最強になりたい! ②

 前人未到の中国の奥地(多少誇張)より発見した、俺の彼女兼爆乳格闘家な李秋澪【り・しゅうれい】が、裏の格闘技界が運営する格闘場の元チャンピオンをバストアッパー一発で吹っ飛ばし、新たなチャンピオンとなってから3ヶ月。
 俺―福園俊哉【ふくぞの・としや】―と秋澪は、それはそれはえらい忙しい日々を送っていた。
 「秋澪、そろそろ入場の時間だぞ」
 「はい、俊哉さん。準備は出来てます!」
 試合目前の控え室。声をかけた俺に、秋澪の17歳らしい明るい元気な声が返ってきた。
 秋澪がチャンピオンになってから今日の試合が15戦目。ほぼ1週間に一度のペースで試合をこなしていることになる。
 これは驚異的、というか普通なら無理無茶無謀といえるハイペースだ。
 試合における体力の回復やコンディションを整える必要性から、これまでのチャンピオンは多くても1ヶ月に1度ぐらいのペースで試合をしていた。
 しかし秋澪は、
 「全然疲れてないですから大丈夫です!だからどんどん強い人と試合を組んでください!」
 最強の格闘家になるという目標を持つ彼女は、笑顔でそう言って巨大な爆乳を振り回しつつ試合をこなして勝ち続けている。
 実際、その強さは桁違いだ。
 この格闘場のリングに上がって以来、全ての試合を3分以内に終わらせている。
 ある時はその巨大な胸で殴り飛ばし、またある時は挟み窒息させる自在な戦い。しかもその全ての試合が、全く疲れを残さない圧勝劇だ。
 そして何より凄いのが、日々成長していく秋澪の身体だ。
 目の前にいる、何故かちょっと顔を赤らめながら俺を見下ろしている秋澪に目を向ける。
 程よく小麦色に焼けている肌に、特注の白いタンクトップとビキニパンツの姿が目に入る。
 これだけなら、夏場の海岸にでも行けばお目にかかれそうな格好だ。
 が、それを身に付けている身体がとにかく凄い。
 背中まで伸びるつややかで柔らかな黒髪は、試合に備え今はきっちり結ばれてポニーテールに。
 童顔で、美しいというよりは可愛らしいといえる整った顔とあわせると、殆どの人間が秋澪を美少女と認めてくれるだろう。
 だがそこから視線を降ろしていくと目に入るのは、出会った当初から人間離れしたサイズだったのにもかかわらず、さらに爆発的な成長を遂げ、とうとう436cmという途方もない大きさとなった超特大バストだ。
 その双球は今や易々と鉄柱を叩き潰す破壊力と、ボーリングの球ぐらいなら簡単に胸の谷間で挟み隠せてしまえる巨大さを備え、格闘家である秋澪の最大の武器となっている。
 さらに視線を下げていくと、綺麗に六つに割れた逞しい鋼のような腹筋と、胸と反比例してキュッと引き締まった75cmのウエスト、そして胸ほどではないもののこちらもボーンと突き出された120cmもの筋肉質のヒップが現われる。
 それだけではなく、ヒップから伸びる足はまるで鍛え抜かれたサラブレットのように逞しさとしなやかさを兼ね揃え、身体全体の比率からするとまるでスーパーモデルかのような長さを誇っていた。
 身長215cm、体重180kg………ちなみに体重に関しては、でかすぎる胸だけで80kg程あったりする。
 出会った当初から人間離れした身体であったが、それまでの我流トレーニングから日本に来て始めたハードかつ合理的な科学的トレーニングによりさらに成長を重ねたモンスターボディ。
 いまや周囲からは『爆乳モンスター』などという、単純ではあるが的確に秋澪の身体を表現したありがたくない綽名まで付けられているしまつだ。
 まったく………まぁ、もっとも俺は、そんな逞しくも可愛いモンスターが愛しくて仕方無いのだが。
 「あの、俊哉さん…」
 「ん?」
 そんなことを考えていた俺は突然掛けられた声に、足元を向けていた目を秋澪の顔に戻した。
 40cm以上ある身長差のためおもいっきり見上げる格好になると、先程同様顔を赤らめた顔が見える。む、この恥ずかしそうな顔は…
 「えっと、そろそろ入場の時間ですから…」
 「ああ、そうだな」
 時計を見ると、確かに入場時間ギリギリだ。
 完璧な防音がされているためこの部屋では外の音が聞こえてこないのだが、今頃格闘場は試合を待ち望む観客の声でえらく盛り上がっていることだろう。
 「もうすぐ時間ですから…いつものおまじないをして欲しいです…」
 秋澪は俺が見上げなくてもすむようにペタンと膝をついて座ると、いつもの元気な声とは違う、囁くような小さな声で呟いた。
 瞳が期待を込めた潤んだものに変わる。ああ分かってる、これは初めてこの格闘技場で戦った時から続いている、儀式のようなものだ。
 初めての試合の時、あまりに緊張していた秋澪のために冗談半分でやったのだが、それをえらく気に入ってしまったらしい。
 俺は身体を前に倒しながら、秋澪の頬に両手を当てた。そして身体をよじりながら、恐ろしい程巨大な彼女の爆乳に自ら挟み込まれていく。
 秋澪は完全に力を抜いてくれているのだろうが、彼女のタンクトップ越しに感じる胸の感覚はまるで巨大なゴムマリに挟まれるかのようでかなり強い弾力がある。
 やれやれ、出会った当初は顔を寄せるのにここまで苦労しなかったんだが…まぁ、胸が成長するのは嬉しいことだし仕方ないか。
 「それじゃ秋澪…」
 「は、はい…」
 俺の声に答えると、秋澪はゆっくりと目を閉じた。
 元々赤らめていた顔がさらに赤みを増していく。
 もう何度目だか分からないぐらいやっているのに、相変わらず秋澪はこの場面で緊張してしまっている。
 俺はそれを確認してバレないように苦笑を浮かべながら、はっきりと赤みの差した柔らかな頬にゆっくりとキスをした。
 時間にして5秒ほどたっただろうか、俺はキスしたときと同様ゆっくりと唇を離すと、やはり苦労しながら秋澪の胸から抜け出した。
 「俊哉さん…」
 「ん?なんだ秋澪?」
 秋澪は眉をハの字に曲げて、めい一杯非難の表情を浮かべた。それでもやっぱりその整った顔は可愛らしいのだが。
 「やっぱり頬だけなんですか?」
 ああ、不満そうだ。物欲しそうな顔でキスをした頬を撫でながら、唇を尖らせつつ俺を睨んでいる。
 「いつも言ってるだろ、ちゃんとしたキスは試合に勝ってからだって」
 「でもぉ…」
 「でもじゃない。ほらほら、急がねーと試合はじまっちまうぞ」
 う~~と子犬が唸るような声を出す秋澪にニヤリと笑い掛けてから、俺は秋澪を立たせて背中を押した。
 どうせ試合が終わったら満足するまで抱きつかれるんだ、今はこれぐらいの意地悪をしたっていいだろう。
 俺に押され渋々歩き出した秋澪は、控え室のドアへと向かう。
 「もう…俊哉さん、試合終わったら覚悟してくださいね。胸で挟んで逃げられないようにして、気絶するまでキスしてあげますから!」
 「はいはい、その前に試合に負けるなよ。負けたら試合が終わってもキスは無しだぜ?」
 まぁ、まず負けることはないだろうが。秋澪が負ける姿どころか、苦戦する姿すら想像するのが難しい。それぐらい、これまでの秋澪の戦いぶりは圧倒的だった。
 「大丈夫です☆」
 そう秋澪は楽しそうに答えた途端、無造作に、殆ど力を入れていないような仕草で軽くその爆乳を振るった。
 ズドーンッ!!!
 防音と万が一の場合の防壁の役割も兼ねて、10cmという特別な厚さで作られた鋼鉄製の控え室のドアが、まるで至近距離から大砲の直撃を喰らったかのような轟音を立てて吹っ飛んだ。
 俺は驚いた。いや、秋澪ならこれぐらいのドアを吹っ飛ばすのはわけないとは思う。驚きなのは、吹っ飛ばされたドアがあまりの威力のために外の壁にめり込んでしまっていることだ。
 秋澪からすれば撫でるかのような軽いバストパンチなのに、これだけの威力………まぁ、確かにこんな強い秋澪が負けるはずないよな。
 「えへへ…今日も絶好調です!すぐに試合終わらせてきますからね!」
 ちょっぴり機嫌を直して、秋澪は格闘場へと続く通路を歩き出した。
 俺は芝居がかった仕草で頭を軽く振った後、溜息を一つついて秋澪の後を追った。
 もちろん今の溜息は試合の結果ではなく、その後の自分の心配をしたものだ。