全文表示 巨大女子相撲部

   筑井が道具倉庫から移動を    開始した時間と、同じ頃・・・

   移動した2年生達は倉庫から100m    程離れた場所で会話をしていた。

美穂「ひとみ‥、首元にいるんでしょ。    昨日の奴が・・・・?」

美穂「どういうつもり    なのか説明してくれる?」

   二崎としては72を隠しておける    のであれば、隠し通そうと考えて    いたようだが、

   美穂から質問をされる前には    すでに襟元から72が姿を    現していた。

   出てきてしまっている以上、    持ち出した事実を認めざる    を得ないため

   それから、彼女は観念したかの    ように語り始める。

二崎「私達は彼をここから    逃がすと決めたわ」

二崎「だから、道具倉庫まで訪れた。    それだけよ・・・」

美穂「・・・・・・っ!?」

二崎「あなたが考えていることも分かる」

二崎「けれど、この状況じゃ誘拐も    続行不可能なわけだし、もう見逃して    あげてもいいんじゃない‥?」

美穂「何で逃がす必要があるのよ!」

美穂「ここでただ逃がせば、何も    分からないままで終わるのよ!」

美穂「もし今後また何かあった時、    今日、逃がしたことを絶対    後悔することになる!」

美穂「そうならない為にも    そいつから何か無理矢理にでも    情報を吐き出させないと駄目よ!」

美穂「部の為にも私達にできることは    全部やらないといけないって!」

二崎「・・・・・・・・」

72「悪いが、お前ら如きに口を    割るようなヘマはしねえよ」

72「別に暴力振るう分には構わねえが    無駄な努力に終わるだけだぞ」

二崎「・・・・・・!」

   二崎は今の72の発言を、    間接的にこちらの味方だと言うこと    伝えているものだと解釈し、

   その発言のおかげで、先程までよりは    落ち着きを取り戻すことができていた。

瑠璃「美穂、何もそこまで考えなくても・・」

瑠璃「監督がいないからこんなことに    なってるだけで戻ってきさえすれば、    もう、こんなことにはならないって」

美穂「そりゃ、監督さえいれば    こんなことはないと思うけど」

美穂「けど、監督はこの件について    私達に何も話してくれないんでしょ?    人を半端に巻き込んでおきながら」

美穂「だったら、そいつから    話を聞くしかないじゃない!」

美穂「これは自分達、そして部の為よ!    巻き込まれてる以上、知る権利や    義務はこっちにだってあるはず」

美穂「二人だってそう思うでしょ!    だったら逃がすなんて選択は    辞めましょうよ!」

二崎「・・・・・・・・」

二崎「美穂・・・・」

二崎「あなたの言い分は    よく分かるわ・・」

二崎「だけど、この件に関しては    監督を信じて黙って従うしかない」

二崎「私達が首を突っ込みすぎて    いい問題ではないはずよ・・」

美穂「ひとみ・・・あんた・・・、    何甘いこと言ってんのよ・・」

美穂「これから部活を支えていかなければ    いけないのは私達なのよ・・?」

美穂「監督に任せる・・?」

美穂「そんな他力本願な姿勢でこの先    部を引っ張っていけると思ってるの?」

美穂「気持ちの問題よ・・!」

美穂「自分達が成長するために    何事にも率先して動いて    いかなくちゃいけない    こんな時に・・」

美穂「何かに臆する姿勢を    私は見せたくない!」

   美穂がどれだけ真剣に相撲部に    向き合ってきたか、それを二崎は    痛いほど理解している。

   だからこそ彼女を信頼し    後押ししてきた。

   そんな彼女の意思を否定することに    心苦しさ感じつつも、本人の為だと    思い美穂に対して本音を口にする。

二崎「この際だからハッキリ    言わせてもらう」

二崎「美穂じゃこの問題は    どうにもできない」

二崎「だから、監督は何も喋らなかった。    それぐらい分かるでしょ?」

美穂「・・・・・・」

二崎「あなたは監督の気持ちを    無下にするつもりなの?」

二崎「自分の成長の為に    恩人の意思を裏切るわけ?」

美穂「・・・・・・」

美穂「でも・・・・・っ」

筑井「ちょっと待って!!」

   二崎と美穂の会話が一旦止むと    その間に、地面からもう一つの    声が混ざってきた。

   4人が一斉に下を見下ろすと    そこには筑井の姿が・・。

瑠璃「先輩ッ・・・!?」

72「・・・・・・・・」

美穂「せっかく見逃してあげたのに、    自分から来ちゃったんですね」

二崎(見逃す‥?)

   何か今の台詞に特別な意味が    あるのか・・?

   二崎はその一瞬の発言に    強い興味を示していたが、    今はそれについての詮索は    行わないようにした。

筑井「いろんなことがありすぎて    冷静さがかけていた・・」

筑井「でも、今はちゃんと    自分の答えが見えてる」

筑井「彼をここに残してほしい」

筑井「僕はそれを伝えに来た」

二崎「・・・・・」

瑠璃「な、何言ってるんですか先輩!」

瑠璃「さっきまで逃がして    あげた方がいいって・・」

瑠璃「それに彼をここに残しておくのは    危険を伴うかもしれないんですよ?」

筑井「それはもちろん分かってる・・・。    だから今の言葉は・・」

筑井「僕の我儘わがままな気持ち・・。    ただそれだけだ」

   筑井はこの時美海達の    行動に影響されていたの    かもしれない・・。

   何かを守とうと思った時    それを自身の手元に    残しておきたい。

   その至極当然の心理が    彼の結論となっていたようだ。

筑井「でも、全く理由がないわけでも    ない。話だけでも少し聞いて    くれないか・・?」

72「・・・・・・・・」

筑井「このまま彼を返してしまえば    僕を誘拐できなかったってことで」

筑井「責任を取らされるかも    しれないんだろ・・?」

筑井「目的は誘拐だったのかも    しれないけど・・」

筑井「僕の願いを聞き入れてくれた事実は    どんなことがあっても変わることは    ないんだ」

筑井「だからそんな彼が、このまま任務失敗の    責任を取らされるのかもしれないなら    それを見過ごすことなんてできない」

筑井「そうならない為にも    もうしばらく槍薔薇ここに・・!」

72「勝手な妄想ばかりだな・・」

筑井「・・・・・・・・」

72「願い何て聞いた覚えはこちとら    ねえよ。そう言うのを    余計なお世話って言うんだ」

筑井「最初に言ったはずだろ・・」

筑井「これは僕の我儘わがままだって・・」

筑井「全部自分が傷つきたくないから    勝手に言ってるだけだ・・」

筑井「お世話って言えるほど綺麗な考えの    元で意見をしているわけじゃない」

72「・・・・・・・・」

72「・・・・・・・・フッ」

二崎「先輩の気持ち・・。そして意見。    全てよく伝わりました・・」

二崎「確かに作戦失敗で責任を    取らされるのは当然の話ですが」

二崎「仮にも彼はあなたを    誘拐しようとした男ですよ?」

二崎「そんな人物のこの先を心配するなんて    少々こちらとしては理解しがたいものが    あります・・」

二崎「それに、しばらく彼を槍薔薇に    残しておくともなれば増援が    来る可能性を大きく上げる    ことになります」

二崎「そうなれば、他の部員達も危険に    巻き込む結果になるかもしれません」

二崎「ですから、彼を残す選択は、    賢い判断ではないと私は思います」

筑井「でも二崎さん、さっきこんな    こと言ってたよね・・?」

筑井「監督から僕と彼を接触させるな、    それ以上の命令は受けてないって」

筑井「ここに残すか・・・。    あるいは逃がすか」

筑井「その選択は二人に任されたって    ことじゃないの・・?」

筑井「試されてると思うんだ。    この状況でどうするかを・・・」

筑井「女子相撲部にとって、    危険人物なのは分かってる」

筑井「でも、監督のことだから    その選択を与えたことにも    意味があると思うんだ・・!」

筑井「だから僕は彼を残すことに    価値があると信じている」

筑井「断言はできないけど、    得られるものは危険だけ    じゃないかもしれない」

二崎「それは先輩・・」

美穂「ひとみ・・・」

二崎「なによ美穂・・」

美穂「私達も、もう長い付き    合いでしょ・・」

美穂「だから、私もひとみと同じで    あなたの考えていることぐらい    なんとなくだけど分かっている」

美穂「私から何もしなければ少しは    ひとみも安心するんでしょ?」

二崎「・・・・・・・」

美穂「やっぱり図星みたいね」

美穂「だったら、私から彼に何もしないし、    何も聞かない。それは約束する」

美穂「実際、ひとみの言う通り72こいつからも    監督からも、今回の件について    詳細を聞き出すのは難しいと    私も思ってはいるのよ」

美穂「でもさ、もし72こいつを監督の前に出せば    監督もある程度のことは話して    くれるかもしれない」

美穂「私はそこで何か得られさえすれば    今はそれで満足してあげる」

瑠璃「してあげるって・・」

美穂「それにひとみ、あんた    増援がどうとか言ってたけど」

美穂「そんなもの心配する必要    なんてないわ」

二崎「どういうことよ・・?」

美穂「そんなもの全部    私が止めてみせるからよ」

美穂「次期、主将の名に懸けてね」

二崎「・・・・・・・」

美穂「ここまで話してまだ    あなた反対するつもり?」

瑠璃「もういいんじゃない、ひとみ?    私達も過剰に心配しすぎてた    ところはあると思うよ」

瑠璃「もし、そんなゴキブリみたいな    侵入者が来ても美穂にかかれば    イチコロだって」

二崎「・・・・・・・」

二崎「ハァ・・・」

二崎「分かったわ、もう構わない」

二崎「彼を槍薔薇ここに残すことにしましょう」

美穂「珍しくあんたが折れたわね。    ひとみ、ありがと」

二崎「ふっ・・」

二崎「ちなみにあなたは    どうしたいの・・?」

二崎「筑井先輩が身を案じてるみたい    だから、できるだけ意志の尊重は    してあげるけど」

72「めんどくせえから    どうでもいいわ・・」

72「体力も残っていない今の    状態じゃ逆らいようもねえしな」

72「てめえらの好きにしろよ」

筑井「・・・・・・」

筑井「良かった・・」

   安心したかのように顔を    少しだけ綻ばせる筑井。

   だが、今の彼の状況はそんな    リラックスしていられるもの    ではなかった。

   それを指摘するかのように    二崎が口を開く。

二崎「急な話で申し訳ないですが、    話もまとまりましたし、先輩には    部屋に戻っていただかないと・・」

二崎「今日監督が槍薔薇ここに    帰ってくるかもしれないので」

二崎「もし、外に出ていることが    バレれば、おそらく全員    ただではすまないかと・・」

筑井「あ、やっぱそうだよね・・」

筑井「部屋には戻るよ・・」

筑井「・・・・・・・・」

筑井(トイレどうしよ・・)

筑井(まあでも、すぐには帰ってこない    だろうし、少しの時間はあるか・・)

筑井(そこまで心配しなくて    いいだろう・・・)

筑井(あ、そんなことより・・、    ここに残すっていうなら    これだけは伝えておかないと・・)

筑井「ちなみに、監督に何か話をする時    僕と彼は会ってないって    ことで口裏を合わせてほしい」

筑井「そっちの方がまだ、    怒り買わずに済みそうだしね」

瑠璃「確かにそれがいいですよ・・」

瑠璃「監督がもし誘拐されかけたことを    知ったら・・・、う"ぅ・・」

瑠璃「想像しただけでも    恐ろしい・・・」

二崎「先輩には失礼ですが彼はしばらく    ヘルメットの中に閉じ込めさせて    いただきます」

二崎「監督が帰ってくるまでの間    留置しなくてはいけないので」

瑠璃「結局のところ72こいつの    処分は監督次第ってわけね・・」

瑠璃「にしても、先輩のお人よしも    ドが過ぎるというか・・」

瑠璃「よく彼にここまで感情移入が    できますね・・・」

筑井「・・・・・・・」

筑井「誰にでも、こうって    わけじゃないよ・・」

筑井「なんかどうも他人には    思えないんだよね・・」

72「・・・・・・」

筑井「あ、ごめんなさい・・!    変なこと言っちゃって!?」

72「・・・・・・」

72「気にしてねえわ・・」

二崎「監督のことだから一番早くて昼。    あるいは夕方までに帰ってくる    可能性は十分あるわね」

二崎「まだ早朝ではあるけど、準備は    早いに越したことはない」

二崎「今からでも戻す準備に    入りましょうか・・」

瑠璃「えっと、その・・・大変    申し上げにくいのですが・・」

二崎「・・・・・・?」

瑠璃「いろいろあって二人が出てきた時に    使ってたであろうロープを    引きちぎっちゃったんだよね・・」

瑠璃「それでさ、先輩戻せる方法って    今なんかあんの・・?」

二崎「たく、あんたは本当碌なこと    しないわね・・・・・」

瑠璃「むぅ・・仕方なかったんだって!」

美穂「でも、今の先輩と72こいつの怪我を    見てる限り、とてもあの高さまで    登れるとは思えないけど・・」

美穂「それに、私達も扉を開けれない以上    元の部屋に戻す方法なんて・・」

72「道具を返してくれるなら、    始めに侵入してきたルートで    部屋に戻すことは可能だ」

美穂「!?」

72「筑井さんの体重なら今の体力でも    ギリギリなんとかなる」

   このまま筑井を外に連れ出して    いれば、藤崎の怒りを買うことは    まず間違いない。

   それを回避するためにも    何とか、彼を部屋に戻さなければ    いけないと全員が思っていた。

   しかしそれを可能とする人物が    現状72しかいない。

   その事実を突きつけられ、    二崎と瑠璃はだいぶ悩む様子を    見せていたが、美穂は2人とは    異なる反応を見せていた。

美穂「それ以外に方法はなさそうね」

美穂「分かったわ、部屋までの    誘導はあなたにお願いする」

72「えらくあっさり    了承したもんだな」

美穂「あまり悩んでる時間もないし。    なにより、筑井先輩があなたを    信用しているようだもの」

美穂「先輩が信用してるなら、    私もあなたのことを信用するわ」

72「・・・・・・チッ」

二崎「まあ、美穂の言うとおりね。    私からもお願いするわ」

二崎「とりあえず、先輩を部屋に    戻したら、あなたは私達の    元に来てちょうだい」

72「あいよ」

二崎「・・・・・・・」

二崎(戻って来るかどうかは    それこそ彼を信用するしか    ないわね・・)

   それから、二崎は72の    荷物を取りに行くために一旦    グループから離れる。

   3年寮までは二崎を除いた    4人で移動することとなった。

瑠璃「また、戻んのか・・・。    さっき走ってきたばっか    なんだけどな・・」

美穂「そういえば、気になって    たんだけどさ・・」

美穂「なんであんたが3年寮に    いたのよ・・?」

瑠璃「えっ・・・!?」

瑠璃「あぁ、まあ・・」

瑠璃「そんなことどうでもいいじゃん!!    それより、さっさと行こ!!」

美穂「・・・・・・・?」

   こうして2年生2人と    72、筑井の2人を合わせた    計4人は3年寮へ向かっていく    のであった・・。

   そしてその頃、    美海達はと言うと・・。

美海「あ”ぁ~やっぱり    あっちの方角は    3年寮の方じゃん!!

美海「一瞬だけの儚い再開・・・・

美海「うわぁ~~ん!!!

美香「でかい声で泣くな!バカッ!    バレちゃうでしょうが!!」

雪鳴「距離あるし大丈夫やない・・」

   彼女達は2年生がいた場所から    50m以上離れた位置にいたため    会話の内容を全くと言っていいほど    聞き取れていなかった。

   72の姿もどうやら見えていな    かったようで結局何も分からずじまいで    終わってしまっていたようだ。

   すると突然、雪鳴の背後から    ただならぬ気配が・・・・。

??「なんのキョリがあるって?

雪鳴「え、だから・・てっ・・・」

雪鳴えぇ!!?

   背後から聞き覚えのある声が    したのでその質問に返事をする雪鳴。

   しかし、その声の正体は美海でも    美香のものでもなかった・・。

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