竹長育枝の事情 11
「なぁ光輝、いいかげん野球部入ってくんねぇか?絶対にお前ならすぐにエースで四番になれるって!」
「いや、サッカー部はどうだ?この前の試合の授業、お前のワンマンショーだったじゃん、その才能生かそうぜ!?」
「いやいや、光輝はバスケ部だよな!だって中二でその身長は全国でも絶対通用するし、お前の運動神経なら絶対天下取れるって!!」
「いやいやいや、それを言うならバレー部だって____」
光輝の名前の由来は、字の如く、光り輝くような人になってほしいという親の願いからなのであるが、育枝同様に彼の両親の願いも天に届いたのか、勉学、スポーツ、芸術、ありとあらゆる方面で彼はトップクラスの成績を残しているのである。ルックスも抜群であることも相まって、中学に入学してからというもの、すぐに学校のアイドルそしてプリンス的な存在になっていたのである。
「えぇと……誘ってもらえるのはすごく嬉しいんだけど、何度も言ってるように、ぼく部活してる時間無いんだ、ゴメン」
よくこうして体育会系(もちろん文化系も)の部活の勧誘をされる。二年生になっても未だに絶えない。しかし、彼はこうして全ての勧誘を断っているのだ。
「悪いけど、人を待たせてるんだ、それじゃ!」
「「「ぁ、おい待てよ!!」」」
光輝はカバンを持って全速力で廊下を走っていく。逃がすまいと各々の部の輩は彼を負うのだが、陸上部の短距離現エースでも彼を捉えることはできなかった。
完全に追手を撒いて光輝は軽く息を整えながら校門へと向かう。
「やあ育枝ちゃん、待たせちゃった?」
案の定、待ち人というのは育枝なのである。運動場の隅に校門はあるのだが、小学校とは違って遊具などはない平地から眺めると、樹のような、細く長いセーラー服姿の少女が建っている、もとい立っている異様な光景になっている。育枝の姿は基本的にどこにいても確認することができる。
「うん、待たされちゃいましたよ。ね、翔子ちゃん?」
「ぁ、翔子さんもいたんだ?」
「んふふ、ゴメンねぇ、今日はお邪魔しちゃうわよ?」
「全然邪魔なんかじゃないよ。て言うか、二日に一度は一緒に帰ってるじゃない」
「そうよ翔子ちゃん。さ、帰ろ?」
三人揃って帰路につく。
「相変わらず光輝王子はあっちこっちから引っ張りだこですなぁ。育枝ちゃん、嫉妬とかしてますの?」
翔子は陽気な、そして軽いノリをした少女だった。
「嫉妬?なんで男子に嫉妬しなきゃいけないの?」
「じゃあ女子だったら嫉妬しちゃう?」
「そんなにわたしは子供じゃあありません」
少女たちの話に苦笑する光輝。
「ふぅ~ん……じゃあ、光輝王子」
「ぇ、なに…って、翔子さん!?」
翔子はそう言うと、含みのある笑みを浮かべ、光輝の腕に抱きついた。それも強めに。そうなると、学年でもトップクラスに君臨する彼女の胸が光輝の細くもたくましい腕を包むようにつぶれる。ちなみに“トップクラス”と言うのは、胸囲の絶対値の数値ではなく、ふくよかな意味での上位という意味である。ただ単に大きさとなると(中学二年進級時点では)平坦と形容しても良いほどの形状だが、その身長ゆえの相対的に大きな胸囲が圧倒的にナンバーワンとなってしまうからだ。
「ちょ、ちょっと、翔子さん!!こんな往来の真ん中で!」
「じゃあ物陰なら良いの?」
「そういう意味じゃなくて!」
パニックになりながら、引き離そうとしながら、なんと女性の胸というのは柔らかくて気持ち良いものなのか…と痛感する光輝だった。ただ、彼の理性はなかなかに強く、やましい気持ちに流されずモラルが従うのが、普通の男子とは違う彼のすごいところである。しかし、なんと不思議かな、懸命に抵抗する光輝の努力も空しく胸(翔子)は離れない。男と女性の胸には引力のようなものが働き合っているのであろうか。
「ほぅほぅ、この翔子さんの胸に魅力を感じないのですかな?女として悲しくなってくるよ」
「変なこと言ってないで!てか、助けて育枝ちゃ___!!」
___ジーーーーーーーーーーーーーー。
それは紫外線のように上空から、降り注ぐそれ。例えではなく、本当に穴が開きそうなほどの視線。その瞳を形容するなら空虚。感情などない。あまりの衝撃に彼女は呆然と機械的に二人を見下ろすことしかできていなかった。
果たして、助けを求めた光輝が目にしたのは放心状態で二人を見つめる育枝だった。
「育枝、ちゃん…どうしたの?」
何も悪いことをしていないはずなのになぜか罪深く感じてしまう光輝。
「おやおや、育枝ちゃんもやっぱり女なのねぇ」
相変わらずな翔子。
「光輝、おにい、ちゃん…」
この空気を断ち切ることはできないようにも光輝は感じた。近年で最大級に参っている。
_____プチップチプチッ。
と、永遠のような不穏な雰囲気に聞きなれない音が鳴る。
「あ、あれ、わたしどうしちゃったんだろ」
光輝にはそれが福音になったようで、育枝は正気に戻った。隙を見て光輝は翔子のしがらみから抜け出すことに成功した。
「さ、二人とも帰ろ」
断定口調だった。
そして恐らく無意識の内に育枝は光輝の手を引いて歩き出していた。
一言で言い表すならば、それは“嫉妬”であった。育枝にはその感情が何なのかわからない。
「光輝王子、将来苦労するねぇ。というか、この翔子さんの入る余地は無さ気かなぁ」
「ん、何か言った、翔子さん?」
「いんや、何も」
「光輝お兄ちゃん、早く早く」
翔子の言葉は夕陽に照らされることはなかった。三人はなんとかいつも通りを取戻し、帰路に再びついたのである。
ふと、育枝は何気なくつぶやく。
「………あれ?なんだか胸とお尻がキツい?」
そして、帰ってみると、育枝にとってコンプレックスのスポーツブラと、お気に入りの白いパンティは引き伸ばされたかのように一部がほつれていたのだった。
育枝:中学校二年 310cm B.?cm W.103cm H.?cm股下168cm 足 57cm
光輝:中学校二年 180cm