やっと土煙が晴れてきて    監督の姿を見た時衝撃を受けた。    なんと女子相撲部の監督は僕並の小柄だったのだ。 美穂「か、監督ちょっと1年の間で    問題がありましてそれで…」 監督「聞いてない」 美穂「はいっ!」    あれだけの巨人を一括するなんて    なんて人なんだ…。    完全に周りもビビりあがってる。 監督「新入部員いるって聞いてきたんだけど、どこ?」 美穂(やっぱりそれ目的か…) 美穂「は、はい‼今1年美海が掴んでいる生徒です。」

監督「へぇ…」 監督「さっさと降ろしてくれない」    美海「す、すいましぇん!!」    とっさに話をふられ驚いたのか    急に手を離した美海。    そのせいでしりもちをついてしまった。 筑井「いって…」   着地した時にはすでに僕の目の前に   監督が立っていた。 監督「藤崎美理央。よろしく…」   そう言って手を差し伸べられた。

   手を差し伸べられたので    手を伸ばし指先に触れた瞬間衝撃が走る。 筑井「いっでええ!?」    高熱のマグマ、それとも雷    あるいは絶対零度ともいえるような感覚。    言葉では表現できないが    とにかく今まで感じたことのないような衝撃。 藤崎「あわわっ。ごめんなさい!!?    すごく手加減してもやっぱりだめか…」 筑井(手加減…。何言ってんだこの人    一瞬触れただけで何かしたわけでもないのに) 筑井「いろいろ聞きたいことあるんですけど    まず腕冷やしてきていいですか?」 藤崎「えっ…えぇ。わ、私もついていきます    みんなは道場に戻ってなさい。」    小さな返事をし皆道場へ半ば強制的に返される。

   この部活の監督というから    どんな大巨人が出てくるのかと思えば    僕と同じくらいの小柄な女性だし    それに未知の能力まで有している。      小柄な体格であの謎の力、神格化されてる    理由もなんとなく分かった気がする。    結局あの場は監督がきてくれたおかげで    難を逃れることができたものの、    美海の爆弾発言を消化不良のまま終わらせてしまったし    何より美海を裏切ってしまった事実に関して    謝罪も何もせず終わってしまっている。    先延ばしになっているだけで    状況は何も好転はしていない。

藤崎「手は大丈夫そう…ですか?」 筑井「まあなんとか…」    とは言ったもののぱんぱんに膨れ上がってる右手    正直めちゃくちゃ痛い。 筑井「て、いうより何で敬語なんですか?」 藤崎「男の人になれてないというか…    なんていうか…と、とにかくいいじゃないですか!」 筑井「僕は別に構わないですけど    それだと他の部員たちに示しつかないんじゃ」 藤崎「ご、ごめんなさい」 筑井「謝らないで良いですよ    相撲部の監督ともあろう方から謝られると    なんかやりづらいですし…」    それから話をするために    近くの階段まで行き腰を掛ける。

筑井「そのさっき僕に何をしたんですか?    この腫れ方普通じゃないと思うんですけど」 藤崎「それは…ただ握ろうとしただけで」 筑井「握ろうとしたって…    そもそも握られてないですし………    触れただけでこんなことになってるんですよ    超能力だとかトリックとかじゃないと    説明つかないですよ」 藤崎「いや、だから本当にそれだけなんです!    私、人よりちょっと強いんです、力が…」 筑井「えぇ~っと…。    つまり、軽く握ろうとしたというより    握ろうとする初期動作だけでも    人の腕を破壊しかねない力を出してしまう    て、ことですか…?」    今まで3年生の中には    気迫だけで窓ガラスを割るような人もいたし    ありえない話ではないのかもしれない    と、思いそう尋ねた。

藤崎「そういうことにはなります…けど…    人の腕を破壊しかねないって…ひどい…!!」 筑井「ひぃっ!?」 藤崎「そんなに怯えなくても    私だって好きでこんな力身に着けたわけじゃないのに」 筑井「ご、ごめんなさい」 藤崎「筑井くんは謝らなくていいですよ!    悪いのは私ですし    それにそんな調子じゃ後輩たちに示しつきませんよ    男ならもっとどうどうとしないと!」    あんなことされれば誰でも    ”怖気づいて”謝るっての…。 筑井「すみません…」 藤崎「アハハッ!また謝ってる!    筑井くんってかわいいんですね」

筑井「えっと藤崎…監督でしたっけ?    さっき好きで力を身に着けたわけじゃないって    言ってましたけど、どういうことですか?」 藤崎「わからない…」 筑井「えっ?わからない?」 藤崎「この体質、高校生ぐらいのころから    急になりだして病院とかで検査受けようにも    体に針が通らなかったりでまともに    検査できなかったの。」 藤崎「いろいろな方法で原因の究明を    図ってはみたんだけど結局は何もわからず    体に害もなさそうだし今はそのままの状態で    生活送っているんです。」 藤崎「私生活に害はたくさん出てますけど    この力のおかげで相撲の全国大会で    準優勝までいけましたし    いろんな人とも出会えました。    最初はつらかったけど今は    前向きにこの力と向き合えてる…かな」

筑井「藤崎監督ほどの力で    準優勝か…上には上がいるんですね…」    そう僕が言ってから急に黙りだした監督    決勝戦で負けたことを気にしてたのかと    思い少々申し訳ない気持ちに勝手になっていたが    理由はどうやら違っていたようだ。     藤崎「…っ……理央…」 筑井「え?なんですか?」 藤崎「美理央…下の名前で…    呼んでくれませんか?」 筑井「いや………いやいやいや…⁉    色んな意味で無理ですよそれは‼」 藤崎「い、色んな意味ってどういう意味ですか!?」 筑井「いや、その、そこは今はいいじゃないですか」 藤崎「よくないです!!!」

筑井「じゃ、じゃあ敬語やめてください    だったら僕も下の名前で呼びますよ」 藤崎「分りました…じゃなくて    いいわよ、それで呼んでくれるなら…!」 筑井(人見知りかと思ってたけど適応力高いなこの人…。    こんなすぐ変えてくるとは) 筑井「それじゃあ改めてよろしくお願いします。    美理央監督」 藤崎「あ”あああーー!!!全然分かってない!!    監督もつけなくていいの!!    たまには私だって女の子らしく扱われたいんだから!!」    そういうと僕を押し倒すような    形になり上からのぞき込む。 筑井「いやこれが限界!最大の譲歩!!    さすがに監督まで外すのは恥ずかしいと言うか…」

藤崎「ほんとは私だって恥ずかしいけど    勇気振り絞って言ってるんだから!」 藤崎「普段はどこへでかけても男扱い…    いやそれ以上かも男の中の男って    感じでしか見られないし    立場上そういう風に振舞わなきゃいけないのも    分かってるから…」 藤崎「それに男性と話する機会なんて    筑井くんとぐらいしかないわけだし…」 藤崎「千載一遇のタイミングを    取り逃がすような、マネだけは私絶対にしない。    悪いけど昔からその意志だけは変わらないの」    大会準優勝だったり、この部の監督を    やってるだけあって、いざという時は    胆の据わった人なんだな…。

   人見知りだから今までまともに    顔を見てきていなかったんだけど    よく見ると結構可愛らしい顔立ちをしている。    この状態でいるのも僕からしたら耐えられない。 筑井「わ、わかりましたよ!僕が折れますよ」 筑井「でも、二人きりの時だけですからね!    それ以外の場所では監督って呼びますから」 藤崎「ぶぅーー、けちっ!    まあ、いきなり人前だと私も恥ずかしいから    それでいいけど」    あくまで僕にとっては恥ずかしさではなく    他の部員たちがどうなるか    分かったものじゃないから    そういった制約をつけたまでのことではあるが 藤崎「じゃあ今二人っきりだし    一回呼んでほしいなあ

筑井「えっいや、別に今呼ばなくてもいいんじゃ」 藤崎「いくじなし」    こんなかわいい子…?    そういや年齢知らないけど    間違いなく年上の可愛らしい女性にたいして    名を呼ぶだけですごく恥ずかしい…。    そもそもが、あんな巨大な女子生徒たちに    囲まれる生活を送ってきたんだ    普通の女の子がきただけでも好きになりそうなのに    好みの容姿ともなれば頭がおかしくなりそうだ。    もう一度監督の顔を見る。    じっとこっちを見つめている。    最初に男性は慣れてないというのはなんだったのか。     筑井「フゥ―――…。み………」

美海「だめえええええええ!!!!!!」    その巨体をどこに隠していたのか    いきなり美海が僕たちの方へ飛びかかってきた。    ある意味安堵    いや、残念な気持ちがないわけではないが    なぜか今は助けがきたって感じだ。 藤崎「な、道場に行きなさいって言ったでしょ!」 美海「監督だからって先輩に手を出すのは許しませんよ!」

   監督が人に静止を促すかのように右手のひらを    前に出した。    すると30tもの体重がある美海が空中で    ピタッと止まる。    普通じゃありえないのだろうが風圧で止めたのだろう。    監督の力を考えればそう考えるのが合理的だ。 藤崎「さっきまでの会話どこまで聞いてた?」 美海「遠くて会話はほとんど聞こえなかったけど    監督が脅して先輩に無理矢理いやらしいこと    しようとしてたことだけは分かります!」    そんなに間違ってはないが    いろいろ誤解しているぞ⁉ 藤崎(聞かれてないならよかった…)ホッ・・・ 美海「私が彼女なんですから好き勝手は許しません!!」 筑井「誤解だよ美海!別に変な話はしてないから    心配すんなよ!」 藤崎「彼女…?美海…?」

藤崎「ちょっとなんで、こいつは    下の名前で呼んでるのに私の下の名前は    呼んでくれないのよ!!!!」 筑井「いや、ちょ監督、話がややこしくなるんで    今そのことは…」 美海「ややこしくなるってどういうことですか、先輩…!?    それに下の名前って!!!!!!???」    さらに前方から声が聞こえてきた。 美香「ちょっと…美海!!    付き合ってるなんてどうせ嘘なんでしょ    あんた先輩に何か吹き込んで    付き合ってる"設定"にしてもらってるだけのくせに    あんただって脅してるのと一緒じゃない!!」 美海「美香…!!あんたたちも来てたのね    それに嘘…なんかついてないもん!!!」

美香「全員気になってこっちに来てるわよ」   (監督が恐ろしくてずっと前に出れなかったけど…)    するとぞろぞろと    この機を待っていたかの如く    巨女子たちがこちらに歩いてきた。 美穂「監督!突然出てきて失礼だとは思うのですが    一つお願いしたいことがありまして…    お話だけでも聞いていただけないでしょうか?」 藤崎「急に何?(こっちはそれどころじゃないのに…💢)    お願い…?とりあえず聞くだけ聞いてあげるけど」 美穂「見て分かる通り、筑井先輩は    今の女子相撲部のモチベーションを保つ    一つの礎になっています」 美穂「ただ、真意は定かではありませんが    今日この美海が筑井先輩の彼女だと    我々の前で宣言しています」 美穂「ですが、今までのこの二人の関係を    見ていても正直誰も交際してるなんて    思えるような状態ではなく    交際については我々一同信じておりません」

美穂「しかし”今は”それを証明する手立ても    ないので疑惑の念だけが残り    今後相撲部の活動に支障をきたす    可能性があると思われます」 藤崎「で、何が言いたいわけ?」 美穂「この2人の退部を今後認めない    ようにお願いします。    今回、問題起こした責任として    退部するのが彼らの目的かと思われるので」    美穂はおそらく僕らの考えていたことを    なんとなく察していたようだ。    今後部活動に残り続けていれば    何かしらボロが出ると踏んでの提案でもあるだろう。    追い込み…。    明らかに美海を追い込みに来てる…。    だいぶお怒りのようだ。

藤崎「つまり監視するために辞めさせるなってこと?    このまま消えられてもすっきりしないし」 美穂「えぇ…まあそういうことになります」 藤崎「それは別に構わない    少なくとも私は筑井くん…じゃなくて    彼らが恋愛を理由に辞めるなんて絶対に認めない。    相撲部の看板に泥を塗ることになるわ」 藤崎「ええっと…、ちなみに彼はまだ男子寮?」 美穂「え、まあそうですがそれが何か?」 藤崎「じゃあ今日から女子寮で生活してもらう」 筑井「………???」 筑井「はっ…?」

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