竹長育枝の事情 10
「あぁ~、気持ち良い。本当に大浴場だなぁ」
卒業祝いのパーティーの後、勧められるままに育枝宅の風呂に光輝は入っていた。大浴場と表現する方が適切であるほどに広いものだった。育枝を思って少し水深が深くしてあるのだが、それでも旅館の浴場としても通るほどだ。
「まさに泳げる、よね」
そう言って光輝は全身の力を抜いて湯船に浮かんだ。大事なモノは腰にタオルを巻いてしっかりと隠している。湯船にタオルを浸けるのは行儀が悪いとわかってはいたうえで、なぜそうしていたかと言えば、
「光輝お兄ちゃ~ん♪」
もちろん育枝がこういう状況で自分の言いつけに従うはずはないと見越していたからだ。
「…やっぱり来たね、育枝ちゃん」
「うん、一緒にお風呂なんて、めったにない機会だもん」
湯に浮かびながら少々呆れる光輝に対し、鼻歌まじりで浴室へ堂々と入ってくる育枝。天井は育枝の頭ですら1m以上の余裕を残す高さにある。
「って、タオルくらい着けようよ、育枝ちゃん」
まさかの育枝の全裸姿に驚いた。胸や大事なトコロすら隠さずにタオルを手に持ったまま彼女は入って来たのだった。シャワーで全身を軽く洗う。
「だって、いつもタオル着けないもん」
「そりゃあ、一人なら着ける必要もないけどさ」
「それよりお兄ちゃん、お背中お流ししま~すよ♪」
「いや、別にいいよ、一人で洗えるし」
「え~、二年前は洗いっこしたじゃない」
「ぼくたちもう中学生になるって言わなかったっけ?」
「たったの3歳違うだけじゃない、変わんないよ」
恐らくその三年間にこの世で一番変わっているのは彼女なのである。
「殿方はこういう女性の申し出を断るものじゃないってお母さんも言ってたよ?ほぉら」
何を娘に教えているのだ、と光輝は育枝の母に心中でツッコむ。育枝は湯船に侵入すると、強引に光輝の手を取り、促した。彼の手を全て包み込んでしまうほど彼女の手は大きかった。
「はいはい、わかりました、お姫様」
若干の皮肉と苦笑を込めて、光輝はそれに従った。
「さ、ここに座って」
育枝は自身の全身を映せるほどの大鏡の前にイスを置いて、それに光輝は座る。鏡越しに育枝の肢体が見えた。
中学生に向けて少し髪を伸ばしている。前髪などの姫カットと、まだ幼さが残りながらも大人へと変わろうとする片鱗を垣間見せる顔の組み合わせはやはり彼女をよりかわいいものとしている。体に圧倒されてしまうが、彼女に好意を持つ男子も少なくないことを光輝は知っていた。顔から下に降りると、顔ほどの長さがある首筋に角ばらない肩。そして、未だ平らな胸。
「…む、光輝お兄ちゃん、私のおっぱい見てるの?」
「え、あぁ、ごめん」
育枝は胸の前で手を交差させて隠す。そこに恥じらいがあるなら育枝仕様の大きなタオルで胸からお尻にかけてタオルを巻いたら良いのに、と光輝はまたも言葉にせずツッコむ。
「どうせ私は小さいですよ~だ」
ジト目で鏡越しに光輝を睨む。
「別にそんなこと思ってないよ」
「嘘。クラスのみんな、ちょっとふっくらしてるブラつけてるのに私はスポーツブラでもキツくないんだもん…。翔子ちゃんはこの前Cカップって言ってたし…」
翔子ちゃんとは育枝と最も仲の良い女子の友達である。彼女も育枝とは違った方面で発育は良い方だった。確かに育枝は、身長の伸びは凄まじくても女性らしい体の部位、胸やお尻などは実ると表現するにはほど遠いものだった。
「来年くらいには大きくなってくるんじゃないの?」
「……お兄ちゃん、もう私たち中学生なんだよ…?」
「そこは気にするんだね…」
苦笑を漏らす。後の話になるが、この時の光輝の予言は見事的中することにはなる。
もう一度育枝の体に視線を戻す(と言うより、嫌でも目に入る)。光輝のものより大きくはあるが高さは同じのイスから急角度を成して伸びる長い脚は、膝で折れているにも関わらず、その膝の位置は光輝の肩の高さと変わらない。それから変な空気のまま、光輝は育枝のしなやかな脚に左右を囲まれ、洗車用の大きなスポンジを持つ大きな手でゴシゴシと、しかし丁寧に体を洗ってもらったのだった。もちろん、自分の前半身は死守して。
二人の間柄は相変わらずで、彼らは中学校へ入学した。中学へは同じ小学校出身の生徒が大半を占めたため、教師陣と他学校出身生徒を除いて、育枝は簡単に受け入れられ、有名人となった。
育枝:中学校一年 310cm B.147cm W.103cm H.150cm 股下168cm 足 57cm
光輝:中学校一年 175cm