言うことを聞かなかったのだ。    ”生”を受けた時から    自然に学び会得する呼吸。    どんな単細胞だろうがそれをできぬものはいない。    しかし、今の彼女たちは    それすら適う余裕がなかったのだ。    言うならば、第3の暴力    拳を出すわけでもない、非情な言葉で    心を傷つけるわけでもない。    立っているだけ・・・、    ただ、感情の波が少し荒いだけなのだ。    それだけで人を苦しめる力が    藤崎美理央にはあった。

   すると突然の爆風。    30トン以上ある巨体たちが宙を舞う。    どうやら美海が発言した    その方角に向かったのだろう・・・。    向かったのだろうと言うのも    あまりの衝撃とスピードに    彼女の姿を目視できたものが    いなかったからだ・・・・。        藤崎が向かった方角を正確に分かったのは    それから数秒後・・・。彼女が向かったで    あろう方向に木々が傾いているのを見て、    彼女たちは行先を理解することができた。    このような結果になったのも藤崎も    美海と同じで通常の思考が行えずいたのが    主な理由である・・・。狂と狂の    組み合わせがまさかの結果を生んだ。    3人は気を失っていたわけではないが    しばらく喋ることができずにいた。    まだあたりに残っている殺気。    3人とも涙を流すことしかできなかった。

   それから1,2分が経過し    美海がやっとのことで切り出した。 美海「こ、これで良かったんだよね…」    不安げな表情で2人を見つめる美海。    そんな問いかけに応えられるはずもなく    二人は黙って下を見ていた。    美香はそんな美海の様子を見てこう思っていた。    彼女は芯の強い女だと。    頭でっかちなだけの自分にはない    才と根気があると・・・・。    そんな姿が美香の平常心を    徐々に取り戻させていた。    というよりも、美海に負けたくない    その意志が彼女を駆り立たせていた。        そして美香は思っていたことを口にする。

美香「えぇ・・・間違いなくこれで    よかったはず・・・。    よかったはずよ・・!!」    さきほど、監督が鳥の    動きを止めた時、数と種類まで    把握することができていた。    範囲はどの程度のものかは分からないが    もしそんな能力があるのなら    2年生たちと筑井の特定を    できていておかしくないはず。    美香の考えでは監督は鳥の数や    種類を把握などしていなかった。    おそらく、あれはハッタリ。    美香が口からでまかせを言っていると    思っていたから 鳥の動きを止めた    と言い放ったのだろう。    脅せば口を割ると思っての行動のはず。

   彼女たち程度ならそれで全てを話す。    藤崎はそう考えていたに違いない。    しかし、藤崎の思惑通りにはならなかった。    奇想天外な行動によって筑井の場所は    バレずに済んだのだ。 あの美海の行動によって。    あの発言を聞いた直後、移動したのがいい証拠。    そもそも、感知する能力があるのだとすれば    あの場からすぐ移動する必要も    なかったはずだ。 美香「いくら監督のスピードが速かろうが    向こう側をくまなく探すとなれば    相応の時間はいるはず。    すぐに先輩たちの方へ行くことはないでしょ・・」 雪鳴「う、うち・・・、怖くて    本当のこと言おうとしてた、ごめん」 美香「それが普通よ普通・・・。    美海が異常なんだって。」 美海「なんかその言い方ひどくない?」 美香「褒めたくないけど、これでも褒めてやってんのよ!!」

美香「実際そのおかげで    先輩を3年寮に戻すまでの時間が    確保できたわけだし」    どんな内容であれ、あの状況下で    発言できたことは評価に値する。    監督の理想の形を崩せただけでも    こちら側の勝利と言ってもいい。    それを成しえたのも美海がいてのことだ。    この時間を無駄にするわけにもいかない。    美香はそう考えていた。 美香「とりあえず美海!    この事実を早く先輩たちに伝えてきて。    いくら時間がかかると言っても    監督ならすぐに3年寮に向かうはずだから!!」 雪鳴「こっちにまた戻ってくるようなことが    あればなんとか、うち達で    時間稼いでおくから!」

美海「う、うん分かった!    朝練の準備と監督のこと    お願いね!じゃあ言ってくるね!」    この時雪鳴はこう思っていた。    なぜあれだけ2年生たちのことを気にしていた    美香自身が、筑井達のもとに    向かわないのかを。    美香はさきほどの一連の流れで    美海を認めてしまっていた。    自分でもそのことは、よく分かっていなかったが。    彼女に行かせてやりたいと、    なんとなく思ってしまっていたようだ。 美香「私もなんだかんだで…」ボソッ・・ 雪鳴「えっなにか言った?」 美香「いや、なんでも…。    それより早く準備しちゃお!    二人だと時間かかるわよ」 雪鳴「う、うん・・・」

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