72はもともとダクトを通り    通常の天井の高さまで訪れていたが    今、右腕を負傷してる筑井と一緒では    監督の部屋の天井裏には出れたとしても、    10m以上も高い通常の天井まで    戻ることは、まず不可能。        美穂達に奪われた道具があれば    元のルートから戻ることも可能だったが    道具もナイフとロープだけ    そうなると出口は… 72「窓から出るか・・。」    そう言って72はナイフを構えた。 筑井「い、いやそれだと他の    部員にバレちゃうかもしれない・・」 72「バレる?あんた何言ってん・・・・。    て、そりゃそうか・・。    とりあえず、近くに人がいたとしても    大丈夫・・。安心しろ」

   するとナイフを窓に向かって投げだす72。    いきなりのことに筑井は動揺していた。    筑井からしてみれば    窓ガラスを割る行為は    周りに何かあったことを知らせることに    なるかもしれないと、考えていたからだ。        筑井はこの建物に人がいるのか    いないのか証明する手立てがなかったため、    その行為だけはやらないようにしていた。    そしてナイフが窓ガラスに直撃する。    すると、窓ガラスは粉々に割れ始めた。    窓ガラスに、特別な加工は    施されていなかったらしい。    そして一人動き出した72。    しかし、筑井がそれを止めた。 筑井「あの・・・・。    まず服着ましょうか・・・」    そういって部屋にあった服を投げ渡した。    彼は服を着た後、天井裏に置いてある、    大量のロープを下ろしてきた。

72「おっし!ロープを使ってここを降りるか。    幸運なことにここには絶対に壊れない    ドアノブもあるしな」    上空50m以上はある高さ・・。    そこからロープを使って降りるとなれば    あるていど縛るものには強度を求めるもの。    運のいいことに、この部屋にはその条件を    満たすものは腐るほどあった。 筑井「これ本当に大丈夫…なの・・・?」 72「それは筑井さんしだい。    下から俺がサポートするから問題ない。    こう見えても、腕は一流だからよ」 72「それに筑井さんには    簡易的な命綱も用意する。    何も起きなければ緩いままだが    筑井さんが落ちそうになると    きつく締まるようにできてるから    落ちる心配は絶対にない」 72「まあ、もしそうなったら    ほどくのに時間かかるし    あんまり、当てにしてほしくないが」

   ゆっくりゆっくり    二人は呼吸を合わせながら地上を目指す。    時間がかかると思われたが    筑井も途中からコツをつかみだし    半分を過ぎたあたりから    急激に下降スピードが加速、    わずか4分程度で地上に到着することができた。    時間はまだ夜明け前、    普通なら目立つ光景なのだろうが    外はまだ薄暗く、それに元々    人通りもない場所、発見される    心配はなさそうであった。 72「よしっ・・!無事到着!    今から安全な場所に連れて行くから    俺についてきてくれ」 筑井「・・・・・・安全な場所・・・?    いったいどこなんですか・・?」    確かにここから離れられれば    身の危険はなくなる。    だが、よく分からぬ相手の誘導を素直に    聞くこともできずにいた。 72「・・・・・・・」

筑井「素性は話せないって言ってましたけど    どこに行くかも話せないんじゃ・・」 筑井「助けてもらってこういうことを言うのも    失礼だと思いますけど    ナナさんについて行くのは    それはそれで、怖いと言うか・・何と言うか・・」    すると筑井の目を見た後    どこか悲し気な表情で    筑井の腕の怪我を見る72。 72「んぅ~・・・。    そいつはちっと困るな・・・」 72「まあ、事情の説明なしに来いって    言うのも無茶な話か・・」 筑井「・・・・・・。    ごめんなさい・・・」    すると突然遠くの方から地響きが・・

   その原因は美穂であった!?    なぜまだ日も出ていないこんな時間に…? 72「ちょ、これはお互い    別れて逃げた方が身のため    って奴じゃあねえか・・!?」 筑井「確かにそうみたい…    とりあえず今は逃げましょう!?」    筑井は真っ直ぐ逃げ始めた。    別れてと言ったので    72は左方向に一心不乱に走り始めた。    美穂は言葉を発するわけでもなく    こちらに向かって黙って走り続けていた。    少なくとも筑井も監督のいない今    捕まってしまえば彼女たちに    何をされるか分らないこの状況    逃げる以外に選択肢がなかった。

   そして美穂は迷うことなく    左方向に曲がる。    そう、72のいる方向だ。        早朝に脱走されてないか    不安になり朝方早くに寮を出ていた。    気分はハムスターに脱走された飼い主。    早く捕まえてゲージに戻さなくては    まさにそんな心境であった。    すぐに、72に追いつき    その小さな小さな体を巨大な手で包み込む。 美穂「あんた、どうやってあの状態から    抜け出したの・・・?」 72「さあね………、て、ぐぎゃああ!!」    手に少し力をこめる美穂    そしてそんな様子を筑井は    物陰から離れて見ていた。

美穂「じゃあ抜け出した方法はこの際    どうでもいいわ」 美穂「筑井先輩を    何のために誘拐しようとしたの?    答えないと…さっきより百倍    きつくしてもいいのよ・・?」    しばらく黙り込む72    さすがに命の危機ともなれば    口を滑らせるんだろうと    美穂は考えていたのだろう    早朝の静けさ、そのおかげで    筑井にも二人の会話は耳に届いていた。 筑井「誘拐・・・・?!    それになんで美穂さんナナのこと    知っているんだ・・・?」        

72「確かに本当の目的は誘拐    それは間違いねえけど…。」        徐々に手に力をこめだす美穂    苦しさが増してるはずだが    72は表情を変えることはなかった。 72「やっぱやめたわ・・・。    てめえらみたいな醜い女共に    収容されてるあの人の姿見て    気分がどうも変わっちまった・・」 72「同類の誼ってやつなのか・・・。    柄にもなく同情しちまった。    だから俺はあの人を解放することにした。    へへっ…てめぇみてぇな無能を    出し抜くのは・・・」    そう言いうと美穂が    急激に力をこめる。    72は一瞬で気を失ってしまった

美穂「調子に乗るな、屑が・・・。    そんな、てきとうな言い訳で    私が許すとでも思ってたの・・?」 美穂「それとも、自分のやってることを    正当化でもしたかったとか・・。    それなら、なおさら許せないけど」 美穂「・・・・・」 美穂「て、話聞いてるわけないか…」 美穂「・・・・・。」 美穂「次はあれに閉じ込めておこうかしら」    そういって彼女は走ってきた道を    戻っていった。

   美穂は筑井が逃げていたのも    間違いなく見ていたはず・・・。    なのに、なぜか捜索する素振りを    微塵も見せなかった。    そのことを疑問に思っていたが、    そんなことより筑井は今、誘拐すると    言っていたナナを助けたいと思っていた。        本来ならありえない話なのだろうが    あの誘拐犯が、ここでの自分の最初の理解者で    あると感じていたからだ。    あの発言が嘘なのか真実なのか・・、    それは分からないが、    信じられる何かが確かにあった・・、    そう思わせる何かが・・・。 筑井「でも、わざわざ逃がしてくれたのに    助けに行けばその行為を無駄にしてしまうかも・・」 筑井「だ、だめだろ、そんなんじゃ…!!    都合のいいように解釈しようとしてるだけじゃないか。    逃げたいだけじゃん、それじゃ‼」

筑井「僕の危険なんて    言ってしまえば彼女たちに”やられる”ぐらい    でもナナさんの場合は………。最悪死ぬ…」    しばらく悩み続ける筑井    感情論では基本的に動かないと決めている    筑井だったが、この時だけは自分の気持ちに    素直になろうと思った。 筑井「やっぱり助けに行こう!    話せば分かってくれないような    人たちじゃないし、なんとか……    なんとか、なるだろ…‼」    しかし逃げ腰で名の通っている筑井    口に出して奮い立たせたつもりだったが    行こうと決心した瞬間体が震えだす。    そんな恐怖に震え上がっている中    ??「せ~んぱい♪」    突如後ろから誰かが声をかけてきた

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