保健室にて…

 「失礼します」
 軽くノックをした後、犬神晶【いぬがみ・あきら(16歳・高2)】は保健室のドアを開けた。
 晶は外見は大人しそうで、落ち着いた雰囲気を持つ青年だ。
 身長はさほど高くなく160cm弱。整った顔つきの童顔なため、中学生と言われても疑問は感じない、というか最近の成長が早い子供と比べると小学生といわれてもおかしくない。
 その外見同様、性格も穏やかでいつもやさしく微笑んでいて、とにかく人当たりのいい青年である。
 「はい、待ってましたよー犬神君♪」
 そんな晶を、やけにテンションの高い声が出迎えた。

 晶の視界に、長い足を組みながら背もたれのある回転椅子に座っている白衣の女性が現われた。
 大月美沙【おおつき・みさ(24歳)】。
 この県立松野宮学園の保健医でありながら、晶の在籍する2年3組の副担任も勤めている女性だ。
 その姿は、まさに妖艶の一言。
 肩口まで伸びる黒髪と優しげでおっとりとした美しい顔。
 それに178cmというモデルのような高身長に、男ならついつい目を向けてしまいたくなりそうな、黒のミニスカートから伸びる長い足。
 保健医なので常に白衣を身につけているため分かり辛いのだが、その下に着た緑のノースリーブのニットも良く似合っている。
 だが、なにより彼女を語る上で外せないのが、たわわに実った人並み外れた爆乳だ。
 3番手以下を大きく引き離しての学園No.2という、凄いんだかどうだか微妙な位置にあるその胸のサイズは、無駄に精鋭揃いな新聞部の調査によると、なんと135cmのUカップ。
 その色気駄々漏れ状態の妖艶すぎる容姿と、ユニークで底抜けに明るい性格、そしてちょっぴり抜けてる天然系の行動のせいで学園内では教師生徒問わずNo.1の人気を誇る人物である。
 「それで先生、校内放送でわざわざ呼び出すなんて…一体何の用事ですか?」
 「ん~♪ちょっとね~♪」
 急に呼び出されたため、不機嫌になってもおかしくないような場面だが、相変わらずいつものように穏やかに問いかけてくる晶に、美沙は嬉しそうにニパッとなにやら意味ありげな笑みを浮かべた。
 それを見て、晶は後ずさった。
 美沙はその美しい外見に加えて、何かとエキセントリックな行動が多い人物である。
 何かとんでもないことを頼まれたらたまらない、というか実際頼まれた生徒は数知れず。
 その無理難題を、(男子限定で)一撃必殺のぷるるんお色気パワーで強引に引き受けさせてしまうともっぱらの噂だ。
 引きつるような笑みを美沙に返しつつ、晶はさり気無く背後のドアノブに手を掛けた。
 幸い美沙は椅子に座っている状態だ。無茶なことを言われたら素早くドアを開け、脱兎のごとく廊下に逃げてしまえばいい。
 「実はね犬神君、先生、ちょっとお願いがあるの~」
 そんなことを考えていた晶に、美沙は深すぎる胸の谷間を見せ付けるかのように身体を前に屈ませながら、甘ったるい声をかけてくる。
 日頃からそんな声で喋ったりしているが、今の声はいつにも増して甘ったるい。紅茶にスプーン数杯の砂糖なんてものじゃない、250ml入りのハチミツを一本ぶち込んだぐらいの甘さがあった。
 その声に、いくらおっとりとしていて人を疑うことなどまず無い晶でも危険を感じた。
 間違いない。絶対、必ず、100%の確率で、僕は厄介ごとに巻き込まれかけている!
 「えーと先生…僕、早く帰って宿題をしたいので…失礼します!」
 「あ、こら犬神君!」
 一方的に言い切ると、晶はすでに握っていたドアノブを回して勢いよく引き開けた。
 後は野となれ山となれ、明日になったら何で呼び出したのか綺麗サッパリ忘れているかもしれない。というか忘れてくれることを心から祈る。
 しかし、その晶の考えもまた、甘すぎるものだった。

 むぎゅぅぅぅぅ
 「えっ!?」
 一瞬、頭が真っ白になった。
 ドアを開け飛び出したはずなのに、なんだかよく分からない柔らかな物体に顔が埋まってしまったのだ。
 何が起きているのかわからずに晶は混乱したが、慌ててその壁から逃れるために身体を引こうとした。
 このままでは、背後から迫っているであろう爆乳女教師の魔の手に落ちてしまう。
 今は一刻も早くこの場から逃げなければならないのだ!
 しかし、
 「桃華、ナイスタイミング!そのまま捕まえちゃって!」
 背後から投げかけられた美沙の声に反応して、晶の頭は突然何かにガッチリと押さえ込まれ、顔を完全に固定されてしまった。
 晶の呼吸が、その動きによって完全に止められてしまう。
 布のような物越しに、柔らかな感触と、ほんのりと甘い香りが顔を包み込んでくる。
 その攻撃から必死に逃れようと晶は足をばたつかせるが、頭はまるで万力で固定されたかのように動かすことが出来ず、しかも身体全体が全く抵抗できないほどの尋常ではない力によって押し戻され、晶の身体は部屋の中へと運ばれていく。
 「よしっ!桃華、そのまま犬神君をここに座らせるのよ!」
 まるで戦隊物の悪の女幹部のような美沙の命令口調に、晶の身体はゆっくりと、まるで壊れ物を扱うかのように大事に運ばれ、やがて先程まで桃華が座っていたと思われる椅子に座らされた。
 そして座らされると同時に、ようやくその強烈な圧迫から顔が開放された。

 もはや晶に逃げる気は無かった。
 相手が美沙一人なら逃げ出すことも可能だったかもしれないが、二対一ではさすがに分が悪い。しかも美沙が呼んだ『桃華』と言う名前が、もし晶の知っている人物だとしたら、まず間違いなく無理だろう。
 ようやく開放された晶は、諦めた表情で座らされたまま顔上げた。
 まず、健康的に小麦色に日焼けした、ムチムチの引き締まった二本の太腿が飛び込んでくる。
 そしてさらに視線を上げていくと、近隣でも可愛らしいと評判のチック柄のスカート目に入る。
 決して丈が短いわけではないのだが、まるでモデルのように長い桃華の足からすると、自然と膝からかなり高い位置に裾が着てしまう。
 この時点で、晶は目の前の存在が予想した人物だということを確信した。
 ならばこの先は…と首が痛くなりそうなぐらいグググッと見上げていくと、予想通り顔は物凄い勢いで前方に盛り上がっているブレザーのせいで隠れてしまっている。
 爆乳だ。しかもとんでもないサイズの。
 学園No.2の美沙をメロンサイズだとすれば、目の前にある胸は大玉のスイカサイズ、いや、大きなビーチボールサイズと呼んでもいいだろう。
 こんなとんでもない身体の持ち主はこの学園には一人しかいない。
 彼女の顔は知らなくても、レオタード姿の類い稀なスーパーボディには見覚えがあるという生徒は学内には沢山いるだろう。
 「ええっと…大月さん?」
 晶の呼び掛けに目の前の女生徒はビクリと身体を振るわせた。

 大月桃華【おおつき・ももか(15歳・高1)】。
 人並みはずれた巨乳である美沙の胸すら子供扱いしてしまう、学園No.1の爆乳の持ち主で、年は離れているものの美沙の実の妹である。
 その胸のサイズは新聞部ですら正確に把握できておらず、目測により200cm・Zカップを軽々とオーバーしているということぐらいしか判明していない。
 まさに凄まじいの一言だが、桃華の身体の凄さはそれだけではない。
 晶が首を痛めそうになるぐらい上を向く必要があるのは、なにも座っているからだけではないのだ。
 晶はゆっくりと立ち上がった。
 それに合わせて、かなり見上げるような高さにあった爆乳の膨らみがグングンと近づいてくる。
 そしてその膨らみは、完全に立ち上がった晶のまだ少し上ぐらいの場所にあった。
 桃華の顔を確認するために晶がさらに視線を上げてみると、薄っすらと頬を赤らめた、短めでボーイッシュな髪型と活発そうなクリッとした大きな目をした可愛らしい顔が、晶から30cm以上高いところにある。
 桃華の身長は、2m以上あった。
 しかもただ大きいだけではなく、その身体は程よく鍛えられた筋肉で覆われていて、ガッチリとした身体つきをしている。
 この圧倒的な巨体と爆乳、そしてその巨体以上に化け物じみた怪力の持ち主である桃華は、15歳ながらレスリングの日本代表の一人なのである。
 晶がここから逃げられないと悟ったのはそのせいだ。
 桃華については、とんでもない噂がまことしやかに囁かれている。
 なんでも小学校4年生の時、何が原因なのか突然近所のレスリングクラブに通いだしたという桃華は、これまで一度も試合で負けたことがないらしい。
 しかも、練習を始めた当初から女子では試合どころか練習相手にもならず、1ヵ月後には元オリンピック選手だった100kg近い体重の男性コーチを軽々とリフトアップして投げ飛ばすなど、急激にその眠っていた才能を開花させていったそうだ。
 それと同時に、当時も今ほどではないが十分大柄だった身体が突然爆発的な成長を見せ、今のとんでもないダイナマイトボディへと変貌を遂げたという。
 そんな無敵の爆乳レスリング少女を相手に、ただの一般生徒である晶にはこの場を逃げ切れる自信は無かった。

 「ふっふっふ、とうとう年貢の納め時ね、犬神君!」
 もはやその話し方が楽しくて仕方ないのか、妙に芝居がかった悪役口調で話しかけてくる美沙が、唖然として立ち尽くす晶の背後から両手を首に回し抱きつくようにして身体を密着させてきた。
 もちろんそれに合わせて、身長差からメロンサイズの爆乳がふにゅりと柔らかな感触をもたせつつ晶の頭に押し当てられてくる。
 柔らかいながらもムッチリと実の詰まった不思議な感触に、晶の顔は一気に赤く染まっていく。
 完全にこの爆乳姉妹にペースを握られている。というか逃れる術など思いつかない。
 「………分かりました。先生のお願い聞きますから、早く話してください」
 「よしよし、観念したようね。それじゃ…それっ!」
 晶の諦めたような声を聞いて心底嬉しそうに耳元で囁くと、今度は突然背中をトンッと押した。
 そんなに力が込められていたわけではなかったが、それまで少し引っ張られるような感じで抱きつかれていただけに、それに逆らうように心持ち前に体重を掛けていた晶の身体は思いの他勢いよく前に倒れこんだ。
 「むぐっ…」
 そして目の前に待ち構えていた桃華の、自分の頭よりはるかに巨大な双球が、セーラー服越しに作り出す深い谷間に、完全に抱き合う格好になって晶の頭はすっぽりと埋まってしまった。
 その胸は程よい柔らかさと、ついさっき味わった美沙並の、いや、サイズ同様美沙さえも凌駕するであろうミッシリと肉の詰まった弾力が奥にはあって、晶の顔を優しく受け止めてくれた。
 母性を司る柔らかさのイメージしかなかった女性の胸に、晶の全体重がかかっても動じない、こんな力強い心地よさがあるなんて…晶は顔を埋めながら、ついついそんなことに驚いてしまう。
 「それじゃ、後は桃華が話をするから~。二人とも、がんばってねぇ~♪」
 急な展開にドキドキしている晶の肩をポンッと叩くと、美沙は意外にも機敏な動きで抱き合う二人の横を通り抜け、部屋から外に出て行ってしまった。
 ガチャッ
 しかもなぜか外から鍵を掛けていく。
 そして密室となった保健室には、抱き合う二人だけが残された。