GTS48 02
「あれ?優、どこか出かけるの?」
とある日曜日、いつもならせっかくの休みなのでと深い睡眠に陥っているはずの早朝に、なんとなく目を覚ました私は玄関を出ようとしている妹、笹月優の姿を見かけた。
規格外ともいえる長身と肉体美、そして爆乳を持ちながら、それでもかなり余裕のありそうなジャージを着た姿で出かけようとしていた。
そういえば最近、この服装でいること多いわね…というかこの格好しか見てないかも…
「あ、おはよう姉さん。うん、ちょっとトレーニングに行こうかと思って」
トレーニング?その言葉に、私の頭には最近優に持っていたとある疑問が浮かんだ。
優がレスリングに対しての情熱を失い、それから突然アイドルになりたいと言い出してから2か月ほど。
そしてつい1ヶ月程前には、アイドルになるための面接を受けたそうだ。
その次の日から、優は時間を見つけては出かけるようになり、夜にはクタクタになって帰ってくるという日が続いていた。
そんな優の姿に、少し心配になりながら疑問を持っていたんだけど…レスリングを諦めてから、殆ど運動などしていなかったはずなのになんで急にトレーニングを始めたのかしら?
「・・・・・・・・そうだ姉さん。よかったら付いて来てもらえるかな?」
「え?」
「姉さんには、ボクがやろうと思っていること、知っていてもらいたいんだ。ようやく成果も出てきたことだし」
70cm以上の身長差で、優は私を見下ろしてくる。
その表情はとても真剣で、強い意志を持ったものだった。
優に連れられて来た場所、そこは最新設備の整ったスポーツジムだった。
「へ~こんな施設があったんだ。おまけにこんな早い時間だから貸し切りみたいだし」
かなり広いトレーニングルームに置かれる様々なトレーニングマシンに、私はついつい子供のように興味津々で見て回っていた。
「姉さん、そんなにはしゃいでると危ないよ」
後ろから、聞き覚えのある声をかけられた。
しまった…ついつい誰もいないからと安心してしまって、あんな子供っぽい姿を優に見られてしまった。
これは姉としての威厳が大変なことに!!
「べ、べつに、トレーニングマシンが珍しくてはしゃいでたわけじゃないんだからね!ただちょっと、テンション上がっただけなんだか…ら………って、優!?」
言い訳にもならないようなことを口走って振り向いた私は、言い終わる前に驚きの声を上げてしまった。
驚く私の目の前には、ここ最近着ていたジャージを脱いで、レスリング選手時代のシングレットという服を着た優の姿だった。
ただ、優が普通にシングレットを着ていただけだったら、私もここまで驚かなかったと思う。
ではなぜ驚いてしまったのかというと…優の身体が、格闘技の素人の私が一目で見ても分かるぐらい成長していたからだ。
レスリングをしていた現役時、逞しさと女性らしい柔らかさを併せ持っていた妖艶ともいえる肉体美が、相変わらず女性の私から見ても惚れ惚れするような色気を持ちながら、一回り、いや二回りは盛り上がった筋肉で覆われている。
その発達した筋肉のおかげで、着ているシングレットが今にも引き裂かされそうなぐらいパッツンパッツンになってる。
少し動くだけでミチミチと悲鳴のような音が聞こえるし、腹筋の部分なんてピッチリすぎて割れているのがハッキリ分かる。
おまけにただでさえメロンサイズの爆乳だった胸が、こっちも更に巨大に成長していてまるでスイカサイズになってて…うわ、シングレットから半分近くこぼれ落ちそうになってるじゃない…。
「優!ど、どうしたのよその身体!レスリングやってた時並み、いえ、その時よりも遥かに凄いじゃない」
「うん、ここ1ヶ月、あの頃の3倍ぐらいのトレーニングをしてたから…」
「3倍!?」
優の言葉に、私は更に驚かされる。
だって、レスリングをやっていた頃のトレーニングって、女子レベルでは物足りないから男子のオリンピックメダリストがやるようなトレーニングをこなしてたじゃない。
しかもそれだけじゃ足らないからって、特別練習もこなしてたのに…
「別に、手を抜いてたわけじゃないけどね。でもあんまりトレーニングをやりすぎて筋肉が付いちゃうと、体重がすぐに増えちゃうから…だからあれでも筋力が落ちない最低限に抑えてたつもりなんだ。食事だって我慢して抑えめにしてたし。それでも、どうしても成長が止まらなかったんだ…」
優の表情に、うっすらと陰りが見える。
こんな凄い身体をしていても、優は私よりも年下の、17歳の女の子なんだ。
「ごめんね、優…」
私は、慰めるように優を抱きしめた。
…まぁ、周りから見れば、抱き締めるというか巨木のような優の逞しい太腿にしがみついているようにしか見えないかもしれないけど。
「ね、姉さん!?」
「ごめんね………私、優がそこまで悩んでたのに、気付いてあげられなかった…」
優の姉として、悩みながら必死に戦っていた優の気持に気付いてあげられなかったことに、悔しさや情けなさから我慢しようとしても眼から涙が溢れだしてくる。
すると突然、そんな私の身体が、ふわりと持ち上げられた。
持ち上げたのは、もちろん優だ。
レスリングの現役時代、うずくまるようにして投げられないよう身構えていた100kgを超える男性レスリング選手を片手で場外に放り投げる怪力の持ち主だった優にとって、40㎏しかない私なんて子猫を持ち上げるような感覚なのかもしれない。
あっという間に70cm以上あった身長差が無くなり、優の整った顔が私の真正面に現れる。
そして優は、私の頭に片手を添えると、もはや片方だけでも私の頭より遥かに大きい巨大な膨らみへと成長しているその爆乳に、優しく埋めた。
「…謝らないで姉さん。ボクはどんな時でも応援してくれた姉さんがいたから、レスリングも頑張れたし、アイドルを目指したいっていう夢に向かうことも出来たんだから」
優しい声でそう言いながら、優は私を抱き締めてくれる。
「本当?優はもう大丈夫?」
「うん。ボクはもうしっかりと切り替えられたから。だからアイドルになるために、全力でトレーニングを始めたんだ」
「そっか、よかった………って、ちょっと待って、優?」
「え?なに?」
押し潰されそうなほどの巨大な胸の間から無理やり顔を出しながら、私は不思議なことを言い出した優の顔を見上げる。
「どうしてアイドルになるために、全力でトレーニングをすることになるの?」
正直、私には、アイドルになることと、レスリング選手時代以上のトレーニングをすることが、全く繋がらない。
そんな不思議そうな表情で質問した私を、優はゆっくりと床に下すと、真面目な表情で私に説明しだした。
「この前GTS48の面接に行った時に感じたんだ。アイドルになるには、もっと個性が必要だって」
「個性?」
「うん。今はアイドルって沢山いるから、誰にも無いようなアピールポイントが、ボクにも必要だなって」
う、うーん…なんとなく分かるような気がするけど…そもそもこれだけの巨体の時点で、十分個性的だと思うけど…
「姉さんは今のままでも十分だろうって思ってるかもしれないけど、この前会ったかれんちゃんだって13歳で2m超えてたんだから、ボクよりも大きい人だってもっといるはずだよ。だからボクは、レスリングで鍛えたこの身体をもっと成長させて、アピールポイントにしようと思ったんだ」
そう言って胸を張ると、優が身に着けているシングレットがミチミチと音を立てる。
「そうやって目標を決めて全力でトレーニングを始めて、食べる量も増やしたら…この1ヶ月で自分でも驚くぐらい成長できちゃって。身長は10cmぐらい伸びたし、体重は40㎏も重くなったから…あ、もちろん殆ど筋肉だからね。一部はここにも集まっちゃったけど」
そう言って目線を下げた先には、今にもシングレットを内側から引き割いてしまいそうなぐらい膨らんでいる爆乳がある。
おのれ…同じ姉妹なのにこの差は…私なんて泣く子も黙るAカップの幼児体型だっていうのに!
って、そんなことより、体重が40㎏増えたって、それ、私一人分じゃない!
そんな筋肉が1ヶ月で身に付くって…ここ数年体重を増やさないために抑え込んでいた反動が、一気に爆発して成長に繋がったのかしら。
そんなことを考えていると、優は立ち尽くす私の手を取って、ゆっくりと歩きだした。
「それでね、今日姉さんに来てもらったのは…ボクが本気だっていうこと、見てもらいたかったんだ。それでまた、アイドルを目指すボクを応援してもらいたくて…」
そう言って優が指さす先には、巨大なプレートを装着された、バーベルがラックに置かれていたあった。
プレートの大きさは均一で、見てみると50㎏という数字が書いてある。
そのプレートが左右合わせて30枚…50㎏×30枚っていうことは…1500㎏!?
「優、1500㎏って…こ、こんなの持ち上がるわけないじゃない!それにもし途中で何かあって、バーベルが優の身体に落ちたりでもしたら!」
私は無意識に、大声を上げてしまった。
1500kgなんていう鉄の塊が、もし誤って落としてしまったりでもしたら、いくら優の強靭な身体だって、無事では済まないだろう。
でも優は、ゆっくり身体をベンチに横たわせると、笑顔を浮かべながらとんでもないことを言った。
「大丈夫だよ姉さん。これはまだ、ウォーミングアップだから」
「………へ?」
この10分の1の重量を持ち上げるだけでも、凄まじいことなのに…これがウォーミングアップ?
信じられない言葉に呆然と立ち尽くす私に、優はシャフトに手を掛けながら私に顔向けると、片眼を瞑ってウインクを見せた。
ああ、これはもし周りに他の女の子達がいたら、歓声があがっちゃうやつだ…。
「まずは20回から始めるね。んっ、んっ、んっ、んっ………」
1500kgというとてつもない重量のバーベルが、ギシギシと音を立てながら優の逞しい腕によって上下される。
それに合わせて、優の巨大な爆乳を支える大胸筋が、徐々にその盛り上がりを増していく。
バーベルを支える両腕も、ただでさえ太かった腕に筋肉が盛り上がり、その太さを増していく。
元々身体にピッタリとくっついて今にもはち切れそうだったシングレットが、更に悲鳴を上げる。
やがて一度も止まることなく、リズミカルに20回しっかりとバーベルを上下させると、優はゆっくりとバーベルラックに戻した。
「はふぅん…だいぶ効いたかな…どうかな姉さん、ちょっとパンプアップしたよ」
そう言って優は立ち上がると、体を起こし、両腕を頭の上で掴みながらグイッと胸を張って見せた。
大胸筋と爆乳が強調される、グラビアアイドルのようなポーズ。
明らかに先ほどよりもパンプアップしている優の肉体に、私はただただ唖然としながら見上げることしかできない。。
「ふふっ、姉さん、これで驚いてたら大変だよ。次が本番なんだから」
優は予備のプレートが置かれている場所に行くと、1枚50㎏あるプレートを次々と持ってきてはシャフトに取り付けていく。
追加されたプレートは、左右合わせて10枚で500㎏。
つまり初めの1500㎏と合わせると…2000㎏!
そんな超重量のバーベルを準備して、優は再びベンチに横たわった。
「それじゃ始めるね。んんんっ!はぁっ!んんんんっ!………」
先ほどとは明らかに違う手ごたえに、優のバーベルを上下する速度はさっきより鈍い。
だが、重量が増した分、優の身体に掛かる負担は先ほどとは比べ物にならないみたい。
ミチッ、ミチチチッ………
先ほど盛り上がりを見せた大胸筋が、さらに増えた付加により刺激され厚みを増していく。
それに合わせて、強大な圧力により引き裂かれそうになるシングレットは、限界寸前にまで引き伸ばされている。
「凄いよ優。これで10回!」
「あうんんんっ!はふぅんん!わかったぁぁぁ!……」
私の声が聞こえたのか、大声を上げて気合を入れながら回数を重ねていく。
15回…16回……17回………18回………
だが15回を過ぎたあたりから、極端にペースが落ちてきた。
「あぁぁぁぁぁぁぁううんんぁぁぁ!!」
そして19回目、バーベルは途中まで上がったが、そこから腕を伸ばすことができない。
痙攣するかのように小刻みに震える腕から、優の身体が限界に近いことがわかる。
もしもこのまま持ち上げることができず、バーベルが優に落下でもしたら…
「な、何やってるのよ優!あと2回なんだから頑張りなさいよ!もっと鍛えて、アイドルになるんでしょう!」
「うっ………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
今日一番の大声で気合を入れると、バーベルがまた上がり始める。
凄い、あそこから持ち上げるなんて。
これで19回目をクリア。
でもここで一息ついたら今度こそ危ないかもしれない。
「優、あと1回!頑張ってぇぇぇぇ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
私の必死の応援に応えるかのように、最後の気合を込めてバーベルが持ち上げられる。
そしてそれに呼応するかのように、優の上半身が今日一番のパンプアップを見せる。
ビリビリビリビリ!
耐えに耐えてきたシングレットが、優の暴力的なパンプアップにとうとう弾け飛んだ。
押さえの無くなった爆乳が、大胸筋の動きに合わせてこれまで以上に激しく暴れまわる。
「んふぅぅぅ………はぁ、はぁ…とうとう…破けちゃった…かぁ。でもそれだけ…レスリングをやっていた時と比べてボクの身体が…成長できたってことだよね。どう姉さん、ボクの全力の身体…」
息を整えながら、ベンチから体を起こした優はゆっくりと立ち上がると、私に身体を向ける。
ジングレットが破けたため腹筋から上が露わになったその身体は、圧倒的な筋肉を身に付けつつも、巨大な爆乳が鍛えられた大胸筋によって全く垂れることなく、凄まじい迫力で前方に突き出されている。
そのまま両腕を顔の横で曲げて力瘤を作って見せると、ただでさえパンプアップしていた腕に、ボコボコとメロンサイズの力瘤が盛り上がる。
「す、凄い…現役時代の優だって十分凄かったけど、今の優とは比べ物にならない…。でも、大丈夫なの?身体苦しくない?」
あまりのパワーとその肉体の成長ぶりに、私は優が無理をしているのではないかと不安になる。
でも優は、ゆっくりと首を横に振った。
「大丈夫だよ姉さん。確かにトレーニングは苦しいけど、もともと身体を鍛えることも大好きだったし。全力で鍛えることができなかった前よりも、すっごく充実してるよ!それに…」
「それに?」
「姉さんに久しぶりに応援してもらえたのが、本当に嬉しかったんだ」
「え?私の応援?」
意外な言葉に、私はつい聞き返してしまう。
「うん、レスリングをやっていた時は、ここ数年試合にも出れなかったし、姉さんにだけは言うけど、男子のトップ選手だって一度組み合っただけで、ボクの敵じゃないって分かっちゃったから…。そうしたら姉さんも、あんまり応援してくれなくなったでしょ」
そう、レスリングを始めた当初は、強くなることが嬉しくていつも楽しそうに練習に励んでいた優が、ここ数年はまるで機械のように事務的に練習しているようだった。
レスリングを辞める決心をつけるために、非公式で行われた男子選手との100人組手の時だって、優は相手のタックルを簡単に受け止め、そのまま抵抗しようとする相手を無理やり持ち上げてからマットに叩きつけ、最後に抑え込むという方法だけで100人全て倒してしまった。
そんな圧倒的なまでに強い優の姿に、いつしか私は自分の応援なんて必要ないと思ってしまい、頑張れと応援することが無くなっていた。
「さっき姉さんが頑張れって言ってくれたから、力が漲って最後の2回のバーベルを上げられたんだよ。だから姉さん、これからもボクのこと、応援して欲しいな」
優は手のひらを顔の前で合わせて、17歳という年齢相応の甘えるような笑顔で私に頼んでくる。
その姿は女の子達から憧れ、凛々しくてボーイッシュな無敵のレスリング少女ではなく、たった一人の私の可愛い妹の姿だった。
「し、仕方ないわね、妹のお願いなんだから、もし他にファンができなくても、私だけでも優のこと応援してあげるわ…」
「ありがとう姉さん!」
むぎゅぅぅぅぅぅ
私の答えに歓喜した優が、勢い余って抱き付いてきた。
爆乳と大胸筋が、私の頭を簡単に飲み込む。
丸太のように太い腕が、私の背中ごと抱き締めていく。
もし周りに人がいたら、私の小さな身体が優の巨体に飲み込まれたかのように見えるかもしれない。
一応力減はできているようで痛みはないけど、これって結構苦しい…
解放してもらおうと、何とか手の届く優の逞しい腹筋を叩こうとしようとしたが…
「姉さん…ありがとう…本当大好き…だから…」
かすかに聞こえた甘えるような優の声に、私は観念すると解放されるのを待つことにした。
全く、こんな凄まじい身体してるのに、私の前では甘えん坊なんだから…
しばらくして、優は私を解放してくれた。
その表情は少し恥ずかしそうだけど、なんだか晴れやかなものだった。
まぁ、この笑顔が見れただけでも良かったかな。
「それじゃ、優。トレーニングはこれで終わりよね?そろそろ私も帰るから…」
「えっ?待ってよ姉さん」
そう言って帰ろうと歩き出した私の腕を、優はガシッ捕まえて引き戻した。
「まだトレーニングは途中なんだから、帰っちゃ駄目だよ。これから他の筋肉も鍛えて、あと瞬発力と持久力も付けるトレーニングもするから…」
「ええ!?優、いつも何時間トレーニングしてるのよ」
「えーと、大体一日5時間はトレーニングしてるんだけど…今日は姉さんもいるから、倍にしてみようかなって…」
「倍って…10時間!?無理無理、私、今日はお買い物とか色々出かけようと思ってたんだから!」
そうだ、今日はせっかくの休みなんだから、午後から出かけようと思ってたのに!
私は必死に逃げようとするが、優の怪力から逃げられるわけがない。
「えへへ…姉さん、今日だけはとことん付き合ってもらうからね。次はこっちのマシンでトレーニングだから、応援してね」
「こらー!話を聞けー!この筋肉バカ妹ー!」
じたばたする私を笑いながら羽交い絞めにして、優は次のマシンへと向かって歩き出した。
………もう、私のお休み潰してまでトレーニング付き合わせたんだから、立派なアイドルにならなかったら承知しないんだからね!