ステラと約束
<驚異の新人、ステラ・パーテウス。圧倒的な力で、メジャーの大男達をねじ伏せる!>
野球の最高峰、MLBにて、驚異の新人が出現した。
今年カージナッツに入団した新人選手、ステラ・パーテウスは、なんと若干15歳、しかもMLB初の女性選手である。
しかし驚くのは、その経歴ではない。
ステラは身長235cmという、規格外の長身を持つ褐色の美少女だ。
メジャーの大男達と比べても引けを取らないぐらい肩幅は広く、女性にしては厚い胸板をしており、その大胸筋の上に推定Jカップの巨乳が盛り上がるため、ユニフォームは大きく盛り上げられている。
ユニフォームの袖口からは、程よい筋肉に覆われたしなやかさと強さを兼ね揃えた鍛えられた腕が伸び、曲げて見せるとモリモリと筋肉が盛り上がる。
腹筋はうっすらと割れ、鍛えられた女性らしい色気のある括れを形成している。
ヒップは女性らしい丸みがありながら、ムチムチとした程よい大きさが艶めかしい。
そしてヒップから伸びる脚は股下120cmは優にありそうで、その長身を楽に支えられる逞しさと美しさを持ち合わせていた。
規格外の長身を、スーパーモデル並みの健康的で美しいバランスの取れた肉体で支える、スポーツをするために作られたような神々しい肉体をもつ15歳の褐色美少女。
それがステラ・パーテウスだ。
そんなステラは、今シーズン投手として46試合に先発し、成績は46勝0敗、防御率はなんと0.00。
シーズン中1点も取られず、しかも完全試合が38試合、ノーヒットノーランが7試合あった。
1点取られるどころか、打たれたヒットすら1本だけだった。
しかもそのヒットも、打者の振り回したバットに偶然当たったボールがボテボテのサードゴロとなり、しかも捕球寸前イレギュラーしたため生まれたものだ。
こんなにも圧倒的な成績を残しながら、ノーヒットノーランが7試合もあったのは、捕手がステラのボールを取れずに、振り逃げでランナーを出してしまったからだ。
これだけ異常な成績を残すということは、ステラは魔球でも投げていたのか?といえば、そうではない。
彼女がシーズン中投げた球種は1種類のみ、ストレートだけだった。
しかし、そのストレートが凄まじい。
シーズン中、ステラが投げたストレートの平均球速は220km/h。
ボールがミットに飛び込む際にスタジアムに響き渡るズズンッという重々しい音は、対戦相手チームの選手とファンを絶望に突き落とした。
235cmという長身から、過去の剛腕投手達が泣いて逃げ出すかのような圧倒的なボールを、しかもステラは抜群のコントロールでコースに投げ分けたのだ。
1年間投げ続けて四死球0個という記録を見れば、そのコントロールの良さを知る事が出来るだろう。
しかもとある試合終了後、ヒーローインタビューにて今後の更なる球速アップを期待されコメントを求められたところ、ステラは信じられない回答をした。
「これ以上力を込めたら、みんな壊れちゃうから…」
シーズン中、カージナッツは5人の捕手が怪我で試合に出場できる選手枠から外れた。
全員、特注の手袋とプロテクターを用意しながらも、ステラのボールに耐え切れなかったのだ。
そんな誰もが恐れるような剛速球を、ステラは捕手を怪我させないようにするため、全力からほど遠い力で投げていたのだ。
また、投手として試合に出ない日は、ステラはDHとして打席に立っていた。
打席に立つどころか、235cmの巨体を持つ、まだ幼さの抜けない可愛らしい顔立ちの褐色美少女がネクストバッターズサークルに立つだけで、スタジアムは大いに盛り上がった。
更に特注の100㎏のマスコットバットを持って素振りを始めると、そのスイングスピードの速さに相手投手は顔面蒼白になるほどだ。
だが、本当にファンを盛り上げたのは打席での結果だ。
シーズン打率7割5分、ホームラン142本。
ホームランの推定最長飛距離は520m。
引き締まった腕から繰り出される異次元のパワーにより、バットに掠っただけでも見たことのない勢いで飛んでいくステラの打球は、多くの投手達を震え上がらせた。
結局シーズン後半には敬遠されることがほとんどだったが、少しでも甘いボールが来ると、バットが届く範囲のボールは場外へと運んでいた。
そんな異次元の活躍を見せたステラが、球団から1年で退団することが発表されたのは、カージナッツがワールドシリーズを優勝した直後だった。
ワールドシリーズでは、ステラは4試合すべてに先発し完全試合を達成。
うち2試合で27連続三振を奪い、最終戦では打者に一度もバットを掠らせなかった。
そして最終戦での平均球速は300km/h。
これは球団がシーズン開始からスポーツメーカーと協力して必死になって開発した改良型強化プロテクターと強化手袋が最終戦にようやく間に合ったため、ステラは少し力を入れてピッチングする事が出来たそうだ。。
ちなみに、MVPのインタビューにて『今日は何%の力で投げたのか?』という質問に、無言の広げた手のひらを見せただけでインタビューを終えると、翌日のスポーツ新聞の見出しには『50%で世界を制する少女!』という文字が躍った。
球団は、出来る限りの年俸と様々な条件を提示してステラを引き留めようとしたが、ステラは丁重に断ったという。
その後、ステラの退団について正式な理由が発表されなかったため、色々な憶測が飛び交った。
『やはりあの肉体は異常すぎる、ドーピング検査から逃げたのだろう』
『いや、きっとサイボーグだったに違いない。金属探知機に引っかかってそれがバレたのだろう』
『いやいや、きっと彼女こそが正体不明のスーパーガールだったに違いない』
そんな噂が世界中の野球ファンの間で大量に出回ったが、結局本当のことが分からないまま、年は明けてしまった。
3月10日、中学3年生の徳長晴弥(とくなが・せいや)は、自宅近くの山の中にある神社で溜息をついた。
「はぁ…まいったなぁ、まさか3年生が卒業したら、部員が足りなくなるなんて…」
この春、高校生となる晴弥は、大きな悩みを抱えていた。
幼いころから野球をやってきていた晴弥は、高校でも野球部に入るつもりだった。
無事一般入試で入学することが決まった高校は、最近は低迷しているが、以前は公立校ながらも甲子園に出場したこともある、古豪と呼ばれる高校である。
家から近く、学力も自分に合っていて、おまけに野球も強い…いや、強かった。
そんな高校で子供の頃からの夢だった甲子園を目指して頑張ろう、と思っていた矢先、判明したのは3年生が卒業したことで野球部の部員が7人になるということだった。
自分が入部しても、まだ1人足りない。
もしかすると、入部後最初の自分の仕事は新入部員探しになるかもしれない。
「とりあえず、自分以外の新入部員も入るよう、お願いしておこうかな」
晴弥は、自分にとってはかなり大金な千円札を取り出した。
これまでも、あまり人気が無いながらも管理が行き届いていて、凛とした空気に包まれているこの神社でお参りすると、不思議と物事が上手くいった。
高校受験に合格できたり、レギュラーを決める練習試合で活躍できたり…
(それに、あの子に会えたのもここだったし)
小学3年生の頃、2年ほど一緒に遊んでいた、自分よりも更に小柄だった少女の姿が頭に浮かんだ。
小さくて、大人しくて、引っ込み思案だった褐色の少女。
この神社で迷子になっていたのを助けて家まで連れ帰ったら、偶然隣に引っ越してきた家の子供で、それ以来自分を気に入ってしまいどこに行くにも後ろをついてきて、自分が野球をしていることを伝えたら一緒にやると言い出し、テレビで甲子園の高校野球を見て一緒に甲子園に行こうと約束して…
(あのスーが、今やメジャーリーガーを軽々とねじ伏せる、化け物投手になるんだから…世の中分からないよなぁ)
メジャーを退団して今や行方不明といわれている女の子のことを心配しながら、晴弥は賽銭箱に千円札を投じた。
「えーと、スーが早く見つかりますように!それと、どうか僕以外にも新入部員が入ってくれますように!神様お願いします!」
晴弥は真剣な表情でそうお願いすると、深く頭を下げた。
正しいお参り方法ではないかもしれないが、なんとなくこれが神様に一番願いが伝わるような気がしたから、いつもこのスタイルだった。
そのお参りスタイルがあっていたのか、それとも神様の機嫌がすこぶるよかったのか、この後願いは過去最速で適ってしまった。
「セイ、だよね?」
「え?」
頭を上げた晴弥は、背後から自分のあだ名を呼ばれ、驚いて振り返った。
そこにはつい先程、早く見つかるようにと神様にお願いした褐色の少女がいた。
ゆったりとしたシャツにデニムのズボンを身に纏ったステラは、美しく成長しているものの見覚えのある可愛らしい顔に嬉しさと驚きをごちゃまぜにしたような表情を浮かべながら、自分を見下ろしていた。
「家に行っても誰もいなかったから、ここに来ればセイに会えるかなって…」
目じりに薄っすらと浮かんだ涙をぬぐいながら、ステラは幼いころよりも流暢になった日本語で、ゆっくりと話しかけてきた。
「スー?」
「うん、ステラだよ…」
「…見違えたね、ビックリしたよ」
「見違え?…あ、大きくなったって、いうこと?うん、最後にセイと会った時から、だいぶ大きくなった…」
大きく変化した自分の身体を自慢するかのように、エレラは腰に両手を当てた状態でグイッと胸を張った。
そのシャツはかなり大きいはずなのに、ステラが少し胸を張ると、大胸筋に支えられた巨乳がシャツをきつそうに引き延ばした。
「セイは…あんまり大きくなってない?」
「うーん…ステラと比べちゃうとね」
そう答えて、晴弥は苦笑いを浮かべた。
晴弥の身長は158cmと、同年代と比べてもかなり小柄な方ではある。
「昔はステラの方が小さかったのに…逆になっちゃったね」
「そうだね。スーは今、身長何cmなの?」
「えっと、この前測ったら、240cmだった」
「凄いね、じゃぁ僕より80cm以上も高いよ」
「そう?凄い?」
「うん、そんなにも大きくなれたのは凄いことだよ」
158cmと小柄な晴弥から凄いと言われ、ステラはちょっと頬を赤らめながらはにかむように微笑んだ。
「身長もだけど、身体つきも凄いね。腕も脚も、凄く鍛えられてる」
「うん、たくさん食べて、たくさん運動したから…」
シャツから延びる腕には、逞しさと美しさを兼ね揃えた筋肉で盛り上がっている。
その美しいアスリート体型に、晴弥は圧倒されてしまう。
「…セイ、覚えてる?お別れする時、ずっと泣いてた私と約束してくれたこと」
「約束?えっと…」
突然ステラから質問され、晴弥は考え出した。
初めて会ったのは小学3年生の時で、2年後にお別れして…その時言ったこと…あっ。
晴弥の頭に、泣きじゃくる小さなステラと、その彼女と小指を絡めて約束をした自分の姿が浮かんだ。
「スーがピッチャー、僕がキャッチャーで、一緒に甲子園行こうっていう約束?」
「うん!セイ、覚えててくれたんだ…」
むぎゅぅぅ…
あまりの嬉しさからから、ステラの巨体が包み込むかのように晴弥の身体を抱きしめた。
「セイが、ピッチャーはもっと大きくてもっともっと強くないと駄目って言ったから、ステラ、大きくて強くなれるように、たくさんたくさん頑張ったよ」
それがきっかけで、あの引っ込み思案で小さかったステラが15歳でこの身体になって、こんな投手にまでなるのだから小さな子供への約束は侮れない。
「…凄いなぁ。それでこの身体になって、あんな恐ろしいボール投げられるようになったのか」
「恐ろしいボール?」
「あ、えーと…凄いボールってことだよ。メジャーリーガーが誰もまともに打てないような、凄いボール」
少し難しい日本語の表現になると、まだ多少伝わり難いところがあるようだ。
晴弥はなるべく分かりやすいようにと、言葉を言い直してみた。
「…でもあれ、ステラはあんまり力入れてない…」
「そうらしいね、ワールドシリーズの最終戦、見てたよ。誰もバットに掠らないのに…あれでも、50%ぐらいなんだろう?」
300km/hというとてつもない球速の剛球で、誰一人バットに掠らせず全員三振に奪ったピッチングの後、ステラがインタビューの際に手のひらを広げていたことを思い出した。
しかしステラは、困ったような表情を浮かべるとゆっくりと首を横に振った。
「セイ、違うよ。ステラ、あの試合で50%も力出してないの」
「え?だって、ああやってはっきり手を広げてたし…」
あの試合のピッチングを、晴弥はテレビで噛り付くように見ていた。
しかし思い返してみると、ステラは最後まで疲れる素振りなど見せていなかった。
いや、疲れを見せるどころか、汗一つかかないで最後まで投げ込んでいたはずだ。
それで、50%も力を入れてないということは…
「…もしかして、5%の力ってこと?」
信じられないとは思いながらも、晴弥はステラに確認してみる。
あれだけの剛速球をまさか5%の力で何てこと、ありえないとは思うが、あの仕草はそれしか考えられない。
そんな、自信の無い表情で聞いてきた晴弥に、ステラはもじもじとした恥ずかしげな表情で首を横に振った。
「それも間違い…。ステラね、あの試合5%も力入れてないの」
そう言って、ステラはそれまで抱き締めていた晴弥を、ゆっくりと解放した。
「あのね、ステラが出した力は、0.5%ぐらいなの」
「0.5%!?」
「うん、それしか力入れてないの…」
ステラの驚愕の告白に、晴弥は声が出なかった。
「特別なプロテクターと手袋が出来たから、少しだけ力入れれたけど、あれ以上はもう駄目だったの…」
あれ以上は駄目?それってつまり…
「試しに1%の力でプロテクターに向けて投げたら、粉々になっちゃて…。500km/hぐらいしか出してないのに…」
晴弥は、流石にこれはおかしいと感じた。
ただでさえ300km/hなどという信じられないボールを投げているのに、全力ですらなく、しかもたったの0.5%だなんて。
そんなこと、人間が出来るわけがない。
「ええっと…スー、いくらスーが凄くても、流石にそれは無理だよね。確かに身体も大きくて鍛えられてるけど、その身体で、0.5%の力であんな速いボール投げられるわけないよ」
「…そんなこと、無いよ」
ちょっと不審げな晴弥の問いかけに、ステラは少し不満そうな表情を浮かべた。
「じゃぁ、セイが信じてくれるように、証拠見せる」
そう言うと、ステラは晴弥に向けて両手を伸ばし、軽々と晴弥を持ち上げた。
右手を首筋に、左手を膝裏に添え、いわゆるお姫様抱っこの姿勢で晴弥は持ち上げられてしまった。
「ちょ、ちょっとスー!?」
持ち上げられるだけでも恥ずかしいのに、晴弥のお腹にはステラの巨乳が押し付けられる。
「ここだと周り壊しちゃうから、練習場に行こう」
晴弥の抗議を完全にスルーしてステラはそう告げると、突然走り出した。
「スーーーーー!?」
山中に晴弥の悲鳴ともいえる叫び声が響き渡るが、とっても人間が出せるわけがない凄まじい速度で走り出したステラは聞く耳持たずに、目的地まで走り続けたのだった。