女系巨人家族 01

僕は、身長が135センチしかない。何故か、小学5年生のときに、成長が止まってしまい、その後、25歳の現在まで、身長は1ミリも伸びていない。

無い物ねだりなのか、僕は、小学生時代から、背の高い女の子が好きだった。自分が、超チビであることも顧みず、雲突くほどの身の丈の女の子に、果敢にアタックを繰り返してきた。しかし、当然のことながら、まったく相手にされない日々が続いていた。

最近の武勇伝としては、職場の後輩に、身長185センチの中田亜美がいたので、何度かアタックしたのだが、

「視界に入らないから、ご免なさい。」

と言われて、あえなく撃沈した。

ところが、今年の新人に、なんと、身長が195センチの松尾香奈子がいたのだ。しかも、彼女は10センチのハイヒールを履いて出勤してくる。そのため、身の丈205センチになった香奈子は、深々と頭を下げてオフィスの出入口を通過しなければならない。長身女性フェチの僕は、香奈子のそのドア枠通過の仕草に、完全にノックアウトされた。

ミクロ系の同僚OLたちは、香奈子のお腹までしかない。彼女たちは、皆、香奈子のスイカ大の爆乳を見上げながら、チクチクと香奈子の乙女心を傷付けた。

「何を食べて育つと、そんなに大きくなるの?」
「実家が酪農家なので、牛乳を水代わりに飲んで育ちました。」

香奈子は、長く伸びた背筋と同じように、まっすぐな性格の女性だった。

「それで、オッパイが牛よりも大きいのね。」
「はい、高校生のときに、ウチのホルスタインよりもデカパイになりました!」

いや、妙齢の女性としては、ちょっと素直過ぎるところがあった。

一方、185センチの亜美は長身コンプレックスなのか、いつもペッタンコな靴を履いているので、自分よりも20センチも背が高い香奈子を見上げなければならなかった。

「身長が195センチもあるのに、何故、ハイヒールを履くの?」

亜美は完全に当惑していた。

「だって、脚が長く見えた方が良いと思って。」

香奈子は、自分が超長身であることを誇りに思っているようだった。しかし、香奈子がハイヒールを履く理由は、それだけではなかったようだ。

「あなたの脚は、ただでさえ、竹馬みたいに長いじゃないの!それ以上、長く見せる必要があるの?」

亜美が続けて聞いた。

「いつも家で、母親にチビってからかわれるものですから。」

香奈子が意外な返事を口にした。

「あ、あなたがチビ?意味がわからないわ。あなたのお母さんって、ガリバーみたいな巨人なの?」

亜美は、香奈子の言葉の意味がわからず困惑していたが、香奈子は微笑んだまま何も答えなかった。

例によって、僕は早速、香奈子に果敢にアプローチした。しかし、これがなんと、一発でOKだったのだ。これには僕も正直驚いた。彼女をデートに誘おうと、真上を見上げて懇願する70センチも背が低い僕を、香奈子は優しく微笑みながら遙かに見下ろし、

「私みたいな大女でもよろしければ、よろしくお願いします。」

と身を屈めて小声で言ってくれた。

次の日曜日の初デートでは、映画を観た後に、高層ビル最上階のレストランに行った。恥ずかしながら、僕は椅子によじ登らなければならなかったが、彼女は逆に、あまりにも長過ぎる脚を、窮屈そうに折り曲げて椅子の下にしまい込んでいた。

さすがに、彼女は良く食べた。

「大きいんだから、遠慮せずに、たくさん食べて下さいね。僕は、たくさん食べる大きくて健康的な女性が大好きなんです。」

僕が微笑みながら言うと、

「ああっ!良かった!私、普通サイズの人たちのお食事じゃ、全然、足りないんです。でも、ここは高いでしょうから、私にも払わせて下さいね。」

と、彼女は安堵した表情で言った。余程、お腹が空いていたのだろう。

「何を言ってるんですか!大きな女性をお誘いしている以上、当然、経済的な裏付けはありますよ。僕に遠慮せずに、どんどん食べて下さいね!」

僕は、ちょっと格好を付けて、そう言ってみたのだが、彼女は、まったく遠慮しなかった。ディナーのフルコースを3人前、ペロリと平らげてしまったのだ。いや正確には、3人前半だ。小食の僕は、コースを半分しか食べられなかったので、彼女が残りを食べてくれたのだ。

「これでも、母には小食だって言われるんですよ。」

彼女が、上目使いに言った。

「へえ~、香奈子さんのお母さんって、物凄く大きな方みたいですね。」

僕は、気にしていたことをストレートに聞いてみた。

「ええ、大きいっていう概念を通り越しちゃってると思います。いずれご紹介しますから、楽しみにしていて下さいね。」

なんだか、僕の下心が見透かされているようで、ちょっと気恥ずかしかった。

彼女の話を良く聞いてみると、僕が大きな女性を好きなのの、ちょうど裏返しで、彼女は小さな男性が好きなのだそうだ。実は、お母さんも同じ趣味で、彼女のお父さんも小柄な人なのだそうだ。

「うちって、近所では、女系巨人家族って言われてるんです。女は皆、当方もなく大きいんですけど、男は凄く小さいんですよ。私、そういう環境で育ったので、子供の頃から、小さくて華奢で可愛い男の子が大好きだったんです。」

なんという幸運な巡り合わせだろうか。香奈子と僕は、お互いに、直球ど真ん中のタイプだったのだ。これで、上手く行かないはずがない。何度かデートを重ね、結婚を前提にお付き合いしましょうという話になったときに、彼女が言った。

「今度、ウチに来て、両親に会って下さいませんか?」

早速、次の週末に、僕は彼女の実家を訪ねることにした。