成長記録 4

 中学校に入学して一週間ぐらいは、休み時間になると私を見に大勢の人が集まってました。
2年生や3年生も珍獣を見に来るかのように集まってきてました。
座っているとあまり大きさが分からないらしく、立ってみろとか言われて恥ずかしくて泣きそうになりながら
立ち尽くしていたのでした。
そして、予想はしていたのですがバレー部とバスケ部の勧誘がありました。
私はスポーツが大の苦手なので両方共お断りしていたのですが、断っても何度もきていました。
舞衣も一緒に誘われていたのですが、彼女もスポーツは苦手なので一緒に断ってました。
私の運動音痴は並外れていて、50m走は15秒ぐらいかかってましたし、体育のバレーでは私にアタックを
しろとトスを上げてくれるのですが、ことごとく空振りをしていました。
ただ、身長のおかげでブロックはまあまあできましたが、頑張ってジャンプしたら顔でブロックなんてこともありました。
舞衣は私よりは多少マシでしたが、二人とも似たようなものでした。

入学当初は色々と嫌なこともありましたが、学校に慣れてくると普通に生活できるようにはなっていました。
夏休み直前の7月、私と舞衣は身長を測ってみることにしました。
「舞衣ちゃんすっごい伸びてたらいいのに~私に追いつくぐらい」
「え~そんなに伸びなくていいよ。まだまだ百合香ちゃんを見上げてるからね。そんなに変わらないよ。」
「そうかな。でも少しは差が縮まった気がするんだけど。」
「じゃあまずは百合香ちゃんから測ってみよっか。」
もちろん私は学校の身長計では少し足りないので、壁に立って舞衣に巻き尺で測ってもらいました。
「え~っと。2m・・・5cmかな。」
「2m5cm?うわ~まだ伸びてるんだ。」
といいましたが、心のなかでは1cmしか伸びてなかったことにホッとしました。
もう伸びは終わりそうだなって思っていました。
「次は舞衣ちゃんの番だね。まだ舞衣ちゃんは普通に身長計で測れていいなあ。」
「多分ほとんど伸びてないと思うけどね・・・」
「えっと、188cmかな。」
「嘘でしょ?」
「本当だよ。じゃあ舞衣ちゃんも確認してみてよぉ。」
「本当だ・・・ヤバイ。4月から3ヶ月くらいしか経ってないのに6cmも伸びてる。」
「この調子でいったら、来年には身長が逆転するんじゃないの~」
「ちょっと~やめてよ。冗談じゃないって。そんなに大きくなりたくない!」
「そんな言い方ちょっと傷つくなあ。まだ舞衣ちゃんのほうが小さいんだからいいじゃない・・・」
「ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないんだ。ただこのまま伸び続けたらどうなっちゃうのかなって
心配になっちゃったんだ。服とか靴とかも心配だし。」
「私と同じくらいになれば二人で交換したりできるからいいんじゃない?」
「それもいいかもね。悩んだってどうなるわけでもないし。」
「そうだよ。なるようにしかならないよ。」
と言いながら私は心のなかで、私を抜いて欲しいなあと思っていました。
そんなことを思っていたからバチがあたったのでしょうか。

夏休みは田舎のおじいさんのところで体を鍛えるということになっていたので、舞衣とも全然会いませんでした。
身長が伸びるにつれて筋肉が足りないのか、運動能力も落ちてきてましたしガリガリの体だったのでちょうど昔空手道場を
やっていたおじいさんに鍛えてもらおうと思ったのです。
その甲斐あってか夏休みが終わる頃には多少筋肉もついて体が軽くなったような気がしていました。
もちろん体重は増えていたのでしょうけれども。
夏休みが終わって、久しぶりに中学校へと登校する日に制服へと腕を通すと違和感を感じました。
なんか制服が小さくなったような気がするのです。
お母さんがまだ伸びるかもしれないからと結構大きめにつくっていたはずなのですが。
でもその時は夏休み中に筋肉もついたし、胸も大きくなったからかなと思っていました。
ところが登校しようと靴を履いたときこれは本格的にヤバいかもと思いました。
大きめにつくってあった33cmの靴がきついのです。
夏休み中はサンダルばかり履いていたので気付かなかったのです。
ともあれ、もう学校へと行かなければならない時間だったので無理やり履いて学校へと急ぎました。
学校へついて内履きを履こうとしましたが、入りませんでした。
これは本格的にヤバイことになっているなと思っていると、後ろから声がかかりました。
「おはよ~百合香ちゃん。久しぶりだね!元気にしてた?」
舞衣が声をかけてきたのです。
靴を履こうと屈んでいた私は、仕方なく踵を踏んで靴を履き舞衣のほうへと向き直りながら立ち上がりました。
「おはよ!げんきだよ~舞衣ちゃんはどうだったの?」
と声をかけて舞衣をみると、なんだか舞衣が小さくなったような気がするのです。
これは確実に私の身長が伸びている。
しかも1cm,2cmとかそんなもんじゃないと確信しました。
「私も元気だったよ!百合香ちゃんと会えなくて寂しかったけどね!あれっ?なんか百合香ちゃん・・・」
「ううん。なにも変わってないよ!身長伸びたりしてないと思うよ!」
と訳の分からない言葉を口走っていました。
「私まだ何も言ってないけど・・・でもやっぱり身長伸びてるよね?測ってないの?」
「うん・・・やっぱりそう思う?なんか今日になってからおかしいなって思ったの。夏休み中はダボッとしたTシャツに
サンダルとかそんな格好ばかりだったし。」
「そうなんだ。でもとりあえず、測ってみる?」
「う~ん・・・そうだね。測ってみてくれる?」
そして舞衣と共に保健室へと行きました。
先に舞衣から測ってみることにしました。
「えっと、舞衣ちゃんは・・・188cmかな。まえ測った時とほとんど変わらないかな。」
「よかった~変わってなくて。じゃあ次は百合香ちゃんだね。」
「うん・・・」
私は暗い気持ちで壁際に立ちました。
「これは・・・百合香ちゃん驚かないでね。」
「えっ?そんなに伸びてるの?何cmなの?」
「うん。2m17cmあるんだけど・・・」
その言葉を聞いた私は目の前が真っ暗になって何も言葉を発することが出来ませんでした。
夏休みの1ヶ月ちょっとで11cmも伸びてしまっていたのです。
もちろんこれは私の中でも最高の伸び記録でした。
夏休み前まではもう伸びが止まったと喜んでいたのに・・・
舞衣との身長差も17cmまで縮まっていたのに、29cmまで広がっていたのです。
前にお医者さんに言われていたとおり、成長期が始まったのでした。