全文表示 巨大女子相撲部

   台を探すのを口実に抜け出して    きたが、もちろん探す気などない。    ただ逃げ出しただけだ。

   実際にやるとなればどうなるか    分かったものじゃないからな‥‥。

   だけど罪悪感がないわけじゃない。    彼女は僕のことを好きでいてくれてる    みたいだし、どれだけ失礼なことを    しているか自覚はある‥。

   それでも命の方が大事、    仕方ない。そう仕方ないんだ‥!

筑井「さて、これからどうするか・・」

   抜け出したはいいがこれから    どうするかは全くのノープラン。

   どう行動するのが正解かは    分からないが、とにかく今は    誰とも会いたくはない‥‥。

   憂鬱な気分のまましばらく歩くと    3つの分かれ道に筑井は辿り着く。    分岐路に着いた彼は一度足を止める。

   女子校内を歩くのは今回が    初めてだったので彼は道が    分からないでいたようだ。

筑井相撲部員かのじょたち用に道も大きく作られているし    もし、進む道を間違えてしまえば時間も    体力も大幅にロスすることになる‥)

筑井(時間がかかれば女子相撲部員達と    接触する可能性が高くなるし体力が    尽きれば仮に接触した場合    逃げ切れる可能性が減ってしまう。    ちょっと考えないとだな‥)

   確実に逃げる為に彼はしばらく    その場で頭を回転させていた。

   そんな中、急に地響きが起こる‥!?    だが、なぜかそれがどこから来る    のかが分からない‥‥。今まで感じた    女子相撲部員が起こすものとは違う、    かなり異質な揺れ具合。

美香「先輩を発見したわ!!    みんな急いで来て!!」

   まず、聞こえてきたのは1年生の    美香の声。筑井は見つかったことに    恐怖心を抱いていたが、それと    同時にある疑問を浮かべていた‥。

   本来、彼女達が向かって来ていれば    揺れている方角はすぐ分かるのだが    今回は全体的に揺れていたのだ。

   通常ならばそんなことはありえないと、    疑問を浮かべてはいたが、そんな    ことを今、気にしている暇はない‥。

   ここで捕まると美海のことを聞かれ、    ついでに何されるかも分からない以上、    是が非でも逃げきらなければならない。

   1年生達は筑井の正面から来ていたので    左右どちらかに逃げるしか選択肢の    無い状況。慎重に進みたかったところ    だが、止むを得ず左の道を行くことに。

   すると先程までの揺れが更に激しさを    増す。1年生だけではここまでひどく    ならないはず‥。 だとすれば‥。

美穂「先輩発見しましたよッ!!    何してるんですかッ!!」

   前方50m付近から全力疾走で    こちらに向かってくる    美穂率いる2年生達の姿が‥!?

   あまりの迫力に彼は気が遠のき    そうになっていた。

筑井「こ、これには深い訳が・・・⁉    て、うわあぁッ・・!!!!

   後ろを振り返ると後ろからも    2年生達の包囲網‥!3つの    分かれ道は1年と2年の女子相撲部員    約200名によって完全封鎖される。

   全方位から来ていたから全体的に揺れて    いたことを彼はこの時理解した・・。

   ということは消去法で    元来た道を戻るほかない‥‥。    そう、美海のいる方向に。

   しかしこの人数相手に    逃げられるわけがない‥。

   あまりに絶望的な状況に彼は    諦めの境地に達していた‥。

美穂「先輩!!お願いを無視してあなたは    何をやっているんですか!!    理由によっては容赦しませんよ!!」

二崎「ここまで大きな騒ぎを起こしたん    ですから、超重量特訓は避けられ    ないと思っててください」

美香「もしかして先輩、今一人でいるのは    美海を庇うためですか!だとしたら    先輩も美海と同罪ですよ!!」

美香(明らかにあの流れはできすぎだった。    何かの筋書きがあったとしか思えない。    でもそんなこと美海一人じゃできるわけ    ないし、先輩もグルの可能性が高い!)

   彼女達が集まったせいかその場は    熱気に満ち溢れ始める。気温が    プラス30度加算されまさに灼熱地獄。

   そして女子の臭いを数千倍にした    ような強烈なフェロモンまで辺りを    埋め尽くしている状況‥。    正気を保つことなどとてもできない。

   生き残ることだけを必死に考えたが    この状況では何が正解か何が間違いか    そういった判断は何もできない。

   考えられていたことがあるとすれば    死にたくない、ただそれだけである。

   巨大な女生徒達を前に恐怖した    彼の体は勝手に後退し始めていた。

   熊に出会った時の対処法として    目を合わせながら後ずさりを    するというものがあるがそれと全く    同じ動きになっているだろう。

   本当の窮地に陥った時人は正しい行動を    自然と判断できるのかもしれない。        背を向けて明かな逃げの態勢を    とっていればおそらく彼女達は    捕まえに来ているはず‥。目を合わせ    ているからこそまだ、動かないでいた。

   このままいけばと心のどこかで考えて    いた彼は後退し続ける‥。しかし    世の中そんなに甘いものではない‥。

   背中に柔らかな何かが当たる。    後ろを振り向いてみると布の壁が…。    これはまさか‥‥。

美海「先輩‥。これどういう状況ですか?」

   動くなと言っていたがこれだけの    騒ぎ、気になって来るのは当然。

   そして、質問をしたにもかかわらず    美海はその返事を待つこともなく瞬く    間に彼を人形のように抱きかかえる。    これで完全に逃げられない状態に‥。

   その掴む力も普段の比にならない程強く    美海の怒りを筑井は肌で感じていた。

筑井(美海が馬鹿ではないことを    これまでの会話で理解している)

筑井(おそらく僕が逃げ出そうとしていたのも    察しているだろうし、今の彼女が    味方になってくれるとは思えない・・。    むしろ怒りにまかせて僕をさらに    追い込む可能性は十分にあるよな‥)

   筑井が絶望に包まれ頭を悩ませていると    美香が美海に怒声を浴びせる。

美香「美海!あんたどういうつもりなのよ!    先輩を勝手に連れ出して。出来の    いい言い訳はあるんでしょうね?」

美穂「何か訳ありのようだけど    ちゃんと話してくれない美海」

二崎「ちょっと美穂‥。さっさと道場に    連れて行かないと監督来ちゃうわよ」

美穂「この問題を消化させずに稽古に    入る方が1年達にとって問題よ。    責任は私が持つから」

二崎「美穂・・・・・」

美海「・・・・・・・・・」

   ここで助言をする勇気を持ち合わせて    いなかった筑井は美海が変な発言を    しないよう願うことしかできずにいた。

美海「私・・・・・」

美海「私達・・、実は・・    付き合ってるんです!!」

   これだけの人数がいるのに    一瞬、完全な静寂に包まれる。

一同えぇぇッ・・!?!?」

   全員がどよめき立つ。その    音圧は鼓膜が破れそうな程に    とてつもないものであった。

筑井(つか、何を言ってるんだ美海は!?    完全に想定外の発言だ・・・・。    なんかもう意識が・・・・・)

美香「じゃあ、やっぱり先輩も抜け    出す時グルだったってことね!」

美海「そうよ!二人だけの時間を作る為に    " 先輩が "考えた作戦だったのよ!!    私も先輩のこと好きだから言う    ことを聞いたそれだけよ!!」

筑井(何というでたらめ。置いて行かれた    恨みを晴らす為に僕をとことん    追い込むつもりだ‥)

美穂「美海‥‥。仮にも今の女子相撲部は    先輩のおかげでモチベーションを    保ててるようなものなの」

美穂「その先輩を独り占めにすると言うことが    どういうことだか分かっているの?」

   たしかにこの発言は美海にとって    プラスになるはずがない。混乱すると    考え無しになってしまうのか・・?

美海「大会で好成績を残せば    先輩と一緒に" 寝れる "権利を得ら    れることは私も十分承知の上です!」

美海「でも、普通に恋愛することの    何が悪いんですか!」

筑井(なんだよ一緒に寝れる権利って!?    そんなもの初耳だぞ⁉ )

筑井「ちょっと待って、僕達は‥‥!」

   筑井が交際宣言を否定しようと    した瞬間、美海の巨大な手が    彼の上半身を覆いつくす。

二崎「先輩何か言いかけたみたいだけど?」

美海「き、気のせいじゃないですか‥!」

美海「先輩今の聞いたでしょ・・・?    3年生が帰ってくれば間違いなく    集団に襲われることになります 」

美海「それを回避するには私と付き合ってる    ことにしてた方がいいと思いますけど、    先輩返事をお願いします!!」

   完全に美海かのじょの計画の範疇はんちゅうを    超えているだろうがこれは    かなり気の利いたアドリブ。

   3年生の大将との因縁もあった為、    筑井は何度も首を縦に振った。

美海「と、とにかく私と先輩は    付き合ってるので先輩に手を    出すことは絶対に許しません!!」

   美海が周りを威嚇するように    大声を出して宣言する。

   すると、2年生の副部長二崎が    こちらに歩み寄り筑井を覆っていた    美海の巨大な手を更に巨大な手で    どかし彼と顔を向き合わせた。

二崎「本当に美海と付き合って    いるんですか?筑井先輩‥‥?」

   明らかに疑いの眼差し・・。    あまりの鋭さに目を逸らしたい・・・。    が、ここはグッとこらえる。

筑井「そ、そうだよ!    付き合って何が悪い!!」

二崎「ふぅ~ん。そうなんですか・・・・」

   若干微笑んだ後、彼女は巨体を    起こし中央まで移動した。何をするのか    分からない筑井と美海は恐怖しながら    その様子をジッと見つめるしかない。

二崎「この二人は付き合ってないと思うわ。    先輩、私が顔を近づけた時目線を一切    逸らさなかったもの」

二崎「あんな状態で全く    反応がない方が却って嘘っぽさが    際立ってしまうのよね」

二崎「一つアドバイスしておきますけど    なにか必死に隠したい物がある人程    強気な態度とりたがるものですよ先輩」

   それから周りも・・・

   「そうよ!付き合ってるなんて嘘よ!」    「美海ごときが付き合えるわけない」

   など罵声が飛び交う。

   この二崎という人も抜け目がない。    全員の前でそれらしい理由をつけて    一気に疑いの念を持たせた。

   おそらく理由は何でもいいのだろうが    疑わせることに意義がある。    雰囲気作りを行うのが彼女の狙いだろう。

   最初美海が突拍子もないことを    言いそのインパクトだけが印象として    深く刻み込まれ”疑う”という    余地をなくさせていたが二崎の発言に    より皆が冷静さを取り戻していた。

??「・・・」

   そんな緊迫した空気の中、それを一変    させる程の凄まじく恐ろしい気配が    上空を覆った・・・。

   その気配はヒートアップしていた    女子相撲部員達全員を凍り付かせた。    そして全員が上空を見上げる・・・。

??「ハァ‥‥」

   空からものすごい勢いで    何かが落下してきた。

   その衝撃は凄まじく着地と共に    爆発し、その後辺り一帯は    土煙で何も見えない状態となる。

   ただその時、筑井以外の人間は    その正体が何なのかを理解していた‥。

美穂「あ・・・・、やば・・・・?!」

二崎「かッ・・・監督・・・・」

NEXT