竹長育枝の事情 04
「お湯加減はどお、光輝お兄ちゃん?」
「うん、ちょうど良いよ」
「良かった。……ほんとにゴメンね、光輝お兄ちゃん…」
「気にしなくて良いよ。こんな広いお風呂に入れたと思えば、むしろ得した気分だよ」
浴室の扉越しに会話をする。湯船に体を思い切り伸ばしているにも関わらず、つま先は湯船の反対側の壁に当たらない。およそ60cmも余裕がある。光輝は改めて育枝の大きさを実感した。
「光輝お兄ちゃ~ん、わたしも入るね~」
扉が開け放たれた音がした方向を見ると、裸の育枝の姿があった。
「あ、ぁ……うん…」
光輝は呆けていた。いや呆けていたと言うより、見惚れていた。育枝の美しい肢体に。
まずその身長206cmという存在感に圧倒される。かわいい小顔。体は大きくなっても顔だけは変わっていないのではないかと思えるほど小さい。そこから下にある長い首筋。高身長のための広い肩幅。しかし男のようであるとは決してない。むしろ女性としての艶やかさをも感じるようだった。そこから伸びる細く長い腕。大きな手は光輝と二関節も違う。胸はさすがにまだ小学四年生。膨らみを期待させるつぼみを思わせた。細い胴でもくびれは確認できる。そこから滑らかなカーブを描き、相対的に見ればそうでなくとも、絶対的に見れば大きなお尻。しかし1mに届こうかという長く細い脚にはこのくらいの大きさではないと釣り合わないとも思えた。最後にその大きな体を支える足。最近聞いた話では、35cmあるという。
「どうしたの、光輝お兄ちゃん?」
「…えっ、いや何でもないよ」
「ふ~ん、変なの」
そのままシャワーで体を軽く洗い、光輝の下に潜るように湯船につかる。体を重ねている状態である。
「こうしてみると、光輝お兄ちゃんって、ちっちゃくって、かわいい」
「そうかなぁ?」
「そうだよ、でもちょっと筋肉もついてて、かっこいいとも思う」
「ぼくは、育枝ちゃんの体の方がかっこいいし、なによりきれいだと思うなぁ」
「えっ、きれい!?」
「うん。さっきぼくが固まってたのは、育枝ちゃんに見惚れてたからだと思う」
「ほ、ほんとに!?初めて言われちゃった……。すっごく嬉しい!光輝お兄ちゃん、大好き!!」
そう言って育枝は光輝を抱きしめる。この頃から少し性に対してのモラルが芽生えてきた光輝は、この抱擁を嬉しいようで恥ずかしいような複雑な気持ちで受け止めた。
「そう言えば、気になってたんだけど、お父さんにも似たようなのがあるよね、光輝お兄ちゃんの股の間にあるその角みたいなのって、何なの?」
「えっ、あぁいや、これは…」
まだ、純粋に育枝が光輝と付き合えていた時だった。
2mを超えても、育枝の成長は止まらなかった。むしろまだまだ序の口、とでも言わんばかりに今までと同じペースで成長していった。
育枝:小学校五年 258cm
光輝:小学校五年 158cm
この頃から育枝は光輝との接触を減らすようになっていた。育枝は光輝に引け目を感じていたからだ。育枝自身は友達に聞いたのだが、光輝はとてもモテるのだった。育枝ほどではないにしろ、小学校五年生にしては背は高く、成績優秀、スポーツ万能、優しく世話好き、そして育枝にも釣り合うほど顔も整っている。モテる要素はいくらでもあった。常に側にいて意識していなかった幼馴染の側面に、育枝は戸惑ったのだった。
教室へは片膝を着くくらいしゃがまなければ入れない。しかも、この小学校の天井は低めに作られているため、育枝が軽くジャンプすると天井にぶつかってしまうのだ。両手を伸ばしてノビをしても天井にパンチしてしまう有様だ。最近その勢いで電灯を割ってしまったのだった。その他にも、体育の時間にするバレーボールでは、小学生のバレーネットの高さの基準は200cmのため、育枝はネットから58cmも飛びぬけてしまう。ネットがちょうど胸からお腹にかけての位置にきてしまう。またバスケットゴールも、小学生基準だと260cmのため、育枝の身長とほぼ変わらないのだ。よって軽く挙手でもしてしまえばダンクシュートできてしまうわけだ。運動自体は苦手なためもあるが、まず身長とルールの基準といったところから育枝は体育の授業はよく見学している。そういったことや成長し過ぎた身長からも、育枝の性格はだんだんと内気になっていった。